Trekking【日本百名山】 | |
---|---|
五竜岳 | 2016/07/19-20 |
富山県黒部市/長野県大町市 | 所要時間:10時間33分 |
五竜、それは高所恐怖症との闘い | GPSログ記録はこちら(別窓) |
1日目 7/19(火) 【 白馬五竜 → 五竜山荘 】 2日目 7/20(水) 【 五竜山荘 → 五竜岳 → 白馬五竜 】 ★ 2日目 7/20(水) 【 五竜山荘 → 五竜岳 → 白馬五竜 】 運命の2日目の朝。 テントを出ると、風こそ少々強いものの、素晴らしく晴れ渡った空が目に飛び込んできました。 これで登らなければいつ登るんだという感じですが…… ともあれ、まずはご来光です。 小屋横のスペースからだと太陽が山の端にかかるかどうかという微妙な位置でしたから、白岳まで登ってみました。 雄大な空の下で望むご来光。 北アルプスの山域の中でどこが一番好きかと言われれば、おそらく自分が挙げるのは鷲羽、水晶、黒部五郎のようないわゆる黒部源流側の山になると思います。 これは別に通ぶっているわけではなくて、あちらのあの山深さは他の山域では味わえないものだからです。 でも、後立山や常念山脈を歩いていると、とても楽しみなことがあります。 それが、こうして地平線の向こうから昇るご来光を眺められること。 黒部にいると太陽はこちら側の山脈に遮られるので、昇ってきたときにはもう日も高くなっている時間で、ご来光という感じがしないんですよね。 一方こちらで眺めるご来光はまさに一日の始まりという印象で、感動の度合いも大きいです。 クリックで拡大(5034*600 686KB 画面下スクロールバーで右方向へ) いいですねぇ……素晴らしい朝です(^-^) こうして稜線からご来光を見ると、今年も夏山シーズンが始まったのを改めて実感しますね。 さて…… こうして現実逃避(?)している時間も終わり、いよいよ決断を下さなければならない時が来ました。 とはいえ実際のところ、これで行かないっていう選択肢はないですよね。 ということで、いったんテントに戻って身支度を整えて…… 5:48、山頂に向けて出発です。うぅ、気が進まないなぁ…… ■鳥になりたい 途中でどうしても無理そうなら引き返すのも視野に入れて、ともかく行けるところまで行ってみることにします。 序盤はまだ普通の登山道ですし、斜度もそこまできつくないので足を滑らせてもハイマツに引っかかって止まるだろうから安心でした。 しかし ほら、こんな道になってきたよ……(||゚Д゚) 下から見ていた時に"登山道"として見えていた区間を過ぎると、岩場のトラバースが続きます。 五竜の岩場は全般的にはこのように一応斜面でして、断崖絶壁のような場所はありません。 そのため足を踏み外したら何百メートルも真っ逆さまに落ちる、というわけではないので、視覚的な怖さはそこまでではないんですけど、とはいえ転がり落ちたら下まで止まりそうにない斜度ですから、高所恐怖症持ちとしては気の休まるところがありません。 そうして岩にへばりついている自分のそばを、イワツバメか何かが飛び回っています。 恐怖でもうろうとした頭でそんな鳥たちをボンヤリ眺めていると、君たちはいいよね…… と思わずつぶやきが漏れます。 絶対に落ちないもんなぁ…… 自分も鳥になりたい…… とはいえ悲しいかな、しょせん自分はお猿が進化しただけの二足歩行動物ですから、このまま歩いていくしかありません。 いくつもの岩場を鎖を頼りに越えると、いよいよ山頂が間近に迫ってきました。 と、ここで一つのアクシデントが。 私の前方に山ガールの二人組が先行していました。(画面中央からやや左下) 私との距離はおよそ100mぐらいでしょうか。 その二人がジグザグの登山道を登っていって、ちょうど稜線直下辺りに差し掛かったころ…… ふと物音がして私が前方を見上げると、二人に対して無数の落石が襲いかかっていくのが見えました。 ……こういう時って、当事者じゃないと身体が動かないものなんですね。 もちろん遠くから見ている自分としては何もできることはないんですが、ただ茫然と、二人に向かって石が落ちていく光景を眺めていました。 そして同時に、あれは回避できないよな、と思う自分もいました。 というのも、二人がいるのはつづら折れの細い登山道ですから横には避けられませんし、登るにしろ下るにしろ、急いで動けば転落しかねないからです。 ところが、前の二人は意外と冷静で、素早く岩の陰に退避してこれを回避。 おおっ、すごい! 素人じゃないな、よく訓練された山ガールだ!w(゚o゚)w もちろんさすがに怖かったようでしばらく動けずにいて、追いついて聞いてみたら「泣きそうでした」とのこと。 そりゃそうでしょう。とはいえ、無事で何より。 しかしこういう場面に出くわしてしまうと、やはり最近進められている「縦走路でもヘルメット推奨」という流れは正しいんだろうな、と思わずにはいられません。 とにかく危ないのは頭を打つことですよね。今回の落石はそこまで大きいものではなかったので、頭にさえ当たらなければ即死はしなかったのではないかと思います。 ここに至るまでの登山道もそうで、もし数メートル滑落して骨の5〜6本くらい折れたとしても、頭さえ打たなければ生還はできそうです。 今回の落石が自然落石だったのか、上の登山道を通った人による人為的な落石だったのかは不明ですが、山ブームで登山者が多くなっている昨今では、縦走路だから落石には遭わないとは言い切れなくなっているのが現状です。 一昔前は縦走路でヘルメットなんて…… という風潮でしたけど、そこは命あっての物種。 今回は車に置き忘れてきましたが、次回以降はヘルメットは持参しようと改めて思いました。 さて、ここまで来てもちっとも高度慣れしなくて相変わらず怖いままですが、技術的に難しいところはないので、とにかくもう先に進むしかありません。 岩場を鎖を頼りに抜け、細い稜線をビクビクしながら歩き、ふと見上げてみると 無人の山頂に、一本の標識が立っていました。 6:57、標高2,814m、後立山連峰の秀峰・五竜岳に到着です。 おおおお、たどり着けてしまった (゚д゚) ■落ち着かない…… この登頂は嬉しかったというよりも、安堵感の方が大きかったですね。 これでもう怖いところを登らなくてすむという……(^-^; 時間が半端なので周りにはだれもおらず、大展望を独り占めできました。 クリックで拡大(5409*600 998KB 画面下スクロールバーで右方向へ) 素晴らしい! この時期の後立山は早朝だけ晴れていて、午前の早いうちに東側から雲が上がってくることが多いように思っていまして、今日も帰路はガスりました。 ですから、この時間にここに立てたのはラッキーでしたね。これが見られるからこそ、ここまで登ってきたんですから。 さて…… 本来ならここでしばらく景色を満喫していくべきなんですけど、なぜかどうにも落ち着きません。 ご覧の通りこの山頂は別に狭いわけではないですし、周りが切り立っているわけでもありません。 なのに、どういうわけか、不安というか、若干の怖さを感じるのです。 白馬も唐松も鹿島槍も、考えようによってはここよりずっと怖いはず。 白馬なんて山頂のすぐ横が崖ですしね。でもそれらの山頂で怖いと思ったことはありません。 でも、なぜかここは怖い気がする…… なぜなのか考えてみると、簡単に安全なところに戻れる道がないからかもしれません。 白馬も唐松も鹿島槍も、山頂に至る道は単なる斜面なんですけど、ここはと言うと 登ってきた道はこれだからお話になりませんし 鹿島槍方面の縦走路も、奈落の底に落ちていくかのようです(^-^; ですので、後続の山ガールが到着したのと入れ替わりに、余韻に浸る間もなく山頂を後にしました。 ……と一言で片づけられるほど、帰路は楽ではなかったですが…… それでも多少は高度慣れしたので、帰路で怖さが増す分を相殺してくれたのは助かりました。 