Trekking
外秩父七峰縦走2010/12/25
埼玉県比企郡小川町/ときがわ町/秩父郡東秩父村/大里郡寄居町所要時間:13時間46分
[876m (剣ヶ峰)]消費カロリー:8030kcal
延々と続く舗装路の恐怖GPSログ記録はこちら(別窓)

遠き山に…

■Introduction

最近、ロングウォークで体力を使い切ることに楽しみを覚えてきた管理人(マゾ化!?)。
長距離歩けるトレイルがどこかにないかなぁ…と考えていて、思いついたプランが二つありました。
一つは、春に行った足利縦走に赤雪山と仙人ヶ岳を加えて完全版にするもの。
これは地元ですし、ほとんどの区間は既に歩いたところなので安心感があります。
ただ、冬場に実施しようとすると、通過する場所に時間的な制約があって、いささか難しいのでした。

そこで今回は、もう一つのプランである「外秩父七峰縦走」に挑むことに。
これは、毎年春に行われている、外秩父七峰縦走大会のコースを
大会とは別に個人として歩いてみるものです。
東武東上線・小川町駅を起点とし、官ノ倉山→笠山→堂平山→剣ヶ峰→大霧山→皇鈴山→登谷山と
文字通り七つのピークを経て寄居駅に至るこのコースは、距離にして何と42.195kmという長丁場。
今まで、山道はおろか都市部でさえ歩いたことのない未知の距離になります。
歩き通せるのか一抹の不安はありますが、挑戦しがいのあるコースであることは間違いありません。
そんな訳で、今日は夜明け前から埼玉県の小川町駅に向かってひた走ったのでした。

※後日「第27回外秩父七峰縦走ハイキング大会」にも参加しました。大会の様子はこちら



■外秩父はメチャ寒い!

東武東上線・小川町駅近くの駐車場着、6:25。
車は駅改札口に一番近い(南に50mほど行ったところの)駐車場に停めました(一日\600也)
なお、改札から南に延びる二本の道路のうち、ローソン寄り(西側)の道路を200mほど
南下したところにも駐車場があり、そちらは一日\300でしたので
駅から遠くてもいい方は、そちらの方がいいかも。

小川町駅

東武線で来た弟と合流して、6:47に小川町駅を出発。
(ちなみに、駅には地図はありませんでした)
今日の推定行動時間は14時間なので、ずいぶん遅い出発のように見えると思いますが、
いずれにしても序盤か終盤は結局ヘッデンが必要な時間帯になりますので、
今日は終盤でヘッデンを使用するという前提で計画を立てています。

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さて、今回の登山記録はシンプルに進めたいと思います。
と言うのは、まず行程の途中に難所がなく、特筆することがないのが一つ。
そして、道中には次の写真のように、随所に案内板が設けられている、というのも理由です。

案内板

この案内板はハイキング大会期間以外でも外されないため、この案内板通りに歩いていくだけで
ほぼ迷うことなくゴールまで辿り着くことができるでしょう。
(最後の市街地に入った後が若干分かり辛いのと、もし万一こんな低山で迷って遭難したら
かっこ悪いので、ちゃんとした地図はもちろん必要ですけどね)
ですので、今回の登山記はコースの細かいことは省いて、道中の感想をメインに進めていきます。

…ところで、余談ですが今日の外秩父はメチャメチャ寒い!
寒さなら海なし県の我らが栃木も負けない、と言いたいところですが
外秩父はまた違った種類の寒さに感じます。身体の芯から冷えるような…
気温はこの時点で0℃。長丁場なので、ずっと寒いままだと体力の消耗が厳しいかも知れませんね。



■官ノ倉山はいきなりの急登

それでは、改めまして当日の様子を書いていきます。
まずは第一山目の「官ノ倉山(344.7m)」へ。

上で「案内板通りに歩いていくだけで〜」と書いたくせに、出だしでいきなり道を間違えたりしましたが
(恐らく、ワンテンポ早く右折してしまっています。本当は町立図書館の前の道を通るのかな?)
ちょっと歩いたところで案内板を見つけて一安心。後はもう案内板に従っていくだけです。

民家の間をすり抜けてしばらく歩いていくと、やがて道は舗装路から林道、そして
登山道へと姿を変えていきます。
この官ノ倉山の登山道は最初は緩やかな沢沿いの道でして、まあ低山だしこんなもんか…と
高をくくっていたのですが、終盤の鎖場が思いのほか急登で結構疲れたのでした。
鎖に掴まりたくなるほどの傾斜ではないものの、大会ではこの辺は大渋滞だそうで
こんなところでずっと待つのはちょっと嫌かも。

