Trekking【日本百名山】 | |
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奥穂高岳 | 2012/08/16-17 |
長野県松本市/岐阜県高山市 [3190m] | 所要時間:12時間51分 |
涸沢よ!私は帰ってきた! | GPSログ記録はこちら(別窓) |
1日目 8/16(木) 【 上高地 → 涸沢 】 2日目 8/17(金) 【 涸沢 → 奥穂高岳 → 涸沢 → 上高地 】 ★ 2日目 8/17(金) 【 涸沢 → 奥穂高岳 → 涸沢 → 上高地 】 2日目は少々寝過ごし気味で、3時半に起床。 恐る恐るテントのフライを開けてみると… 空は部分的に雲に覆われているものの、合間からは星々が見えています。 周囲にガスはなく視界は良好。去年と違って、出発を躊躇する要素は何もありません。 これはもう行くしかないでしょう! いったん涸沢小屋に立ち寄ってトイレをお借りし、4:11、奥穂に向かって出発。 小屋を出ていきなりのハードな登りを息を切らせながら登っていくと、林を抜けたところで、先行する2パーティのヘッドライトが見えました。 さすがに山慣れしたベテラン達は朝早いなぁ… と思っていましたが、追いついてみれば実はどちらも若いカップル。 これはちょっと感心でした。(以下、微妙に"上から目線"に見えたらすみません) 率直に言ってしまうと、印象としては「最近山登りを始めました」というようなフレッシュな感じで、すごく経験があるようには見えなかったのですが、そんなカップルが誰もいない登山道をこんな時間からヘッデンで歩き始めるというのは、2人で前日からきちんと意思統一をしていても、なかなかできることではないでしょう。 前に他のパーティが何組もいるのならともかく、自分たちが先陣を切るのは勇気が要ることです。 しかし、そんな中でもあえて出発した辺りに、単に今の山ブームに乗せられたのではなく、真剣に山に向き合っていこうという意志が感じられて、なぜか嬉しく思えたのでした。 ザイテングラートに近づく頃には、ヘッデンが不要なほど明るくなってきました。 画像中央やや上、左下から右上に向かって伸びる岩の塊がザイテングラート。 今日のルート上で、最初の難所になります。 ※ザイテングラートの雰囲気は、Hachiroさんのこの動画が分かりやすいです。映像も綺麗! そして、そのザイテングラート取り付きに到着した時には、先頭のカップルを追い抜いてしまい、涸沢組としては本日のトップになってしまいました。 トップか… このザイテングラートは、技術的には難しい区間ではありません。 しかし怖いのは、浮き石が多いこと。 それなりの斜度があるため、落石を起こしてしまうと、下の登山者を危険にさらすことになります。 直近では、昨年2011/8/7に、お爺さんとお孫さんが他の登山者が引き起こした落石に巻き込まれて亡くなられたという、痛ましい事故があったばかり。 ニュースでも報道されましたので、ご記憶の方も多いことでしょう。 僕は山で死ぬのは本望ではありませんが、もし山で死んだとしたらそれが運命だとは思います。 しかし、自分が落石を起こして他人に危害を加えるわけにはいきません。 ですので、最初に先行する2パーティを見つけた時は、彼らの後ろについていけば気楽だな… と思っていたのです。 (後続は全く来る気配がないので) でも、カップル2組は自分たちが最初にザイテンを登るのは嫌なのか、もしくは後ろからオッサンについてこられるのが嫌なのか(笑)、お先にどうぞ〜♪ と道を譲られてしまいました。 前途有望な若者達を死傷させるのは絶対に避けなければ… ということで、ここからはペースアップ。落石を起こさないように最大限の注意を払いつつ、それでいてできる限り急いで、彼らを突き放すことにしました。 …でも、実際には全然離れませんでしたけどね(;・∀・) くっ、やっぱりわざと譲ったのか… 振り返ると、テン場はだいぶ小さくなってきました。 下から見上げた時はかなりの傾斜に見えて、高度感バッチリだろうな…と恐れていたこのザイテンですが、実際に登ってみれば、高さによる恐怖感はほとんどありませんでした。 