Trekking
三俣蓮華岳・双六岳2011/08/08-11
富山県富山市/長野県大町市/岐阜県高山市 [2860m(双六岳)]所要時間:26時間4分
北アを満喫! 三泊四日のまったり登山GPSログ記録はこちら(別窓)


1日目 8/8(月) 【 新穂高温泉 → わさび平小屋 】
2日目 8/9(火) 【 わさび平小屋 → 双六小屋 】
3日目 8/10(水) 【 双六小屋 → 三俣蓮華岳 → 双六岳 → 双六小屋 】
4日目 8/11(木) 【 双六小屋 → 新穂高温泉 】


3日目 8/10(水) 【 双六小屋 → 三俣蓮華岳 → 双六岳 → 双六小屋 】

3日目の朝は、双六のテン場にしては風も強くなく、おだやかな朝になりました。

夜明け間近

今日の行程をどうするか――昨日テン場についてから、頭の中はそのことで一杯。
本来は今日が下山日ですから、双六岳と三俣蓮華岳に登って下山、くらいが関の山です。
しかし、今回の登山のハイライトはここからのピークハントなのに、
それを数時間で終わらせて下山するというのは、あまりにも名残惜しい気がしました。

そこで散々悩んだ末、本来二泊三日だった行程を、三泊四日に変更することにします。
それだと明日の予備日が消滅し、明後日からの白峰三山までの間に休養が取れなくなるのですが
最近はずっと徹夜登山ですし、そこは気合いで何とかするしかないでしょう。

さて、これで今日一日はまだ山にいられることになりました。
では、どこに行くか…と考えると、まず双六岳と三俣蓮華岳には当然登りたいですし
この二山に登るだけならそれほど時間はかからないので、あと一山加えられます。
そこで、当初断念した笠ヶ岳に行ってみることにしましょう。
行程的にはハードですが、双六岳と三俣蓮華岳はサブザックで登りますから
さほど無理はなさそうです。



■灰色の山頂

長丁場なので(僕にしては)急いで支度して、4:50頃、行動開始。
まずは双六岳を目指して登っていきます。

ところで、今日の天気は…というと、冒頭の写真ではそれなりに良さそうに見えるのですが
問題なのが、ガスが流れてきてしまっているということ。
小屋から双六岳に少し登って、見下ろしで撮ってみた動画がこれ↓になります。
※D90での撮影なので残念動画ですみません(音量注意)



近場にはガスの流れが二筋あり、一筋目が双六テン場上空を北方向に流れ、
もう一筋が双六岳〜三俣蓮華岳の西側から稜線をまたいで北東方面に流れています。
(動画の終盤、画面上を右方向にゆっくり流れているのが後者)

このうち、問題になるのが後者の方。
双六岳の稜線はこのガスの流れに完全に覆われてしまっています。
空自体は晴れているので、ガスが切れさえすれば絶景が期待できると思うのですが
流れているガスの勢いを見ると、ガスの供給はしばらく続きそうです。
ここから双六岳の山頂はすぐですから、このまま登っていったら展望のない山頂になるのは確実。
そこで、ここから双六岳→三俣蓮華岳と歩くのはやめて、先に山腹の巻き道を通って三俣峠に行き
そこから三俣蓮華岳→双六岳、と戻ってくることにしました。
巻き道を歩いているうちにガスが切れてくれるのを期待する、という作戦です。

巻き道

ということで巻き道へ。
小屋から巻き道を経て三俣峠に至るルートのコースタイムは1:50。
朝一から早くも巻き道を歩くような物好きは少ないのか、周りには誰もおらず、
稜線のこちら側は風も吹かないので、鳥の鳴き声だけが聞こえる静かな世界が広がっています。

ちなみにこの巻き道、整備はしっかりしていて、歩きにくいところはないのですが
「巻き道」にしては意外なほどアップダウンが激しく、それなりに疲れます。
アップダウンに関して言うなら、双六岳〜三俣蓮華岳の稜線の方が穏やかなのでは?と思うほど。
稜線も巻き道もコースタイムはほとんど変わりませんしね。
ですので、双六小屋まで来て「後は巻き道だから楽勝だ!」と思うと、どつぼに嵌るかも…

エンジェルラダー

さて、肝心のガスの方はと言えば、歩けど歩けど勢いが治まる様子がありません。
それどころかむしろ濃くなってきているようで、エンジェルラダーまで現れる始末。
いよいよ幻想的な世界になって参りました…

三俣峠

三俣峠着、6:31。
目論み通りになったかどうかは、この写真を見て頂ければ一目瞭然だと思います(^-^;
うむむ…
しかし、小休止で時間を稼いでみても、全く回復する気配はありませんでした。
諦めて登ることにしましょう。

三俣峠から三俣蓮華岳まではわずかな登りですが、角度が急なガレ場になっていまして
浮き石がとても多いですから、落石にはくれぐれもご注意を。
急斜面を登り切ると…

三俣蓮華岳・山頂

はい、三俣蓮華岳に到着しました(6:52)

