Snow Trekking
谷川岳   【日本百名山】2012/04/08
群馬県みなかみ町/新潟県湯沢町 [1977m]所要時間:4時間59分
消費カロリー:計測せず
この展望こそ谷川岳の真骨頂GPSログ記録はこちら(別窓)

肩の小屋

■Introduction

今年の雪山シーズンもそろそろ終了。高山の雪もだんだんと溶けてきました。

しかし、雪山技術の足りない自分にとっては、残雪期だからこそ登れるようになる山もあります。
それがこの谷川岳。厳冬期の登山はハイリスクなので、残雪期の晴天を待ちわびていたのでした。

そしてようやく訪れた好機。上越国境の絶景を望む山旅へ、いざ。



■谷川岳で正解なのか…?

この日の関東地方は高気圧に広く覆われ、快晴無風。
まさに絶好の登山日和でした。

しかし、肝心な水上方面だけは雲がちらほら…
北関東道を走っていくと、前方には先月敗退した浅間山が青い空の下にくっきりと見えていて
果たしてこのまま谷川岳に向かっていくのは正解なのか…?
予定を変更して浅間山にリベンジすべきなのでは?と、ずいぶん悩んだものです。

谷川岳ロープウェイ・駐車場

しかし、結局は初志貫徹。
谷川岳ロープウェイ駐車場着、7:40です。

ちなみに水上ICからロープウェイ駅までの道路は勾配がきつい坂があり、
この時期でもまだ路面は雪ですので、最低でもチェーンは必須。
レビン(FF)はスタッドレスだけでも何とか走れましたが、いったん途中で止まると再発進は困難でした。

ロープウェイ・天神平駅

のんびりと準備をして、ロープウェイ天神平駅に降り立ったのは8:45。

ところで今日はずいぶんと遅めのスタートですが、これには訳がありまして…
というのは、万一トップバッターになって、自分たちがトレースを付けるのは避けたかったのです。

先日の四阿山は先陣を切って突撃し、案の定間違えたトレースを付けてしまいました。
四阿山は(あずまや高原ホテルからなら)急峻な谷筋などはありませんから、多少道を間違えても
ただ疲れるだけで大事に至ることはないですが、
谷川岳は雪庇が大きくて、果たしてどこまでが安全地帯なのか、我々には判断がつきません。
そこでもし雪庇側にトレースを付けて、後続が滑落したら… と思うと、
とてもじゃないですが、先頭に立つ気はしませんでした。

ルートファインディングは自分たちにはまだ無理。
ここはベテランさん達の判断にお任せすることにしました。

まずは稜線へ

登山者はこの先のリフトには乗れないので、まずは稜線まで登ります。
赤いポールの内側はゲレンデで入れませんから、その横を沿うようにトレースが付けられています。

20分ほど歩いて稜線へ登ると、そこには早くも大展望が広がっていました。

谷川岳への稜線から
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もう4月なのに、さすがは上越国境。まさに白銀の世界です。
この展望を見て気分は乗ってきました。あとは谷川岳から雲が流れてくれれば…



■雪庇にご注意

さて、ここから先は稜線を辿っていくことになります。

いざ、谷川岳へ

簡単そうに見えますが、登るに従って尾根が広くなり
視界が悪い時はよく道迷い遭難が起きますので要注意。
今日はというと、雲もだいぶ晴れてきていますので、大丈夫…かな。

登山道脇には雪庇が

それと、雪庇は大きなものから小さなものまで、そこら中にあります。
踏み抜きを避ける意味でも、悪天候のときは無理な登山は控えるのが賢明だと思います。

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なお、今日のように視界が明瞭で天気が崩れないなら
天神尾根での登山は、技術的には難しいところはありません。

度胸試し?

その中で、唯一「おっ!」と思うのが、この下り。
降りてからこうして振り返ると大したことはないように見えますけど、左右は急角度で切れ落ちているため
降りはじめは高度感があって、アイゼン歩行に自信のない僕は緊張を強いられました。

でも、登山者はアイゼンが履けるだけまだマシ。
スキーヤーさん達はかなり慎重になっていまして、
自分もスキーだったらここは降りたくないな…と思ったものです。

※しかし世の中には達人がいるもので、帰路ではここを一人のスキーヤーさんが華麗に滑り降りて
 周囲の登山者から喝采を浴びていました。



■登山者の列

雪に埋もれた熊穴沢避難小屋を過ぎたら、あとはもう山頂までただひたすら登るだけです。

登山者の列

とはいうものの、この登りはかなりハード。

夏道もそれなりに直登気味でしたが、冬道はそれにもまして真っ直ぐなので、斜度はなかなかのものです。
右上に写っている「天狗の溜まり場」から先は更に真っ直ぐになり、山頂までの平均勾配は実に37度。
アイゼンの重みもあって、見た目以上に疲れる登りでした。

まだまだ続く

天狗の溜まり場を過ぎると、そこはもう草木もない大雪原。こりゃ迷うわけだわ。

それにしてもさすがは人気の谷川岳、登山者の数が半端ないですね。
山頂まで途切れることなく登山者の列が続いています。
2月の四阿山は10人いたかいないかくらいだったのに…
天候のせいもあるでしょうけど、同じ百名山でもえらい違いだなぁと思わずにはいられません。

トレースはばっちり

そんな大勢の登山者が踏み固めてくれたおかげで、足もとはご覧の通り。
今日はワカンもスノーシューも不要でした。

谷川岳・肩の小屋

登山者でごった返す肩の小屋についたのは11:42。くたびれ果てました…

しかし、ここまで来れば傾斜は緩み、もう山頂は落としたも同然。
新潟側からの風は冷たく、立ち止まっていると寒いので、ここは一気にいってしまいましょう。

谷川岳・トマの耳

ということで11:53、谷川岳・トマの耳に無事到着です(^-^)