少しだけ怖かったのは、鎖場のトラバースと、その後の短いハシゴくらいでしょうか。 それよりも、やはり落石には神経をすり減らされました。 登りだと、一見してコースがどこなのか分かりにくい部分が多々あり、コースアウトしてしまうと(コースアウトしていることには気づかない)とたんに足下は浮き石だらけになります。 中腹まで登った頃には、早くも穂高岳山荘から下山してくる人とすれ違うようになったため、緊張感は倍増。 一度、細かい石を少しだけ落としてしまったことがあり、下山者の方に「怖っ!」と言われてしまいました。すみません… ただ、その緊張感のおかげで、疲労を感じる余裕がなかったのは幸い。 ふと気づけば、もう穂高岳山荘が目の前に見えていました。 穂高岳山荘着、5:57。 う〜ん、やっぱりサブザック(ポケッタ20)の軽さは素晴らしい! 昨日、イーサー70で鈍牛のようにモタモタ登っていたのとはえらい違いです。 朝日に照らされた山荘前の広場は、空気も澄み切っていて最高の清々しさ。 まさに気分爽快!ですね(^-^) ■間に合うか!? さて、ここまでは無難に来られました。 しかし、この先には本日第二の難関… もっとも恐れていた区間があります。 それが、穂高岳山荘を出てすぐの、この登り。 もはや登山道というよりは岩壁に近いです。 う〜ん、事前に知っていたとはいえ、やはり間近で見ると怖い…( ;゚Д゚) とはいえ、ここで引き返すわけにはいきません。 朝食を取っていなかったので、パンを食べつつ最後の決戦に向けて覚悟を決めました。 一息ついて、周囲の登山者の数が少なくなったタイミングを見計らい、いざ、登頂開始。 下は見ない、下を見てはいけない…(;・∀・) とにかく前だけを見すえて、よじ登っていきます。 そんな中、ふと目をやると、そこには快晴の笠ヶ岳が。 よしよし! このままならこちら側の展望は期待できそうです。 核心部を越えて、後ろを振り返ってみました。 うっ、やっぱり結構な高度感が… こうして通過してみると、前しか見なかったのが功を奏したか、もしくはザイテンで軽く高度慣れ(?)したためか、とてつもなく怖い、というほどではありませんでした。 特に、ヤバいと思っていたハシゴの辺りは意外に余裕。 それよりも、むしろ何もないところの方が怖かったですね。 今立っているところも、もし足を滑らすとそのまま下まで落ちていくわけですし… 下に転落防止用のワイヤーがありますけど、どう見ても自分はすり抜けて落ちそうです(笑) さて、ともかくこれで危険地帯は脱しました。 ここから先は岩屑のゆるやかなアップダウンを、山頂目指して歩いていくことになります。 後方には、やはりこの山は見ておかなければならないと思ってしまう"槍"の姿もくっきり。 隣を歩いていたおじさんが「あれが槍ヶ岳だよ!」と教えてくれましたが、こんな時間にこんなところを登っているような物好きに、槍ヶ岳を知らない人はいないかと(笑) ただ、その槍ヶ岳方面はいいのですが、涸沢方面はもう下から沸き上がってきた雲に完全に覆われてしまっています。 雲の動きは予想外に速く、このままだと山々が雲に呑まれるのは時間の問題。 どうせなら山頂では360度のパノラマを楽しみたいですし、そのためには一刻も早く山頂にたどり着かねばなりません。 でも、この道が意外と長いんですよね… 登山ガイドだとあたかもすぐに着くような記載が多いですが、実際には延々とアップダウンを繰り返して、山頂はどこ!?という状態。 果たして、雲より先に山頂にたどり着けるか… とにかく休まずに歩き続けました。 そして… 穂高岳山荘から歩くこと37分、遂に北アルプスで最も高い場所… 標高3,190mの頂にたどり着きました(6:41) タッチの差ですが、雲より先の到着です。 ■ずっと目標にしてきた場所 本格的に登山を再開した三年前、この穂高は当分たどり着けないと思っていた場所でした。 当時は体力のなさもさることながら、技量もなく、高度恐怖症もひどくて、岩場の通過など不可能。 