お、ちょっと晴れてるじゃん、と思われるかもしれませんが
これは山頂で5分粘って一瞬のチャンスを待った結果の、奇跡的なガスの切れ間です。
それ以外の時間は完全に灰色の世界でした。

双六岳へ

当分、回復は見込めそうにないため、諦めて双六岳へ。

三俣蓮華岳〜双六岳の稜線は、前述の通りそれほどアップダウンは厳しくなく、体力的には楽なので
天気が良ければ最高の稜線漫歩が楽しめるでしょう。
天気が良ければね…_| ̄|○

雪渓

雪渓も、こうしてガスの中で見るとなんだか不気味な感があります。
あの向こうはどうなってんだか…

なお、登山道は稜線を東に西にと交互にまたいでいまして、東側を歩いている時は風もなく
暑いくらいなのですが、逆に西側を通っている時は、ガスが猛烈な勢いで吹き付けてきて
真夏とは思えないほどの寒さでした。

そんなこんなで、体温調節に苦労しながら歩くこと1時間少々。双六岳山頂が見えてきました。
果たして、こちらの山頂は晴れているでしょうか…?

双六岳・山頂

まあ、晴れているわけがない。

う〜ん、やっぱり残念…
でも、夏場は天気が不安定ですから、どうしても晴天に恵まれないこともありますよね。
雨が降らなかっただけマシ、と自分に言い聞かせて、寒い山頂を後にしました。

こんなに晴れているのに…

ちなみに、山頂から少し下ると、もうこの展望です。
鷲羽も三俣蓮華も、見事に山頂にだけ雲がかかってしまっていますね。
あの雲の中を延々歩いてきたことになります。
雲があとちょっと高かったり低かったりすれば、展望に恵まれたはずなのに〜!

双六小屋のカレー(\800)

8:56、双六小屋に帰還。小屋の周りはすっかり青空に変わっていました。
朝食代わりに頼んだ小屋のカレー(\800)が、夏の日差しでキラキラ輝いています(T▽T)

4:50に小屋を出てから約4時間。
こうして、朝の三俣蓮華岳・双六岳登山は不完全燃焼で終わったのでした。



■進むべきか戻るべきか、それが問題だ

さて、のんびりしている余裕はありません。次の目的地に向けて準備を整えなくては。

すっかり雲のとれた鷲羽岳

…と、いそいそとテントをたたんでいるうちに、ふと見ると
双六から鷲羽岳に流れていたガスはすっかり消えていました。
行動開始があと二時間遅かったらなぁ…

もやもやした気分を抱えたまま、10:30、笠ヶ岳に向かって出発。

笠ヶ岳へ向かおうとするも…

でも…

歩きながら、心の中ではずっと葛藤が続いていました。
前方の、これから向かう笠ヶ岳には、ご覧の通り雲がかかっています。
一方、後方の双六岳、三俣蓮華岳、鷲羽岳は、今やすっきりと晴れ渡っていますのですから。

自宅から北アルプスは遠く、更に双六ともなれば日帰りというわけにもいきませんから
休日の確保を考えると、そう頻繁にやってこられるところではありません。
もし今日のリベンジを次回に持ち越したとすると、その「次回」は早くて今年の秋か来年になり
そして、その時に双六が晴れているかどうかは運次第です。
もしかすると、何回・何年リベンジに訪れても、晴天には恵まれないかもしれません。

しかし、今ここで戻れば、確実に晴れた山頂を踏むことができるのです。

笠ヶ岳は、確かに今年行ってみたい山ではありました。だからこそ悩んでいるのですが、
もしこのままあそこまで歩いていっても雲が晴れなければ、今朝の双六と同じく不完全燃焼のまま
山を下りることになってしまいます。
そうなれば、先月の涸沢に続き、この夏休み山行は何とも無念なものになるでしょう。

そんな不確実な賭けをしてでも、どうしても今、笠ヶ岳に登りたいのか?と考えると
答えはNoだったのでした。

-----

結局、途中で180°反転し、再度双六のテン場へ。
前日の受付で、念のため二泊で申し込んでありましたので、大急ぎでテントを設営すると
今度は真っ直ぐに双六岳の山頂に向かいました。

双六岳・山頂へ…

道中、下りてきた方に、山頂はどうでしたか? と訪ねてみると
「どうもこうも、絶景だよ! 山の鉄則は"早出・早着き"だけど
 今日は敢えて出発を遅らせたんだよね。それが大正解!」
とのこと。
自然相手ですから、何もかもセオリー通りにはいかないよな… と、改めて思ったのでした。

双六岳・山頂

さて、改めまして双六岳・山頂に到着です(12:08)
4時間前のあのモノトーンの世界が信じられないほど、真っ青な夏の空が広がっていました。

もうお昼ですから、湿気で空気は霞んでいますし、槍ヶ岳方面は相変わらずガスの中です。
でも、一度は諦めた展望なので、こうして拝むことができただけで十分満足(^-^)

