Trekking【日本百名山】 | |
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大天井岳 | 2014/09/27-28 |
長野県大町市/安曇野市/松本市 [2922m] | 所要時間:11時間56分 |
その展望は期待をも超えて | GPSログ記録はこちら(別窓) |
■Introduction 折立から中房温泉まで歩き通すはずが、西鎌が越えられず新穂高温泉に下山してしまった夏休みの縦走。 こうなると、訪問できなかった大天井岳(おてんしょうだけ)、燕岳がどうにも気になって仕方ありません。 そこで、縦走は無理でも、せめて大天井岳にだけは登ってみようと考えました。 夏の間はずっと悪かった天気も9月になると好転し、この土日は快晴の予報です。 ルートは中房温泉からの往復。今度こそ、下山後に中房で温泉に入るんだ… ※2日目へのショートカットはこちら。 1日目 9/27(土) 【 中房温泉 → 大天荘 】 2日目 9/28(日) 【 大天荘 → 大天井岳 → 中房温泉 】 ※この日は御嶽山の噴火により多くの方々の命が失われるという痛ましい事故がありましたが その件についてはここでは記載を避けたいと思います。 お亡くなりになられた皆様に心からお悔やみ申し上げます。 ★ 1日目 9/27(土) 【 中房温泉 → 大天荘 】 金曜日の仕事を終えたら、寝る間もなく長野に向かって車を走らせます。 今回も駐車するのは穂高駅そばの登山者用駐車場。 しゃくなげ荘まで行った方が料金的には安くなるのですが、前回ここに停めて結局バスに乗らず帰ってしまったのが心残りだったので、今度こそここから南安タクシーさんのお世話になろうと思ったのです。 この日の中房温泉行きバスはA運行だったので、穂高駐車場は4:48発。 穂高駐車場にはバス停はなく、バスが来ると駐車場内の入口寄りのところで受付が始まります。 9月ともなると真っ暗なので、料金はあらかじめ用意しておいた方がいいかもしれません。 徹夜で走ってきたため、バスの中では爆睡。 中房温泉付近でふと目を覚ますと、外では小雨が降っていました。 小雨が降っていました。 えっ… えっ? ( ゚д゚ ) 周囲の登山者が着々と準備を調える中、しばしボーゼン… あれっ、今日って快晴の予報だよね…? 俺、何か間違ってる? そんなまとまりのない考えが頭の中をグルグル回ります。 勘違いかと思ってスマホでチェックするも、やはり天気予報は晴れです。 そして天気は雨です。 …そりゃないよ… (´;ω;`) 何度も書いてすみませんが、私はピークハンターではないので、雨の中の登山には意味がありません。 登山はあくまで晴れて展望があってこそです。 なのでテンションはガタ落ち。よほどここで帰ろうかと思いました。 というより、もしこの時にもう少し冷静だったら、間違いなく帰っていたことでしょう。 そして更に冷静なら、稜線の天気がどうなのかチェックしていたと思います。 しかしこの時は予想外すぎて半分パニックだったため、何となく周囲に引きずられて登る準備をしてしまっていました。 今日の目的地は大天井岳(大天荘)のテント場ですが、登山者の数が多いためテント場が埋まってしまうかもしれない、という焦りがあり、あまり悩んでいる時間もなかったのです。 う〜ん、登りたくないなぁ… そんな風に考えながらも、合戦尾根へと歩き出しました。(6:21) ■合戦尾根はきついのか、楽なのか 今やすっかりやる気がなくなり、必然的に足取りは重くなります。 しかも今日は大天井岳まで行くわけですから、最初の合戦尾根で疲れ果てるわけにはいきません。 雨ですし人が多いので休憩場所が限られることも考えて、合戦小屋までは休まずに行こうと、意図的にスローペースで登り始めました。 一方他の登山者の方々はというと、雨で失望している様子もなく、後から後からガンガン登ってきます。 そのため10m登っては道を譲り、10m登っては道を譲り… と、余計に遅くなりました。 もっとも道を譲っている間は休んでいるわけですから、これはこれで逆にありがたいのかも。 第1ベンチ通過、6:57。 しかしそれにしても、他の方々の登るペースは異様に早い気がします。 