Trekking【日本百名山】
五竜岳2016/07/19-20
富山県黒部市/長野県大町市所要時間:10時間33分
五竜、それは高所恐怖症との闘いGPSログ記録はこちら(別窓)

山頂まであとわずか

■Introduction

名峰が連なる北アルプス・後立山連峰。
2011年の鹿島槍ヶ岳を皮切りに、2012年に唐松岳、2013年に白馬三山と立て続けに登ってきましたが、一座を残したままここ数年は訪問していませんでした。

その残った一座が、この日本百名山・五竜岳。
残していたのは興味がなかったからではなく、山頂へ至る道が他の山々に比べて怖いと聞いていたため、つい二の足を踏んでいたのでした。

しかしこうしてぽっかりと未踏峰が残ってしまうと、どうにも気になるものです。
そこで、今年は意を決して挑戦してみることにしました。
そして予想した通り、それは高所恐怖症との闘いになったのでした……

※2日目へのショートカットはこちら。
1日目 7/19(火) 【 白馬五竜 → 五竜山荘 】
2日目 7/20(水) 【 五竜山荘 → 五竜岳 → 白馬五竜 】


★ 1日目 7/19(火) 【 白馬五竜 → 五竜山荘 】

今年も夏休みは九連休がもらえました。
しかし今年は運悪く最初の三日が世間の三連休と重なってしまったため、混雑を避けるべく三連休明けの火曜日から山に入ることに。
でもこれは失敗でしたね… おかげで連休の後半は余裕がなくなってしまいました。

さて、ともかく火曜の早朝から白馬を目指して高速を駆け抜けます。
五竜にいたる登山道は北(牛首)、南(八峰)、東(遠見)の3ルートありますが、牛首と八峰キレットは高所恐怖症持ちとしてはありえないルートですから、登れるのは東の遠見尾根のみ。
ということで、まずは白馬五竜エスカルプラザに向かいました。

白馬五竜駐車場

白馬五竜駐車場着、7:25。

ありゃりゃ… ゴンドラ山頂駅辺りは雲に覆われてしまっています。
初夏は日が昇るにつれてこうなりがちですよね。
天気予報は今日明日ともに晴れで、実際この駐車場も晴れていますけど、登山としては曇りになってしまいそうです。
せめて山頂アタックの時は晴れて欲しいけど…… と思いながら準備を調えました。

白馬五竜エスカルプラザ

とはいえ、1年ぶりの北アルプスとなればやはり心躍るものです。
まさに待ちに待った夏がそこにある!という感じで、ほんの小さな景色――例えばこのエスカルプラザにある小さい庭園ですら輝いて見えます。

始発を見送ったので他の登山客の姿はなく、のんびりとテレキャビンに乗り込みました (8:02)
登山計画書はここで提出しておきます。



■観光だけで充分かも

8分間の空の旅を終え、アルプス平駅に到着。

テレキャビン・アルプス平駅

ここから登り初めてもいいのですが、一年ぶりのテント泊となる今日は、できるだけ体力は温存したいところです。

リフトへ

そこで、アルプス平駅から少し下ったところにあるリフト乗り場へ。

なお、ご覧の通り、ここアルプス平は白馬五竜高山植物園になっていまして、周囲は高山植物のお花畑です。
あ〜、いい雰囲気ですねー!
今日は登山に来たのでここは通り過ぎていきますけど、ただここに観光に来るだけでも満足できそうだな…… と思うくらい、素敵な場所でした。

リフト降り場

リフトの旅を終えると、そこはもう雲の中。残念ですね。
ただその分涼しいですから、ここからの遠い道のりを考えると結果的にこの天気は助かったのかも。

8:41、それではいよいよ五竜山荘に向け出発です。



■遊歩道とは……

さて、ここで改めて今日の行程のおさらいをしましょう。

今日はここから遠見尾根を辿っていきます。
ゴールは五竜山荘。おそらくテントを張ったら力尽きるので、山頂アタックは明日になる計画です。

というのも、この遠見尾根は長いんですよね……

この尾根の隣に、唐松岳に向かう八方尾根があります。
私も以前登ったことがありますが、向こうは山頂までの行程はさほど大変なものではありません。
ところがこちらの遠見尾根は、リフトで始まって百名山を目指すという概念だけでいえば八方尾根とほぼ同じなのに、道中の過酷さが段違い。
五段階評価するとしたら、八方を体力度★★、危険度★とすると、こちらは体力度★★★★、危険度★★★だと思うくらいの差があります。

分岐

ですので、いつも以上に体力・ペースには気を遣っていかなければなりません。
そこで、出だしにいきなりある分岐では、あえて遠回りに見える左側の遊歩道に向かいます。
地蔵の頭に向かった方が直線距離では近いんですけど、そちらは地蔵の頭への登り下りがあって疲れそうなんですよね。

花を見ながら

一方、左ルートは大きな登りもないですし、草花もきれいなのでお勧めですよ。

階段

15分ほどで地蔵の頭ルートと合流すると、本格的な登りの始まり。
まずは最初のランドマークである小遠見山を目指すことになります。

で……

始まったばかりですが、早くもここで遠見尾根の過酷さの片鱗が見えてきます。

この小遠見山までのルートは、トレッキングコースという扱いになっています。
"トレッキングコース"と聞いて、登山者の皆さんはどのような印象を抱くでしょうか?
おそらく、一般の人でも歩ける簡単な自然散策路、なんてイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

