Snow Trekking
天狗岳2012/02/19
長野県南佐久郡小海町/茅野市 [2646m]所要時間:7時間23分
消費カロリー:計測せず
−25℃の澄み切った世界へGPSログ記録はこちら(別窓)

東天狗岳・山頂

■Introduction

今シーズンの雪山登山の最大の目標が、この天狗岳でした。

八ヶ岳の中では「雪山入門」と位置づけられる天狗岳ですが、
そうは言っても、これまで登ってきた那須岳、赤城山、北横岳、四阿山、浅間山などと比べれば
一段も二段もリスクが高い山であることは確かで、悪天候では遭難の恐れもあります。

四阿山の時のような吹雪の中での登山など論外ですから
週末が近づくたびに天気図を眺め、チャンスをうかがい続けてきました。
そして、ついにやってきたのです。これで晴れなければ仕方ないと思える絶好の高気圧が。
行くなら今日しかない! はやる気持ちを抑えながら車を走らせたのでした。



■先に受付に行きましょう

諏訪ICから八ヶ岳山麓を突っ走り、渋御殿湯の駐車場についたのは6時前。
道中に買い物ができる場所はほとんどないので、
ICを降りてすぐのところにあるファミマに寄っていくのが無難です。

渋御殿湯についたら、駐車場はスルーしてまず建物まで行き、駐車場代\1,000を払ってください。
そうすると駐車場の案内をされるはずです。
…はずです、というのは、我々は先に停めてしまってから受付に行ったからで…(^-^;
料金先払いがルールですので、お気をつけて。

駐車場にはトイレあり。雪だったのでキャパは正確には分かりませんが、20台前後でしょうか。
6時ではまだ1/3埋まっているかどうかという程度の入りでした。

渋御殿湯 駐車場

出発準備を整えているうちに、空も徐々に明るくなってきました。
ちなみにこの時点での気温は−17℃。
風は吹いていないものの、空気は身体の芯まで凍るような冷たさです。

ウェアは現状で最高の保温性のある組み合わせで来たのですが、
(フラッドラッシュスキン + ジオラインEXP + R2 + ドリューパーカ)
これで正解だったと思います。ジオラインをM.W.にしてたら寒かったでしょうね。



■痛いほどに凍てついた空気

さて、今回は本格的雪山です。気合を入れていきましょう!
6:33、駐車場を出発。

奥蓼科補導所

川沿いに歩いていくと、渋の湯ホテルの少し先に奥蓼科補導所があります。
今日はここから黒百合ヒュッテ、中山峠を経由し、東天狗を目指すという
オーソドックスなプランにしました。橋を渡って登山道へ。


ここから、まずは樹林帯の中を登っていきます。
最初のランドマークである黒百合ヒュッテまでは500m強の登りで、
特に八方台分岐までの間は富士山級の勾配ですから、序盤からなかなかハードな登山になります。

とは言え、積雪のおかげで、歩くこと自体は楽でした。
夏は岩がごろごろしているこの道も、今は雪に覆われているため、足元に段差はほとんどなし。
気温のせいか雪質はとても良く、つぼ足でも滑らず沈まず快適に歩けたのでした。

黒百合平へ

八方台分岐を過ぎると、登山道に陽が射し込んできました。
いかにも平和なのんびり雪山ハイキングといった感がありますよね。

ただ、ここで一つ問題が… 写真には写りませんが、標高を上げるごとに
空気が恐ろしく冷たく感じられるようになってきました。
温度計を見てみると、なんと−25℃を指しているではありませんか。

−25℃!? 僕の人生史上、もっとも寒い空気に包まれている瞬間です。

余談ですが、今年から、雪山ではグローブにBlack Diamondのソロイストを使用しています。
このグローブは使用温度域が−9℃〜−26℃という、僕の行ける雪山で使うには
少々オーバースペックな代物でして、
先日までは「−26℃なんて日本の雪山じゃありえないのに…」と思っていたものです。
しかしそのソロイストをして、もうあと1℃しか余裕がないという衝撃の展開(^-^;