山荘着、8:10。往復で2時間20分の行程でした。 ここまで来てようやく落ち着きを取り戻すことができました。あ〜、怖かった! ■長い、長すぎる! 降りてきた直後は、とにかく安心したという気持ちが大きくて、登頂の実感はまるでなし。 でもテントをたたみながら幾度となく山頂を見上げていると、そのうちにようやく"あそこまで登ったのか……!"という達成感がわいてきました。 ここから見るととても行けそうに見えないですからね。思い切って登ってみて良かったです。 さて、とはいえまだ気は抜けません。 帰路も油断できませんからね。小屋のスタッフに挨拶して、9:21、下山開始。 その帰路はというと、行程自体は行きと同じですから説明は省略しますが、とにかくとにかく長かったです…… 距離は7km、高低差は1,000m強で、道の整備状況もかなりのものですから、これだけで考えるとそんなに過酷とは思えないのですが、なぜか非常に長く感じます。 いい加減に歩くと滑落するので気も抜けませんし…… 下山でこんなに疲れたのは鳳凰三山の中道以来かと思うくらい、本当に大苦戦しました。 先行するパーティをいくつか追い抜きましたけど、皆さんも疲労が隠せない様子。 帰路は植物園のリフトには乗れないので、テレキャビンのアルプス平駅まで歩いて降りることになります。 この最後の区間は、高山植物でも見ながらのんびり降りるか…… なんてイメージだったのですが、実際にここにたどり着くころにはもう体力はゼロ。 ただの緩やかな下り階段なのに、休み休みでないと歩けない有様でした。 当然、花を愛でる余裕はなく、駅まで最短距離で抜けていきました。あ〜、もったいない(^-^; ここまでバテたのは久しぶりかも。なんでだろう、五竜山頂への往復で精神力が削られたのが効いたのかな? 観光客の笑顔が咲く中、ひとり死人のような顔でアルプス平駅の食堂に踏み込んだのは12:57。 たったの3時間36分、しかも下りだったのに、もう一歩も歩きたくないと思うほどの疲労感を抱えながら、今日の最後の行程を終えました。 いやぁ、久々の試練でした、ホントに…… テレキャビンで麓まで下りてもまだ疲労困憊で、意識もボンヤリ。 でも、道路の向かいにあったソフトクリーム屋さんでサービスで大盛りにしてもらったリンゴソフトを受け取り、駐車場の木陰でリンゴの酸味を味わっているうちに、ようやく人心地ついて、この二日間を振り返る余裕が出てきました。 自分は楽しさも苦しさも含めて登山だと思っていますし、山行の記録を美辞麗句で飾り立てたくはないので正直に書きますけど、まず今回の五竜岳登山は想像していたよりもはるかにハードでした。 遠見尾根が長い、キツイというのは知っているつもりでしたが、そうは言っても唐松の八方尾根と似たようなもんだし、そこまでではないでしょ…… なんて思っていましたけど、大間違いでしたね。 向こうはともかく、こちらはある程度の登山経験と体力がないと、足を踏み入れるべきではないとまで感じます。 それに、やはり高所恐怖症持ちにとっては、この山は難関でした。 白馬など、他の後立山の百名山は怖いところがありませんから、この五竜だけが異質。 山行を繰り返して症状が軽くなってきたとはいえ、それでも何とかギリギリ登れた、と言ったところでしょうか。 でも…… それでももちろん、楽しくなかったわけではないのです。 山頂で見た、あのどこまでも突き抜けるような青い空、吹き渡る澄んだ空気、そしてどこまでも続く山並。 あの時、あの場にたどり着けたからこそ味わえたあの感覚。それは忘れがたいもので、やはり北アルプスは自分にとって特別な場所なんだと強く感じさせてくれるものでした。 次に来るときは、五竜単独でなく、後立山を縦走してみたいものです。 今より体力も度胸もつけて。そうしたら、今度はまた違った景色が見えてくることでしょう。 |
EXIT |