鎖場を登り切ると、最初のピークである石尊山の山頂に飛び出します。(7:55)

石尊山

ここは低山としては意外なほど展望に優れたスポットです。
隣の官ノ倉山よりも雰囲気が良く、休憩適地ですね。

石尊山・山頂からの展望
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たったこれだけの登りでこれほどの展望、近くに住んでいたら通い詰めたくなるかも。

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さて、相変わらず寒い(いまだ0℃)ので先を急ぎましょう。ここから官ノ倉山は目と鼻の先です。
ただ実は、ハイキングコースは官ノ倉山の山頂は経由しません。
(官ノ倉山からの下りは少し岩場なので、大人数が通るには危険と判断されたのかも)
ですので、コースを忠実に辿るなら山頂は巻いていくことになりますが、
今日は単なるプライベート山行なので、多少寄り道していくことにしましょう。

官ノ倉山

第一峰目である官ノ倉山着、8:11。小川町を出てからここまで1時間24分でした。
官ノ倉山の山頂は石尊山と比べると少々見通しが悪く、先ほど石尊山で小休止したばかりなので
ここでは休まずに先に進むことにします。
この登山道は下り始めこそ岩場でちょっとだけ注意が必要ですが、後は快適なのんびり坂道に。



■そして舗装路歩きの始まり

ここからは一旦市街地に出て、「和紙の里」まで1.8kmほど車道脇を歩いていきます。
七峰縦走大会は地元の方々にも知れ渡っているようで、こんな時季外れにもかかわらず
こちらが何も言っていないうちから「大霧まで行くのかい?頑張って」なんて
声をかけて頂いたりしました。

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ところで、この七峰を歩き通せるかどうかの重要な鍵になるのは「靴選び」です。
このコースに関しては、登山靴を選択するのはあまり得策ではないかも知れません。
というのも、このコース、舗装路歩きの区間がとても長いのです。
全トレイルの半分が舗装路と言っても過言ではないほど。
ですので、重くソールの硬い登山靴では疲労が増す上に、マメに苦しめられることになることも…

僕は過去の経験談を見た結果、今回はいつもの登山靴(コズミック4D GTX)ではなく
ランニングシューズ(ウェーブネクサス4SW)に変えてきています。
おかげで舗装路歩きはそれなりに快適です。
逆に登山道は、岩場はともかく土だとグリップしにくいため
(枯れ葉が積もってたりすると最悪。官ノ倉山からの下りはちょっと怖かった)
トレードオフになりますが、以前、足利で似たようなコンディションのコースを
登山靴で30km歩いた時は、足の裏が悲惨なことになったので…
多少山歩きに不安があっても、舗装路で足を痛めないことを重視しました。
これが吉と出るか、凶と出るかはお楽しみ。

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案内板通りに歩くこと25分ほどで、和紙の里に到着(9:04)

和紙の里

自販機で飲み物の補充、及びトイレをお借りして、先に進みます。

さて、ここから再度登山道かな…と思いきや、この先も延々と舗装路(林道)が続いています。
この林道歩きはなかなかハードでした。曲がりくねっているからなかなか直線距離が稼げないし
傾斜もそれなりで、そんな道を延々と歩いていると、さすがにランニングシューズでも
足の裏が痛くなってきます。

舗装路をひたすら登って…

ですので、こうしてコースが登山道になると結構嬉しかったり。
…でも、この登山道はすぐにまた林道に合流してしまったりします。
舗装路歩きが終わってようやく笠山への登山口に辿り着いたのが10:40頃でしたから
1時間半近く舗装路を歩き続けたことに… ここが、最初の(精神的な)疲労ポイントでした。

ようやく登山道へ

そして精神的疲労ポイントである林道が終わると、今度は体力的疲労ポイントが(^-^;
笠山の登山道入口から山頂までは400m強の登り。本コース中では最も長い上り坂です。
所要時間は休憩込みで1時間と少々でした。
なお、笠山山頂はチェックポイントですが、見晴らしが良くないそうなので今日はスルー。