双六岳からの展望
クリックで拡大(4322*600 702KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

山頂から南→西→北のパノラマはこんな感じに。(槍ヶ岳方面はガスっていたので割愛)
これから向かう三俣蓮華岳までのトレイルをはっきりと見通すことができます。
周囲の山々の山名などは、三俣蓮華岳からのパノラマの方でご紹介しますね。



■これぞまさに"稜線漫歩"

続きまして、三俣蓮華岳へ。朝のルートを逆方向に辿っていきます。

三俣蓮華岳へ

ご覧の通り、三俣蓮華岳まで視界を遮るものは何もありません。
前を向いても横を見ても、目に飛び込んでくるのはどこまでも続く山並みと青い空。

やばい… 超楽しい! ヽ(゚∀゚)ノ

これだよ〜! これが見たくて、重いザックを背負ってこんな山奥まで来たのです。
まさに、これまでの苦労が報われた瞬間でした。

三俣蓮華岳までの距離は長くありませんが、この稜線歩きこそが今回のクライマックスですから
この風景を目に焼き付けるように、ゆっくりゆっくり歩いていくことにしましょう。

黒部五郎岳

なお、周囲の山々はどれも名だたる山ばかりですが、特に目を惹かれたのがこの黒部五郎岳。
特徴的なカールに向かって、三俣蓮華岳からの登山道が続いています。

あのカール、近くで見たらどんな風に見えるんだろう…
いつか、あの稜線を辿ってみたいと思わずにはいられませんでした。

三俣蓮華岳・山頂

歩くこと一時間少々、本日二度目の三俣蓮華岳・山頂に到着(13:17)
それでは、早速パノラマを撮ってみましょう!

三俣蓮華岳からの展望
山名なし版:クリックで拡大(4211*600 873KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

今回は山名あり版も作ってみました(例によって、間違ってたらごめんなさい)

三俣蓮華岳からの展望
山名あり版:クリックで拡大(4211*600 890KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

ご覧の通り、周囲どこを見回しても山、山、山です。
これまで登ってきた山では、必ずどちらかの方向に市街地が見えたもの。
それが、ここでは、眼下の三俣山荘を除き、人の工作物は一切見当たりません。

双六小屋に向かう時も、周りに山しか見えないことに感動を覚えたものですが
あの時にいたのはあくまで鞍部でした。
それに比べ、今は標高2,841mという、決して低くない山の頂にいるにも関わらず
それでもやはり山しか見えないというのは、ある意味ではとても衝撃的でした。

あ〜、こんな光景を見たのは初めてだ…!
ここまで歩いてきて良かった、と心底思ったのでした。



■巻き道はやはり遠く

三俣蓮華岳では、展望を満喫しながらのんびりさせてもらいました。
これで後は帰るだけですが、せっかくここまで来ましたので、
ついでに三俣山荘を見に行ってみることにしましょう。

不安定な下り坂を慎重に三俣峠まで降り、ひたすら下ること20分。
ハイマツの中に、赤い屋根が見えてきました。

三俣山荘

三俣山荘着、14:19。鷲羽岳がもう目の前です。
ここのテン場は、ハイマツの中にポツン、ポツンとテンとスペースが設けられていまして
適度なプライベート感が味わえる上に、風も防げて、水場からは懇々と湧き水が流れている、という
まさにテン泊好きにはたまらない、いかにも居心地のよさそうなテン場でした。
次はここにも張ってみたいな〜! 鷲羽岳にも登りたいですしね。

-----

さて、これで今日の散歩は終了。三俣峠から巻き道を通って双六小屋に戻ることにしましょう。
三俣小屋でパンとキットカットを仕入れて、ちびちび食べつつ歩いていきます。

双六小屋へ

しかし、改めて見ると、やっぱりこの巻き道、なかなかハードですよね。
距離も長いですし…
三俣山荘に向かう何人かの登山者とすれ違ったのですが、みなさんそれぞれお疲れのようでした。
(もっとも、疲れていても楽しそうではありましたけど)

すれ違うたびに大抵「三俣山荘まではあとどれくらいですか?」と聞かれまして
初めのうちは「もうすぐですよ、頑張って!」なんて答えていたのですが、
もうだいぶ歩いて、そろそろ双六小屋が見えるかな…と思い始めた頃に、すれ違った初老の方に
「三俣山荘はもうすぐですか?」と聞かれた時は、さすがに答えに窮したものです(^-^;
あのおじさん、無事にたどり着けているといいけど…

-----

双六小屋に着いたのは16:46。朝の分も合わせると、今日は10時間近く歩いていたことになります。
ふい〜っ、さすがに疲れました。

夕食は双六小屋でラーメンを頂き、今日も早々に寝ることにします。
明日はついに下山の日。ここで寝るのも今日で最後か…と
少し寂しい気持ちで眠りに落ちたのでした。

>4日目へ

EXIT