ましてや、山の中で夜を明かすなど考えもつきませんでした。 それが今、こうしてここにいる… いつの間にかここまで来られるようになったんだな… と、他の山に登った時とは全く違う達成感がありました。 さて、それでは山頂からの見晴らしをご紹介します。 ただ、山頂で他の方の写真を頼まれたり、パノラマ撮影に向いている場所を探したりしているうちに槍ヶ岳方面もすっかり雲に隠れてしまって、写真としてはちょっと残念な感じになりました。 クリックで拡大(5797*600 616KB 画面下スクロールバーで右方向へ) 先ほど載せた槍ヶ岳の写真を撮ったのは6:25、そして今は6:56。 わずか30分で展望はこれほどまでに変わってしまっています。 この後も雲は断続的に流れていたので、すっきり晴れた景色を見られたのはこの時間までに登っていた人達だけだったことでしょう。 もちろん、晴れた景色を見ることだけが登山の楽しみとはいえませんが、展望を期待して山頂を目指す人は多いと思います。 その意味で、夜も明けやらぬうちに、眠い目をこすりながら行動を開始して、晴れた山頂にたどり着けた全ての登山者に、声を大にしてこう言いたくなりました。 Good Job! いい判断でした! 涸沢発のカップル2組も展望を楽しめたようで良かった、良かった(^-^) クリックで拡大(3203*600 549KB 画面下スクロールバーで右方向へ) 南に目を転じれば、眼下に霞沢岳、焼岳、そしてその向こうに乗鞍岳。 それぞれ個性的な魅力がありますね。特に霞沢岳はマイナーながら立派な山容で、いつか機会があったら登ってみたいと思わずにはいられませんでした。 そして南西方面は、ジャンダルムが間近に。 「西ホへ→」というペンキマークと、その先に○が点々と見えはしますが、道があるようには見えません。 まあ、あちらに進むことは生涯ないでしょう…(^-^; ■穂高の夏、日本の夏 山頂をひとしきり満喫したら、混み合わないうちに涸沢まで戻ることにします。 奥穂山頂にいたほとんどの方々はそのまま前穂方面に進むようですし、涸沢組の大半はまだ穂高岳山荘までたどり着いていないようで、山荘まではほとんど人と出会いませんでした。 おかげで、山荘前の岩壁もそれほど怖い思いをせずにすんでラッキー。 ハシゴの辺りではあまりすれ違いたくないですからね… 7:45、特に苦労もなく山荘に到着。 でも、ザイテングラートを見ると、下からは続々と登山者の列が…(;・∀・) 小屋泊まり組が朝食を終えて登り始めたんでしょうね。 ザイテンは狭いのですれ違いに時間を食われそうですが、急いでも危ないだけだし、まあ、のんびり降りることにしましょう。 前穂。 これぞまさに夏、という光景がそこには広がっていました。 ちなみにザイテンの下りは、落石にいっそうの注意が必要なものの、高度感の恐怖はゼロでした。 登りで少し怖かった鎖場やハシゴも「これの何が怖かったんだろ?」と思うくらい。 ためしてガッテンで放送されていた通り、ずっと高いところにいると慣れるんですね〜 去年断念した槍ヶ岳の穂先も、たとえば東鎌尾根を通ってそのまま一気に登ってしまうプランなら、何とか行けるような気がしてきています。 涸沢小屋帰着、9:47。 一仕事終えて食べるソフトクリームの味は、まさに絶品でした(^q^) ■後ろ髪を引かれつつ さて、これで今回の登山のメイン部分は終了。 あとはテントをたたんで、上高地まで下山するだけです。 でも… 見てくださいこの空の青、木々の緑! 夏大好き人間である僕にとって、これ以上ない景色がそこにあるわけで… この光景を背に下山するというのは、あまりにももったいない気がします。 PEAKS辺りがさかんに煽ったり、ヤマケイも涸フェスを開いたりと、どうもミーハーが集う場所という印象がぬぐえないこの涸沢。 正直言って、これまでは冷めた目で見ていた部分がありました。 でも実際に滞在してみると、人気が出るのも当然か… と、考えを改めさせられたものです。 この快適さは、もはや異常の一言。 あのテン場は○○がちょっと… という不満が一切なく、自分にとってこれ以上楽しく過ごせるテン場は他にはないだろうな、と思うほど。 