見ていると「あとちょっとで第○ベンチだからそこまで頑張ろう!」なんてパーティも多いようです。 う〜ん… 人がどう登るかはその人の勝手で、良いも悪いもないとは思いますが、個人的にはこのように「道中のどこどこまで頑張ろう」という登り方は、その人の本来のパフォーマンスを活かし切れないと思うんですよね。 ゴールがその「どこどこ」ならいいですが、ほとんどの方のゴールは燕山荘なんでしょうから、いかに燕山荘まで疲れずに登れるかを重視した方がいいのではないでしょうか。 息を切らせて一気呵成に登って休憩、また必死に登って休憩…という、マラソンで言うところのインターバル走のような登り方では、身体には多大な負担がかかってしまうものです。 第2ベンチ通過、7:27。 道中で、若い男性が、相方の女性に「ブログに合戦尾根が楽だって書いている奴をぶっ飛ばしたい(笑)」と、冗談交じりにこぼしていました。 でも実際のところ、北アルプスの主立った登山道の中では、この合戦尾根はかなり楽な部類に入るんじゃないかな、という印象です。 もちろん約1,200m登るのですから、絶対的な意味では楽ではありません。 しかし、さすがに人気の道だけあって整備されている度合いはかなりのもの。 "一歩の段差が大きいか小さいかで疲労度が天と地ほどに変わる"のが登山道ですから、その意味では相当登りやすい道だと思いました。 第3ベンチ通過、8:00。だいぶ登ってきました。 さすがは一年で一番混むシーズンというだけあって、休憩場所はどこも人で一杯。 雨の日は地面に座りたくないですが、これだけの人数がいるとベンチの数は全く足りません。 そういう意味でも、道中で大休止するような計画はあまり得策ではなさそうです。 湿気でムシムシする中を、黙々と登っていきます。 周りの方々も序盤は賑やかだったのですが、疲れてきたのか口数が減ってきてしまっているようです。 ■衝撃の瞬間 富士見ベンチ通過、8:35。 いつしか雨は止み、辺りはだいぶ明るくなってきました。 とはいえ、もちろん日が登れば明るくなるのは当たり前ですし、これが天気好転の兆しと思うほど私は素直じゃないわけです。 まあ、これで期待させておいてまた薄暗くなるんだろうな… と考えていました。 ところが、一瞬ガスが流れて、周囲の視界が開けることが増えてきます。 その間隔はどんどん短くなり、やがて… …晴れ…た…? うおおおお、晴れたあぁぁ━━━━(゚∀゚)━━━━!! 期待していなかっただけに、それはまさに衝撃的な瞬間でした。 「晴れた!」「やった!」「すご〜い!」と周囲の登山者からも歓声が上がります。 なんだ、みんなやっぱり曇ってたら楽しくないのね(笑) そして目に飛び込んできたのは、先ほどまでのモノトーンが嘘のように色鮮やかな世界。 この写真、ヤマレコにも似たようなアングルで載せている方がいらっしゃいましたけど、そりゃ撮りますよね〜! だってさっきまで周りに色なんてなかったんですよ。それが一転、この青空に映える赤の鮮やかさはもはや信じられないレベル。 これを撮らずして何を撮るのか、というところでした。 たまに流れてくるガスが光芒を描き出し、それがまたシャッターチャンスを生み出します。 周囲はもう撮影会の様相で、皆さん手持ちのカメラであっちを撮ったりこっちを撮ったり。 「撮ってばっかりで先に進めないよ!」なんて嬉しい悲鳴も(笑) そして雲海の向こうには本日のゴールである大天荘も見えてきました。 頭上には雲一つなく、これからの展望に期待が高まりますね! これまでの疲れも忘れ、上機嫌で尾根道を進みます。 周りの方々もまるで生き返ったかのようなテンションで、挨拶の声も弾んでいました。 ■秋山はかくも美しく 9:05、合戦小屋に到着。 本来はここで小休止の予定でしたが、小屋前は登山者が溢れていて立錐の余地もないほど(;・∀・) 仕方ないですね、このまま合戦沢ノ頭まで進むことにしましょう。 合戦小屋を越えると、だんだん頭上が開けてきました。 もはや何を撮ればいいのか分からないほど被写体に囲まれた中を、シャッターを切りながら登っていきます。 