いや〜、八ヶ岳でもこんなに寒くなるんですね。びっくりでした。

※ちなみにソロイストはこの気温でも快適でしたよ。ただ、ここはほとんど風がありませんから
 稜線で−25℃だった時でも余裕かどうかは、保証の限りではないですが…

黒百合ヒュッテ

歩き始めてから2時間少々で、黒百合ヒュッテに到着(8:47)
ここまでずっと樹林帯でしたから、ここで視界がパッと開けると嬉しくなりますね。

キレイに清掃されたトイレをお借りして(ありがとうございます)、ここで準備を整えます。
ダブルストックをピッケルに持ち替え、アイゼンを装着。

黒百合ヒュッテ テントサイト

登山道脇はテント場になっていました。
ここは登山口から近く、周りが木立に囲まれていて風もしのげそうですから
初めて雪山テント泊にチャレンジする時にはもってこいのテント場かもしれません。

いや〜、それにしても今日は最高の天気ですね!
この天気のうちに往復できれば、危険は最小限に抑えられそうです。
山頂からの展望が楽しみになってきました。



■絶景の山頂へ

さて、それではいよいよ天狗岳に挑みましょう!

ヒュッテを過ぎると再び樹林に入り、中山峠で南に折れると、目の前に天狗岳が姿を現します。

東天狗岳&西天狗岳

ド━━━(゚∀゚)━━━ン!

向かって左が東天狗岳、右が西天狗岳。こうして見ると、ずいぶん対照的な山容ですね。
ここからまずは東天狗岳に向かいます。

東天狗岳へ

画面中央左や、その右上に連なる登山者が見えますでしょうか。
くの字を描くように、左側の尾根沿いに登っていきます。

夏道はどうなのか分かりませんが、冬道はかなり直登気味。
体力的に厳しいのもさることながら、部分的に傾斜が厳しい区間もありまして、
雪質によっては、高所恐怖症持ちの人にはちょっとした試練になることでしょう。

幸い、今日はアイゼンがよく効く最高の雪に恵まれまして、滑落の不安はほとんどなし。
純粋な体力勝負でしたから、精神的にはだいぶ救われました。

かなり登ってきた

15分ほども登ると、だいぶ展望が開けてきます。
振り返ると後方には真っ白な浅間山が。

山頂まであと少し

山頂を目指す登山者の列。

なお、ここはご覧の通り、尾根の西側を歩くのが鉄則です。
このアングルだと分かりづらいですが、尾根の東側は絶壁なので、落ちたら確実に死にます。
特に吹雪など視界が悪い時は、間違っても東側に寄り過ぎないように気をつけてください。

東天狗岳・山頂

取り付きから一気に高度を稼ぐこと約50分、ついに東天狗岳・山頂に到着です(10:47)
適度に緊張感があったおかげか、思ったよりも短く感じました。


※今日は、これ以上ないと言えるほどの絶好のコンディションでしたから
 僕のようなヘタレハイカーでも特に困難もなく山頂を踏むことができましたが、
 もし天気が悪かったり、雪が腐っていたり、凍っていたりするなど、少しでも条件が悪かったら
 今日と同じように登ることはできなかったでしょう。

 最近は山岳雑誌が安易に雪山入りを勧める風潮が目に付きますけど、
 標高2,000mを越える雪山のリスクは、夏山のそれとは比較になりません。
 雪山に挑む際は、くれぐれも自分の力量に見合った山を選び、準備は万端にしてください。
 少しでも天候悪化の予兆が見られるなら、引き返す勇気も必要ですよ。


さて、堅苦しい話はここまでにしまして…
山頂からはまさに360°の絶景が広がっています。空気も澄み切っていて遠望の効く最高の条件。
東→南→西方面の展望はこのようになりました。

東天狗岳から東〜北西方面の展望
クリックで拡大(4686*600 892KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

素晴らしい! 今年一番の眺めで、感無量です。登ってきてよかった(^-^)

それにしても、眼前に迫る硫黄岳の爆裂火口跡の迫力たるや凄まじいものがありますね。
ここからずっと赤岳までトレースが続いていますが、根石岳あたりの斜面を見ると
今の僕にはまだ縦走は無理だな、と思わずにはいられませんでした(^-^;



■西天狗にも行ってみますか!