■銀嶺はかくも美しく

谷川岳は双耳峰ですから、この先にもう一つの頂上・オキの耳があるわけですが…

オキの耳へ

こうして見ると結構登るんですよね。

巨大な雪庇

しかも、このオキの耳−トマの耳間の雪庇は尋常じゃない(;゚Д゚)
崩れる時はどこまで持っていかれるんだか…

先ほどの登りで体力を使い果たした上に、雪庇に恐れをなしたビビリの自分はここで終了。
弟は突撃していったので、戻ってくるまで風景を眺めてまったり休むことにします。

それでは、トマの耳からのパノラマを一つ。

トマの耳から南東〜北方面を望む
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(手前のお二人は自分らとは無関係の方です。思いっきり写してしまってすみません)

ガスで何も見えなかった2010年夏のうっぷんを晴らすかのように、
今や空はすっかり晴れ渡り、まさに快晴。
天候が崩れやすい谷川岳としては満点と言っていいほどの、素晴らしい展望に恵まれました。
「浅間に行ってればなぁ〜」なんて後悔する羽目にならなくて本当に良かった(^-^)

平標山へ続く稜線
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なかでも特に目を引くのが、この万太郎山、仙ノ倉山、そして平標山へとつながる稜線。

いや〜、歩いてみたい誘惑に駆られますね!
今の自分では冬期の縦走はリスクが高すぎて無理ですが、
いつかあの向こうまで辿っていこうと思わずにはいられませんでした。



■行きはよいよい帰りはこわい

さて、そうして心ゆくまで景色を堪能していると、やがて弟が戻ってきました。
季節はもう春とはいえども、ここは雪山。遅くなるのは禁物ですから、早めに下山することにします。
下りはただの雪の斜面。快調に飛ばせそうですね。

下山

…と思っていたのですが、その下りは結構大変なのでした…

朝のうちは締まっていた雪は、この時間になると腐ってグズグズ。
それなりの斜度なのでアイゼンを適度に効かせたいのに、何ともイヤな感じで中途半端に滑ります。
(いっそのことシリセードで降りてしまおうかと思うも、こちらはこちらで思うように滑らなくて)

斜度がもう少しゆるやかなら何ともないんでしょうけど、高度恐怖症の人間にとって
37°の下り坂で(意図せずに)滑るのはあまり愉快なことではありません。
ですので、飛ばせるどころかヒヤヒヤな下りになってしまいました。

斜度がきついところでは、アイゼン歩行の基本「足先は進行方向に向ける」が怖くてできず、
斜めに降りたり、横向きに降りたり…
そんな時、ちょうど前にいたお子さんがやはり同じように横向きで降りていたんですけど
お父さんから「横向いて降りるな!」と怒られているのを目にしました。

まあ、子供はしょうがないよね。まだ基本もできてないだろうし、怖いだろうし。
でもアラフォー男が怖いとか言ってるのはダメだろ(笑)
と、この出来事が、後日、都岳連の講習を受けるきっかけの一つになったりしたのでした。

ロープウェイ駅に帰還

そんな訳で、目論見と違ってやたら疲れる羽目になりましたが、13:53、ロープウェイ駅に帰還。

朝ここを出てから、およそ5時間ほどかかってしまいました。
この谷川岳・天神尾根は、登山の中ではライトな行程に入るコースのはずなのに、
毎回疲弊しているのはなぜなんだ…(^-^;

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ともあれ、こうして今シーズン最後の雪山は、最高のコンディションに恵まれたおかげで
無事、山頂への往復を果たすことができました。

よく山雑誌で雪山初級としてとりあげられている通り、確かにこの天神尾根での谷川岳は
残雪期であれば技術的には困難なところはなく、歩行技術をしっかり身につけた人なら
さほど苦労なく登れるだろうな、という印象です。

ただ、その一方で、自分にとっては先月の天狗岳、そして今回の谷川岳が
今行ける雪山の限界だな、という感もありました。
先月も今回も絶好のコンディションでしたから、自分の技術に見合った山行だったと言えますが、
それでも安全マージンはさほど大きく取れているとは思えず
もしここで天気が急変したり、雪質が悪かったとしても同じように行動できたかと問われれば
とてもYESとは答えられないのが正直なところです。

2010年に雪山登山を始めてから2年。独学でのステップアップは厳しくなってきました。
もしここから先を望むなら、そろそろ別のアプローチが必要だな…
そう感じた、今回の谷川岳でした。



■余談

さて、雪山から生きて戻ったからには、まず温泉に入らずにはいられませんよね!
ということで今回向かったのは、水上IC近くにある「源泉湯の宿 松乃井」です。

源泉湯の宿 松乃井

事前にリサーチしていたわけではなく、ナビに適当に探させて飛び込んだ宿でしたが
この松乃井は、設備面に関して言うならこれまでの温泉の中ではダントツでした。

それもそのはず、ここは日帰り温泉施設ではなく温泉宿ですからね。
ロビーから更衣室に至るまでケチの付けようがなく、貧乏性の自分としては気後れするほど(笑)
日帰り入浴するだけの登山客など、特にありがたい客でもないだろうに、接客姿勢も素晴らしかったです。

ということで、ここは文句なしにお勧め!
ただ、利用時間が短いのと(12:00-16:00)、不定期に休業することもあるようですので
できれば事前に調べていくと安心ですね。

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