そしてふと後方を振り返ると… そこに広がっていたのはとてつもない雲海 ( Д ) ゚ ゚ …なんだ、これ…! これまでいくつもの山々から雲海を見てきて、特に富士山や唐松岳で見た雲海はこれ以上があるとは思えないほど見事なものでしたが、それらをも凌駕する圧倒的な眺めでした。 地平線まで途切れることなく雲で埋め尽くされているその光景は、もうこの世のものとは思えないほど。 こんな雲海があるのか… そしてこれを見れば、なぜ晴れ予報なのに下が雨だったのかも納得できます。 冷静に考えてみれば、こうして「登山口は雲の下だけど、登っていけばやがて雲を抜ける」なんて経験はこれまで何度もあったわけで、なぜ今回に限って今日は雨だと決めつけてしまったのかは謎です。 寝不足で頭が回っていなかったんでしょうか。 早合点して帰宅しなくて良かったです、ホントに…(;・∀・) 9:22、合戦沢ノ頭で小休止。 皆さん疲れも吹き飛んだようで、周囲では笑顔がはじけています。 いや〜、しかし今日の光景は何というか、とんでもないですよ! 木々はまぶしいほどに鮮やかに彩られ、空は一点の曇りもない澄んだ青。 「綺麗」という点においては、これまでのどんな山で見た光景をも越えていました。 うまく表現できないのがもどかしいくらい、そこにあったのはとてつもない眺め。 山がこんなに綺麗に見える時期があったとは… この辺りも傾斜は決して緩やかではないんですが、今やそんなことはどうでもよくなりました。 とにかく今の条件は最高としか言いようがなく、素晴らしすぎて笑い出したくなるほど。 前を向けば赤、青、黄、緑の原色で塗りつぶされた世界が広がり… 振り返ればこの通り。 これを楽しいと思えない山屋はいないんじゃないでしょうか(^-^) 燕山荘の手前の急登もものともせず… 10:10、最高の気分で燕山荘に到着しました。 ■大展望と急登と 燕山荘の喫茶で飲み物を購入し、ベンチで昼食休憩を取ります。 初めての北アならまずはここ!といわれるほどメジャーなのが燕岳、そしてある調査によれば「泊ってみたい山小屋」1位に輝いたのがこの燕山荘だとか。 そんな背景があったため、天の邪鬼の私としては逆に近寄る気にならず、北アに登り始めてから4年目の今になってようやくこの地を踏んだわけですが、来てみれば確かに人気があるのもうなずけます。 合戦尾根は適度にハードなため達成感があり、登り終えた小屋からの眺めといえば クリックで拡大(2405*600 520KB 画面下スクロールバーで右方向へ) 東側は妙高・戸隠から浅間、八ヶ岳、富士山、南アルプスの大パノラマが広がり… クリックで拡大(3266*600 955KB 画面下スクロールバーで右方向へ) 西側は槍・穂高や裏銀座といった北アの主立った山々が一望できます。 特にこの西側の眺めは、1,200m登ってきた登山者にとっては何よりのご褒美になるのではないでしょうか。 私は4年前の蝶ヶ岳でこの眺めを見ていたので大感動とまではいきませんでしたけど、初めてこの光景を見たら叫びそうです(笑) 小屋前の広場では、皆さん揃って撮影にいとまがない様子でした。 これで散歩がてらに燕岳まで往復した後、小屋なりテントに泊って翌日のご来光を堪能し、下山して温泉へ… と考えると、確かに費やす労力に対してリターンがとても大きい山行になりそうですね。 初めての登山ではさすがにきついでしょうけど、ある程度慣れてきていよいよ北アへ… というのであれば、まずここを選ぶのも納得でした。 テント泊登山者の私としては、あの一番崖寄りの場所(オレンジのテントが張ってあるところ)に張ってみたいな〜と思ったり。 テントを開ければ大展望で、まさに特等席という感じがします。 登山口を真夜中に歩き出さないと争奪戦に負けそうですが…(^-^; さて、この時間ならここにテントを張るのも余裕ですけど、初志貫徹して大天井岳に向かいます。 ちなみに燕岳は今回はパスです。時間も体力も足りないですしね。 すぐ近くに見えるのでもったいない気もしますけど、いつかまた訪問する機会もあるでしょう。 クリックで拡大(1024*680) 小屋前にいたおじさんから「大天井まで行くの? ここからが大変だね、頑張って!」と声援をいただき、縦走路へ踏み出します。 ここから大天荘までのコースタイムは2:55。 