堂平山が見えてきた

笠山からの急降下(ここはランニングシューズだと少々不安)が終わると
目の前に堂平山(875.8m)が見えてきます。

堂平山はこのコース中で二番目に高く、それなりに迫力のある山容を見せてくれることもあって
この山に立つことが精神的な一つの区切りになるように思います。
七重峠から高低差80m弱を登り終えると…

堂平山・北側斜面からの展望
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まず、パラグライダー場に飛び出します。
ここは石尊山以来の展望スポットになりますね。
ちょっと風が冷たいものの、空気が澄んでいて気分がいいです。
(本当はこの手前、コース外にある笹山も展望が良いとのことで、寄るつもりでいたんですが
 道を間違えまして…)

ちなみに、向こう側に見えているのがこれから歩いていく尾根で、ここから一旦左手に回り込んで
右方向に尾根を辿っていくことになります。

中央から少し右にある少し茶色の草原のような場所が見えるところが大霧山、そして、そこから
少し下りて登り返したところにある草原のような場所が、秩父高原牧場(彩の国ふれあい牧場)です。
そしてその先に、ここからは見えていませんが皇鈴山と、登谷山が…
そう考えるとまだまだ笑っちゃうくらいの距離がありますね。
ここまでで既に20km歩いてきているのに、更にあのトレイルを歩くのか…と思うと
正直、一抹の不安がよぎりました。

堂平観測所

山頂直下の施設でトイレをお借りして、山頂に辿り着いたのは12:40頃。
(厳密に言うと、山頂はこの左手です)
小川町駅を出てからここまで約20kmの距離を歩くのに、6時間近くかかっています。
遅い、遅すぎる(笑) 大会だったら途中棄権のペースでしょうね。
でも今日は誰かと競争しているわけではないし、ゆっくりのんびり行くつもりなので
これでOKとしましょう。

堂平山・南方面の展望
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そんな訳で、ベンチでマッタリと昼食タイム。
開放感溢れる山頂からは南西の東京都心部が望めます。
建造中のスカイツリーも今日はなんとか見えました。



■後半戦へ 風が冷たくなってきた…

七峰縦走の行程はこれでおよそ半分が終了。後半戦に入ります。
後半には大きな登りはないものの、距離はここまでよりむしろ長いですから
気合いを入れ直していきましょう。

まずはお隣の剣ヶ峰(876m)へ。
ここはこのコース中で最も高い場所になりますが、ピークには鉄塔が建っているだけで
展望も山名板もなく、寂しいところでした。通過時間は13:15。

これで残すは第五峰・大霧山、第六峰・皇鈴山、第七峰・登谷山の三座のみです。
しかし、ここ剣ヶ峰から次の大霧山までは地味に長く(6km強)、アップダウンも激しい上に
途中には白石峠の後に殺人的階段(170段以上)があったりするなど、何気にハード。
これが最初の頃ならまだしも、疲労が蓄積してきている今の身体ではきつかったです。

白石峠からの階段

更に考え事をしていた事もあって、この区間の記憶は正確には思い出せません(^-^;
何だかもうただ黙々と歩いていたような… 定峰峠近くの下りが
ランニングシューズだと少し怖かったくらいの記憶だけが残っています。

…と、そんなこんなで2時間以上かけて、ようやく大霧山に到着(15:26)

大霧山

ここの展望は見事の一言。
奥秩父の山々はもちろんのこと、北には遠く日光連山までを望むことができます。

堂平山・南方面の展望
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ちなみに、ここからは画面中央付近の尾根を真っ直ぐ北上していき、
最終的に尾根の右側に少し見えている市街地に下りることになります。
こうして見ると、まだゴールは遙か先なのだということが改めて実感されるのでした。


そして、この吹きさらしの大霧山・山頂から、いよいよ風が冷たくなってきます。
剣ヶ峰からは寒さのあまり、通常は行動中には着ないライトシェルを羽織っていまして、
普段の低山歩きならライトシェルだけでも行動中は暑くてたまらん! ということになるのですが
今日は風が強い上に体力の消耗が激しいのか、ライトシェルでも寒く感じられるようになったため
ここからハードシェル(ドリューパーカ)を着用。
もはや半分雪山装備の趣になってきています。これでも暑くないのですから、消費カロリーに対して
摂取カロリーが少なすぎて、体温の維持がうまくできていないようです。

やっぱり冬場にこの長丁場は無理があったかな、と実感した瞬間でした。



■遠き山に日が…

ここからは下りに下って「彩の国ふれあい牧場」へ。
冬期は営業期間外でしたので、ソフトクリームが食べられなくて涙目に(^-^;
なお、この先、ルート上にトイレはありませんのでご注意を。
(秩父登谷高原牧場が開いていればそちらでお借りできるかも。今日は真っ暗でしたので寄らず)

