Trekking【日本百名山】
至仏山2009/08/23
群馬県みなかみ町/利根郡片品村 [2228m]所要時間:6時間20分
なぜ山に登るのかって? そこに山があるからさ!※GPSログ記録なし

<<前編へ戻る

さて、それではいよいよ至仏山登山の始まりです。
尾瀬ヶ原から見た、いかにも気持ち良さそうな山容を思い出しながら
初めのうちはルンルン気分で登って行ったのです。ところが…

…あれ? もしかしてこれ… 直登じゃない?

って言うか直登だあああ!! ((((;゜Д゜)))

きつい登りなのはガイドブックを読んで知っていましたが、まさか直登だとは…
僕は体力がないので直登は大の苦手なのです。六月の男体山の悪夢が頭をよぎりました。
しかも至仏山は標高2,228mで、登山口(1,409m)からの高低差は819mもあります。
直登で819m登るのかぁ…これは厳しそうです。

そんな訳で、ものの10分も登らないうちに早くも疲れてくる始末(;・∀・)
これはまずったなあ、戻ろうかなあ、なんて考えたりもしましたが、
至仏山の山ノ鼻→山頂は植生保護のため上り専用なので、もう降りられません。

それに、こんなに早く挫折するのも情けない話です。
ここはもう覚悟を決めるしかない!と気合を入れ、とにかく一歩ずつ着実に歩を進めていきました。

振り返ると尾瀬ヶ原が

ある程度登ると、登ってきた道の木々の間から、尾瀬ヶ原が徐々に見えるようになります。
登山道には定期的に展望スペースがあるので、そのたびに振り返ってこの風景を眺め
それを励みにしてひたすら登っていきました。
汗は滝のように出ますし、息も切れてしまって、とにかく大変な行程でした。
「いや〜、直登きついねー! やんなっちゃったよ…」なんて言いながら降りてくる人もいる始末。

かと思えば、バテバテな僕の横を、トレランをやっていると思しき若いご夫婦が
足取り軽く追い抜いて行ったりもしました。
やっぱり本格的に登山している人は体力が違いますね。太腿の太さが半端ないです。
あのぐらいの体力を身につけられるのはいつの日か…



■天まで続く階段

ただ、感覚的にきついと思ったのは中間点を越えるまででした。
この頃になってようやく楽に歩けるペースがつかめるようになったのが一つ。
そして、見晴らしが広がって大分気分が高揚してきたからかも知れません。

蛇紋岩は滑りやすいので注意

蛇紋岩の岩場は手を使う必要があったりして、それなりに疲れますけどね。
途中で三度ほど鎖場がありますが、「晴れ」で「登り」の場合であればさほど苦労はありません。
ガイドブック(るるぶの"尾瀬")を読むとかなりの急斜面であるように書いてあったので
高度恐怖症の自分としては、内心、この鎖場に恐れおののいていたのですが、
急角度でもなく、登りだから高度感もなく(そもそも大した高さではない)拍子抜けでした。

むしろこの辺りになってくると、疲労よりも風の冷たさの方が問題になってきます。
至仏山は風の通り道なんですよね。
群馬・新潟方面から、とても真夏とは思えない冷風が容赦なく吹き付けてきます。
歩いている時はちょうどいいんですけど、小休止すると寒いこと寒いこと。
よっぽどレインウェアを着ようかと思ったくらいです。防寒対策は万全にしておきましょう。


高天原と呼ばれる地点にさしかかる頃になると、もう傾斜はすっかり緩やかになりました。
この辺りは階段がしっかり整備されているので、ペースを守って歩くのが簡単です。
おかげでずいぶん疲労感もなくなってきました。

空の調子は日が差したかと思えば陰ったりと、いまいちすっきりしませんが
それでも徐々に青空が広がってきた気がします。日が差した瞬間を狙って写真を撮ったりしながら
のんびりと登っていきました。
それにしても、この辺りの開放感は素晴らしいものがあります。

天まで続く階段

例えばこの階段なんて、そのまま空まで登っていけそうな勢いです。
僕は、杉みき子さんの著書「小さな町の風景」の"あの坂をのぼれば、海が見える"というフレーズが
とてもお気に入りだったりするのですが、この階段はまさにそんな雰囲気を醸し出しています。
この階段を登れば…山頂かな?

そんなに上手くはいかないようで

残念、まだでした(^^;
とは言え、ここまで来ればもう着いたも同然。最後の一頑張りといきましょう。


そんなこんなで、登りに登ることおよそ2時間。
遂に日本百名山・至仏山山頂に到着しました(11:54)

至仏山・山頂

あ〜、今回はほんっとうに疲れた!
先週の日光白根山とは比べものにならないくらいヘトヘトです。
でもその分、達成感は並々ならぬものがありますね(・∀・)
「どんなにきつくても苦しくても、一歩一歩を着実に積み重ねていけば、いつか必ず山頂に着く」
これを実感できるのが登山の醍醐味の一つじゃないかと思います。

実際、登っている途中では、なんでこんな苦しい思いをしてるんだろう、とか
もう二度と山なんか登りたくない、なんて思っていたりするのですが、
こうして山頂に辿り着くと、そんな気持ちはどこかに吹っ飛んでしまって
次はどこの山に登ろうかな、なんて考えている自分がいたり(笑)



■至福の稜線歩き これぞ日本の夏!