ところが、この小遠見山までの道は、そんな印象を覆すほどにハードです。
前半はとにかく階段、階段、階段だらけ。

先の見えない道

そして意外と長い道のり。
冷静に考えればコースタイム90分・標高差350mですからそんなにすぐ着くはずもないんですけど、どうにもトレッキングコースという響きに惑わされてしまっているのか、やけに長く感じます。

景色もこんなのですしね……
晴れていれば両サイド共に絶景になりそうなんですけど、これでは黙々と歩くのみです。

小遠見山

ということで予想外に疲れながら、9:58、まず小遠見山に到着。

※ちなみにこれは山頂前の分岐ですが、ここの道標は地形を知っていないとわかりづらいです。
特に遠見尾根を帰路でだけ使う場合はご注意を(山ガールが迷っていました)
気になる方はGPSログ記録を見てみてください。


しかしこれが遊歩道だとは…… さすがは山岳県・長野、レベルが違いますね。
栃木でこの道のりを遊歩道と書いたら非難殺到間違いなしでしょう(^-^:

「"まさに360°の大展望です"って書いてあるけど、何にも見えないよ!」というおじさんパーティの悲しいボヤキを後に、先へ進みます。



■危なく見えない方が

ただ、そうは言ってもやはり本番はここから。
小遠見山を過ぎると、登山道の雰囲気はこれまでとは変わってきます。

中遠見へ

単なる体力勝負だったこれまでと異なり、ここからは全般的に"危ない"道が続くようになります。
尾根は痩せてきて、常に道のどちらかが切れ落ちているように。

大遠見へ

もっとも、上の写真のような道はどこの山にもありふれていますし、単にこれだけを見て危ないなぁと思う登山者は多くないと思います。

でもこの遠見尾根がやっかいなのは、とにかく行程が長いこと。

注意!

1時間や2時間なら維持できる集中力も、4時間や5時間となればそうはいきません。
疲れでつい不用意に足を踏み外したり…… そんなことが容易に事故につながってしまうのがこの遠見尾根。
滑落事故が相次いでいるのも納得でした。

左手は崖

そういう意味だと、このようにいかにも危なそうに見えるところは、かえって危なくないのかも、と思います。
この道を見て、いい加減に歩いてもいいやと思う人はいないですよね。

剱岳などでも、素人目にどう見ても危ないカニのタテバイ・ヨコバイでは意外と事故は起きないものです。
そこを通過して、一見何でもないような道で気を抜いて滑落する……
この遠見尾根もそれと同じだと感じました。
一人の時はもちろん自己管理を、パーティを組んでいる時には仲間に疲れて集中が切れている人がいないかどうか、気配りを忘れずに。

階段

いやあ……
それにしても長い、長いです、この道。

毎年、ろくに日帰り登山もできないままこの夏休みを迎えて、いきなり縦走しようとして初日からバテバテになるのを繰り返していましたから、今年は短い登山にしようと思っていまして、今回も五竜で一泊して帰ってくるだけのプランにしています。
ですからザックの重量は例年の半分、たったの12kgしかありません。

鎖場

それでこんなに疲れるんだもんなぁ……
後半になっても階段あり、鎖場ありで、もう逆に笑えるくらい疲労が蓄積してきました。

五竜山荘が見えた

ですから、山荘が見えた時は本当に安堵したものです。

撮影のふり

おかげで、周囲の花に目を配ったり、写真を撮ったりする余裕も出てきました。
……というのは嘘で、もう疲れすぎていて息も絶え絶えなので、写真を撮っているふりをして休憩しているわけです。
ホント、この時はグッタリでした。日差しが出てきて暑かったですしね。

でも、目的地まではあとわずか。
遠見尾根最後のピークである白岳を越え、ひと下りすれば……

五竜山荘

「山が好き 酒が好き」Tシャツでおなじみ、五竜山荘に到着です (13:16)
リフト終点から登ること4時間35分、久々の登山としてはかなり厳しい道のりでした。



■あれに登るの……?

さて、到着したら何はさておき、まずテントを設営せねばなりません。

五竜山荘・テント場

五竜山荘のテント場は山荘の横で、ご覧の通り3段のスペースが設けられています。
両線のテント場ですから広くはないですけど、唐松のそれよりはまだ余裕がありそうです。
ちなみにこの日は、翌日にヘリでの荷揚げがあるため、使用していいのは最下段のみでした。

五竜山荘・テント場

こうしてテントを張り終えると、することがなくなります。
時刻はまだ14時。今日は雷注意報も出ていないですし、山頂までの往復は2時間半くらいですから、行くのは時間的には余裕です。

でも……
実際にここから山頂を見てみると、なんというか一枚岩に見えます。
なぜか写真がないのが悔やまれますが、登山道が途中までしか見えないんですよね。
その先はどんなに目を凝らしても道があるようには見えず、ただ垂直に切り立っているような岩壁が映るのみ。

……えっ、あれに登るの……?
そう思うと、行きたいという気持ちよりも、無理じゃない?という気持ちが勝ります。
怖いと噂に聞く五竜岳。昔よりも症状が軽くなったとはいえ、高所恐怖症持ちにはやはり無理があるのかも…… と。

そうして逡巡しているうちに、辺りはすっかりガスに包まれてしまいました。
これでとりあえず今日の登山は終了です。全ては明日の状況次第。
晴れてほしいような、ほしくないような…… なんて思いながら、早めに就寝。

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