こうして、想像以上の大展望にすっかり満足した僕は、今日はこれでいいかな…と思ったのですが
例によって弟が西天狗岳にも行くべきだと言い出したため、仕方なく西天狗に向かって出発します。
と言っても、ここから西天狗は目と鼻の先ですが(^-^;

西天狗岳へ

この東天狗〜西天狗間が、本日の行程の中で最も傾斜が強い区間になります。
東天狗からの下りはまだいいとして…

山頂直下は高度感たっぷり

西天狗への登りは尋常ならざる斜度。
状態が悪ければさぞかし怖いでしょうね。
今日は雪がパウパウなおかげで、恐怖感はだいぶ薄れました。

西天狗岳・山頂

西天狗岳着、11:24。

下から見ていた時も思いましたが、同じ天狗岳でも東天狗岳とはずいぶん違うものですね。
岩でゴツゴツしていて狭かった東天狗と比べて、こちらは平坦で広々とした山頂です。
みんながみんなこちらに来るわけではないこともあり、昼食休憩はこちらで取る方がいいかも。

こちらからは、西〜北〜東方面をパノラマにしてみました。

西天狗岳から南西〜東方面の展望
クリックで拡大(5065*600 911KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

こちらも東天狗岳に負けない抜群の展望。北アルプス方面が開けているのがいいですね!

-----

さて、昼食も採り、展望も満喫しましたので、そろそろ下山にかかることにしましょう。
下りも同じコースを辿ることにします。

なお、下りで最大の難関(?)は、西天狗からの下り始めの部分。
登りでもかなりの傾斜に感じましたが、上から見ると、その高度感はかなり強烈です。
踏み出しの一歩目が怖いのなんの(^-^;
隣にいた別パーティの女性は立って降りられないくらいでしたから、高所恐怖症の方は要注意!

それ以降は、東天狗からの下りで何箇所か急降下があるものの、慎重に降りれば大丈夫。
樹林帯に入ってからは、足元が安定するため、もう夏道よりはるかに早く歩くことができます。

渋の湯

13:54、無事に渋の湯に戻ってきました。お疲れ様でした(^-^)



終始好天に恵まれ、大絶景を堪能できた今回の天狗岳。
登る前は、果たして自分達が登れるのかどうか不安もありましたが、
ベストコンディションを狙って行ったおかげで、ほとんど危なげなく歩き通すことができました。

ただ、自己流で行ける雪山は今回の天狗岳が限界かな、とも思いました。
ここも天気が悪かったら敗退していたかもしれませんし、これ以上険しい雪山に登るには
まだまだ技術がまったく足りていないというのが正直なところです。

ですので、次のシーズンこそは雪山講習を受けようと考えています。
自己流ではなく、きちんとした技術を習得してから、次のレベルの山に挑むことにしましょう。



■余談

さて、最後は恒例の温泉談義ですが…
今回はちょっと厳しい内容になりましたので、嫌な気分になりたくない方は読まないでください。

この日、帰りに寄った日帰り温泉施設は「尖石温泉 縄文の湯」。
比較的新しい施設なのでそれなりにしっかりしているのかと思っていました。

しかし、入ってみてビックリ…
お湯が悪いわけではないのですが(私は湯質には興味なし)施設の作りがヒドイのです。
棚の数だけは多いのに実際には多人数で使用することができない、狭く不快な脱衣所を筆頭として
ドアの位置や開く方向に至るまで、利用するすべての空間が
人間工学をまったく無視した設計になっているのには、失望を通り越して呆れを感じました。

ビフォーアフターの外れ匠ですら、もっとマシな建物が作れるんじゃないかと(苦笑)
とにかく居心地は非常に悪かったです。

この日は混んでいたこともあって、印象は最悪。
これまで訪れた幾多の温泉の中で唯一、人には勧めたくない温泉施設でした。
この辺は他にも温泉は多いですから、できれば別のところに行くのが賢明だと思います。

EXIT