1,200m登ってきた後にさらに3時間という行程は、確かに正念場ではあります。 しかしその一方で、ここからが今日のハイライトとも言えるでしょう。 右手に広がるのは北アの壮大な山並みで、左手は一面の雲海。目の前は紅葉で、頭上は快晴。 これ以上ない究極のコンディションの中、今までの登山の中でも一二を争うのではないかと思うほどの素晴らしい稜線漫歩を堪能しました。 クリックで拡大(1024*680) とは言え、さすがに疲労は隠せなくなってきましたけどね(;・∀・) 稜線のアップダウンは、途中の「大下り」を含めてもそれほど大きいものではないのですが、合戦尾根の登りのダメージがじわじわと効いてきたようです。 燕山荘から先は登山者もすっかり少なくなり、バテて座り込んでいても目立ちませんので(笑)、のんびり行くことにしました。 前後にテン泊装備の人はほとんど見えず、もうテント場が埋まる心配もないでしょう。 クリックで拡大(1024*680) いくどかのアップダウンを乗り越えると、ついに大天井岳がドドンと目の前に現れました。 ここまでは槍へと通じる「表銀座」を歩いてきたのですが、その表銀座ともこの先でお別れ。 山腹を左上に延びる道に進み、いよいよゴールの大天荘に向かいます。 しかし、この最後の登りは苦行でした… 近く見えても、小屋までの高低差は200m強。疲労が積み重なっている今は死の登りに感じます。 登っては休み、登っては休み… と、息も絶え絶えで進んでいきました。そしてどうにか… 13:29、大天荘にたどり着くことができたのでした。 登山口を出発してから約7時間。なまった身体にはひさびさの試練になりました。 ■テント場からは絶景が ただ、テント泊登山者としては、ここですぐ休むというわけにはいきません。 テントを張り終えるまでが遠足なのです。 到着がそれなりに早かったため、場所はまだまだ余裕がありました。 さて、どこに張ろうかな… クリックで拡大(1024*680) 常念側から見ると、テント場と小屋は以下のような位置関係になります。 どこもかなりの開放感ですが、特に展望がいいのはこの画像だと左側(上高地側)か、右側(安曇野側)ですね。 さんざん歩き回って悩んだあげく、今回は上高地側に張ることにしました。 クリックで拡大(1024*680) ちなみに最後まで悩んだ安曇野側の展望はこの通り。 座って景色を眺めている方がいますが、ああしたくなる気持ちはよく分かります。 今日歩いてきた道のりが一望できますからね〜 気分は最高でしょう(^-^) クリックで拡大(1024*680) でも、上高地側も展望は抜群。 テントから顔を出せば目の前にはドーンと槍ヶ岳。眼下には上高地が見下ろせます。 クリックで拡大(6452*600) テント場周囲のパノラマはこちら。 いや〜、事前に聞いていた以上に凄い立地のテント場ですね、ここは! 北アルプスに数あるテント場の中でも、開放感はトップなのではないでしょうか。 西側こそ小屋や大天井岳で遮られているものの、それ以外の三方向は全て開けていて見通しが抜群。 訪問者の評価が高いのもうなずけます。 テントを張り終える頃にはもう、次はどういうルートでここに来ようかな、なんて考えているほどでした。 こうしてテントの設営を終えると、寝不足と今日の疲労が重なって少し寝てしまい、起きた時にはあたりはガスに包まれてしまっていました。 ありゃ、すぐに山頂に行っていれば良かったですね。ちょっと失敗(><) でも、不思議と悔しくはありませんでした。 今日は雨というマイナスからのスタートで、晴れないかも…と覚悟しての登山。 それなのにここまでの道中は予想を超える大展望の連続で、それだけでもう十二分に恵まれた一日だったと思います。 山頂の展望は明日までお預け。そしてもし明日天気が悪くても、ここにはいつかまたきっと来ることになるでしょう。 夕方になると風が強くなってきました。 ここはご覧の通り遮蔽物が何もないため、風は容赦なく吹き付けてきます。 テントが飛ばされないように、張り綱をいつも以上にガチガチに固定して就寝。 >2日目へ |
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