そしてここから再び長い舗装路歩きの始まりです。
剣ヶ峰を過ぎてからは周囲に他の登山者の姿はなく、ただ淡々と舗装路を歩いていると
やがて背後の山に日が沈んでいく時間になりました(冒頭の写真)

東京の夜景がはっきり見えるようになった頃、二本木峠に到着(16:57)
七峰は、峰々の内側を路線バスが走っていまして、大会で力尽きたり、チェックポイントで
規定時間に間に合わなかった場合は、このバスに乗って小川町駅まで戻ることになります。
そして、コース上でバス停に下りられる最後の場所が、この二本木峠なのです。
ここで下りなかった場合、後は寄居駅まで自力で歩いていくほかありません。

土曜日の終バスは19:36ですから時間は余裕。ここで下りてしまえば駅までは楽だな…と
ほんの少しだけ迷いましたけど、ここまで来てリタイヤというのも悲しいものがあります。
体力が尽きている訳でもないし、もともとヘッデンで歩くのは計画のうち。
ということで、最後まで歩き通すことにしました。

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二本木峠からはもう少し林道を歩き続けて、やがて右手に現れる皇鈴山への登山口に向かうのが
本来のコースです。しかし我々はもう地図を見ていなかったため、二本木峠からすぐ左手にある
登山道を登りつめて、コース外の愛宕山へ… こうしてますます無駄に体力を消費(^-^;

愛宕山を越えて林道に戻り、皇鈴山に登る頃には、辺りはすっかり暗闇に包まれていました。
皇鈴山(みすずやま)山頂着、17:25。

皇鈴山(みすずやま)

たまにはこんなナイトハイキングも悪くない… のですが、いかんせん風が強すぎます。
こんなところで停滞していたら凍ってしまう!
残すはあと一座のみですから、全力で最後の登谷山に向かいました。

その登谷山への道すがら、東方面の展望が開けているところがあったので夜景パノラマを一つ。

登谷山付近から東方面の夜景を望む
クリックで拡大(2914*600 280KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

そして遂に、第七峰目である登谷山・山頂に到着(17:50)
夜なのではっきりとは分かりませんが、ここも東側が完全に開けていましたので
かなりの展望が期待できるスポットだと思います。

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この時点で気温を見てみたところ、なんと−3℃。
標高668mの低山とは思えないほどの素敵な寒さです。
これはもうさっさと下りるしかない、ってことで一気呵成にゴールの寄居駅を目指したのですが…

…遠い、遠すぎる…(;´Д`)=3
このラスト区間、登谷山から寄居駅に辿り着くまでは、舗装路が延々と続きます。
その長さ、およそ10km。下り一辺倒なので体力的な疲労はないものの、
夜間で見通しも利かず、人通りもほとんどない道をただ黙々と歩いていくのは
精神的にかなり厳しかったです。本当にこの区間はぐったりしました。

ですので、寄居駅が見えた時は嬉しかったですね〜
20:33、寄居駅に到着。これでようやく本日の長い長い行程は終わったのでした。

寄居駅

あとは電車で小川町駅まで戻って、そこから駐車場へ歩くだけです。
…と、ここで一つハプニングが。寄居駅に戻った時は疲労であまり頭も回っていませんでしたし
歩いてきたばっかりなので寒いとは思わなかったのですが、小川町駅で電車を降りて外に出た瞬間、
急に身体が震えだしてどうにも止まらなくなりました。
慌てて駅前のローソンに緊急避難。いわゆる低体温症一歩手前状態だったんでしょうね。
やっぱりこの時期に歩くのはちょっと無謀だったかも。



とまあ、こんな感じで最後はグッタリになってしまった初の七峰縦走。
でも、42km以上のトレイルを歩き通せたことは少し自信になりました。

あとは、この手の舗装路歩きが多いところでは、登山靴よりもランニングシューズの方が
足の裏にダメージが少ないことが実証できたのも大きかったです。
足利30kmの時と違って、足にマメができたりするようなことはありませんでした。

翌日はそれなりに筋肉痛に襲われましたが、思っていたよりは疲労は少なかったかも。
大会に出るかどうかは別にして、またいつか歩きに来ようと思ったのでした。

EXIT