山頂はまさに360°の大展望。福島・新潟・群馬・栃木の山々が目に飛び込んできます。
特に新潟方面の山は普段あまり目にする機会がありませんから、新鮮な気分になりますね。

さて、そんな山頂で昼食を採って少し休んだら、だいぶ体力も回復しました。
山頂は決して狭くはないのですが、鳩待峠方面からツアーと思われる団体の方々が到着して
やや混んできましたので、そろそろ下山にかかることにしましょう。

ここからは小至仏山を経由して鳩待峠に降りることになります。
まずは、ここから40分ほど先の小至仏山へ向かって歩き出しました。

小至仏山へ 気分は最高!
クリックで拡大(1155*767)

小至仏山への稜線歩きは上の画像のように、晴れていれば特に危険なところはありません。

今年は(僕としては)ずいぶん多くの山に登りましたが、その中でもこの稜線歩きは最高でした。
頭上に居座っていた雲はようやく流れて、夏の日差しを浴びながら(高所なので暑くはありません)
穏やかな風に吹かれつつ、絶景の中をのんびり歩いて行く…
これほど幸せな山歩きがあるだろうか、と思うほどの至福の時間が流れていきます。
本当に、登ってきて良かった、の一言です。

広がるのは青い空

空が青いです。澄んだ青です。最高です(゚∀゚)

奥只見湖を望む
クリックで拡大(1155*767)

こちらは新潟方面。眼下には奥只見湖が一望できます。
それにしてもこの空、この雲、もう全力で夏!って感じですね。
もう嬉しくて、しょっちゅう写真を撮るために立ち止まっていました。

余談ですが、今回、レンズはTOKINAのAT-X 124 PRO DXしか持ってきませんでした。
ですので写真は広角ばかりで変化がなくてすみません。
高山植物(ホソバヒメシャジン)が画になりそうな雰囲気なんですけど…

ホソバヒメシャジン

さすがにこいつでマクロは厳しいですね(^-^; 目一杯寄ってこれが限界でした。


12:49に小至仏山に到着。

小至仏山・山頂

写真で伝わるといいんですけど、本当に爽やかです。夏を目一杯満喫させてもらいました。

なお、この山頂は狭いので、今日のように混んでいる日には休憩向きではありません。
至仏山からここまでは実にゆっくり歩いてきたので、特に疲労感もないですし
このまま鳩待峠まで一気に降りることにしましょう。



■観光客で賑わう鳩待峠へ

ということで、あとは鳩待峠までの標高差500m強を、一気に駆け下りていきます。
ただ、この区間、ガイドブックによっては、あたかも木道や階段で歩きやすい道のように
書いてあることもありますが、実際には木道や階段があるのは一部であって
途中のオヤマ沢田代までの大半は岩場歩きです。
ですので、ガイドブックの区間タイムよりだいぶ縮められるだろうと思って行程を計画するのは
やめた方がいいかも知れません。

それと、この区間の途中で眼下に鳩待峠が見えるんですけど、
これがまたもの凄く遠く見えたりして…

…あれ、ずいぶん遠いぞ…

この画面の中央に小さく白く写っているのが鳩待峠です。
げげげ、なんだか遙か彼方ですね(;・∀・) あまりに遠く見えて思わず笑っちゃいました。
頑張りましょう!

オヤマ沢田代

オヤマ沢田代到着13:06。ここを過ぎる頃になると道もようやく穏やかになります。
あとは樹林帯の中を降りていくだけ。木の根をまたぎながらになるので早くは歩けませんが
下り一辺倒なので体力的には楽です。ガンガン降りて膝を痛めないように気をつけて歩いて行くと
やがて木々の向こうから喧噪が聞こえてきて…

鳩待峠に帰還

到着〜! 鳩待峠に帰り着きました(13:56)
朝は寂しかったここも、この時間にはさすがに大賑わいですね。
定番の花豆ジェラートで糖分を補給して休んでから、乗り合いタクシーで戸倉に戻りました。
これで、今日の山歩きは終了です。お疲れ様でした(^-^)



尾瀬ヶ原のんびり散策プランだったはずの行程から一転、
日本百名山登山になってしまった今回の旅行ですが、おそらく当初のプランよりもずっとずっと
夏を満喫できる一日になって大満足でした。

至仏山は高山で風が強く、天気も変わりやすいため、安易におすすめはできませんけど、
もしもう何度も尾瀬ヶ原を訪れていて、少しマンネリ感を感じてきてしまっていたりしたら
一度、装備を調えて登ってみてはいかがでしょうか。
湿原歩きとはまた違った感動が味わえること請け合いですよ。

EXIT