あ〜、まだ降りたくないな… 夏休みはまだ残っているので、今日下山しなければならない、というわけではありません。 ですので滞在を一日延ばすかどうかしばらく悩みましたが、結局、降りることにしました。 と言うのは、天気予報だと明日は天気悪そうなんですよね。 いつかまた、必ずここに戻ってくると決めて… 11:19、涸沢を後にしました。 ----- 涸沢は晴天でしたが、時間の経過とともに天気は下り坂。 横尾に近づく頃には雨が降り出し、あまつさえ上高地方面では雷も鳴り始めました。 やばい!と焦りますが、この頃になると疲れの色が出始めて、ペースは上がらず。 横尾着13:15。雨はひどくはないものの、進行方向で雷が鳴っているので、ザックカバーを装着。 「下山者がザックカバーをしている」という、昨日と同じ光景を再現させてしまいました。 雨の中登っていく人々を見ていると、明日は晴れてくれればいいけど… と思わずにはいられません。 <どうでもいい余談> 横尾の小屋にフラフラと近づいていくと、ベンチに座っていたカップルの可愛い女の子から満面の笑みで会釈されました。つられてこちらも会釈を返しましたが… …ど、どなた!?Σ(°Д°;≡;°д°) (注:登山道で挨拶するのは当然ですが、山小屋周辺など人が多いところでは普通は挨拶しないものなのです) 朝、追い抜いたカップル2組のどちらかの人なのかなぁ…? →と思って今の今まで誰か分からなかったのですが、写真を改めて見直してみると、やはりそのカップルの人でした。なんだ、そう分かっていればちゃんと会釈したのに… まさか前にいるとは思ってなかったので、「えっ、誰!?」って感じで、若干、挙動不審気味な会釈になってしまいました(^-^; と言うか、それなりに早く行動しているつもりなんですけど、いつ抜かれたんだろう… 涸沢に降りたのはこっちの方が早かったはずなので、テントの撤収が遅いんでしょうね。 こればっかりはなかなか早くなりませんね〜 何かコツがつかめればいいんですけど。 横尾のテン場も気持ち良さそうなところなので、ここでもう一泊… と未練がましいことを考えてみたものの、小屋前の張り紙を見ると、そんな思いを断ち切るかのように今日以降はずっと雨の予報。 だめだこりゃ、今日中に街に戻ってしまいましょう。 徳澤園到着、14:03。 終バスが何時か分からないのでちょっと焦り気味ですが (auは明神近くまでしか電波が入らず。もっとも今考えれば、小屋で聞けばいいだけですけど…) 去年食べ逃したこれを食べずには帰れません。 これで涸沢ヒュッテ、涸沢小屋、徳澤園と、去年食べられなかったアイスは全て制覇。 満足、満足(^-^) ----- さて、後は明神を経てバスターミナルまで戻るだけですが、ただ涸沢から降りてきただけの去年とは違って、今年はだいぶ疲労困憊。 平地歩きとはいえ、なかなかきつい道中でした。 上高地から涸沢に入って一泊、そこから奥穂を往復して上高地に降りるという今回のコースは、定番のコースの一つで多くの方が登られていますが、みなさん余裕そうなんですよね。 でも正直、この二日目の行程は結構キツイと思うのですが… やっぱりまだまだ体力的には北ア標準レベルに到達できていないんでしょうね。頑張らなくては。 15:44、ほうほうの体で上高地バスターミナルに帰還。 運良くすぐのバスに乗れたため、雨が本降りになる前に沢渡まで帰れました。 (帰路の途中、「竜島温泉せせらぎの湯」の露天風呂に入っていたら土砂降りに… 間一髪でした) こうして、2回目の奥穂挑戦で、遂に山頂を踏むことができました。 ずっと目標にしてきた山でしたから、まさに感無量です。 この夏休みに登ったのは鬼怒沼とこの奥穂の2山だけになりましたが、他の山にいくつ登るのよりも、自分にとってはずっと意義のある登山でした。 さて、目標を達成したとはいえ、やはり穂高は特別な場所であることにかわりはありません。 今回の登山では、穂高のほんの一面を見ただけですからね。 来年以降もまた来ます。次は北穂を目指して… 今から、その時が来るのが楽しみです。 |