Trekking【日本百名山】
蝶ヶ岳・常念岳2010/09/10-11
長野県松本市/安曇野市 [2857m(常念岳)]所要時間:16時間41分
消費カロリー:9529kcal
目の前に広がるは槍穂の絶景GPSログ記録はこちら(別窓)

蝶ヶ岳山頂より穂高岳を望む

■Introduction

今年の北アルプスはこれで三度目。
で、実はこの常念岳こそが今年最大の目標でした。
白馬岳(敗退)はテント泊予行練習のためでしたし、鹿島槍(敗退)は思いつき。
でも今回は一年前から計画していた山行で、今までの登山は
これを実現するためのものだったとさえ言えるでしょう。
準備は万端、今の自分の集大成へ、いざ。

※2日目へのショートカットはこちら。

1日目 9/10(金) 【 三股 → 蝶ヶ岳 】
2日目 9/11(土) 【 蝶ヶ岳 → 常念岳 → 三股 】


★ 1日目 9/10(金) 【 三股 → 蝶ヶ岳 】

さて、今回は三股(駐車場)から蝶ヶ岳〜常念岳を周回して三股に戻るというプランなのですが、
ここで問題になるのが、果たして三股駐車場に車を停められるか、ということです。
有休を取って金曜日からの登山にしましたし、9月に入ったので登山者はやや減ると思いますけど
そうは言ってもここは北アルプス、そして日本百名山である常念岳の玄関口。
事前にネットでリサーチした限りでは、朝に自宅を出たのではまるで間に合わないようでした。

そこで、木曜は帰宅後に準備→東京に出て同行者(弟)をピックアップ→そのまま三股へ、と
夜のうちに移動することにしました。
うえぇ、先々週の富士山に続いて、また徹夜登山だよ(T▽T)
大丈夫かなぁ、今回はザックがテン泊仕様なんだけど…

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そんなこんなで三股駐車場着、6:14。
※駐車場までの林道烏川線は全面舗装路。一部狭隘で離合できない区間がありますが、
概ね片側一車線は確保されていて、きれいな走りやすい道です。ただし落石には注意。

三股駐車場

駐車場は見ての通り、70台のキャパに対して15台停まっているかどうかというガラガラ状態です…
返せ! 俺の睡眠時間を返せ! (この日は本当に半端なく眠かった…)

と言うわけで、さすがにお盆過ぎの平日ともなると余裕があるようです。
ちなみに、土曜日に下りてきた時もだいぶ空いていたので、シルバーウィークまでは
北アルプス登山は端境期なのかも知れませんね。

今日は蝶ヶ岳まで登るだけなので、よほど一眠りしてから行動しようかと思いましたが、
朝の空気が澄んでいる時間を逃すのももったいないので、徹夜で登り始めることにしました。
そして結果としては、これが大正解だったのでした。



■初めのうちは余裕綽々

こんな山奥の駐車場にもかかわらず、ここにはトイレや水場も用意されています。
さすがは北アルプスといったところでしょうか。
準備を整え、7:05、登山開始。

まずは15分ほど沢沿いに歩いて三股登山口へ。登山届けの提出先はこちらです。
登山口にも水場あり。登山口から50mほど登ると、蝶ヶ岳方面と常念岳方面への分岐に出ますが、
常念岳方面に登る場合、この先には水場はないので、ここで水を補給しておきましょう。

今回はとにかく蝶ヶ岳のテン場に泊まりたくて、僕としてはそれが目的で来たようなものなので
我々は素直に蝶ヶ岳ルート(蝶ヶ岳新道)に向かいます。こっちの方がはるかに楽ですからね。

沢沿いの登山道

朝の清々しい空気と、木々の緑が眩しく輝く中、初めのうちは余裕綽々の気分で歩いていきます。
地元の山ならともかく北アともなるとそうそう来られるものではないので、テンションは高め。

30分ほど歩くと「力水」と呼ばれる水場に到着します。

力水

蝶ヶ岳ルートでは、確実な水場はここが最後。
(と昔のガイド本には書いてあったのですが、ここも涸れることがあるようです)
運が良ければはるか上の蝶沢でも水が確保できるのですが、
もし蝶沢が涸れていたら悲惨なので、ここで汲んでいくのが賢明だと思います。

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三股〜蝶ヶ岳ルートはほとんどが樹林帯の中なので、展望はほとんどありません。
このようにまれに木々の間から稜線が見える程度。

稜線は遙か遠く

救いなのは、登山道の整備が行き届いていること。
高低差が高低差なので、ところどころ急登の区間はありますが、いくつかのごく短いはしごを除けば
手を使わないと登れないようなところはありません。一歩一歩のストライドも短くてすむので
高低差ほどには疲れないルートです。
柏原新道を歩いていた時も思いましたが、高山でこんなに歩きやすいルートは珍しいと思います。
いつものことながら、関係各位の努力に感謝です。

9:26、標高1,900mのまめうち平に到着。
ルート上でこのように開けている場所はほとんどありませんから、一休みすることにしました。

まめうち平

ガイドブックによると、ここまでのコースタイムは2:25。そして自分達のタイムは2:21…
この時点ではまだ余裕はあるものの、それでもほぼコースタイムと同じペース(つまり遅い)に
なってしまっています。先行きが不安になってきますね(^-^;



■デカザック+徹夜はやっぱりきつかった!

やがて、木々の間から常念岳がはっきりと見えるようになってきました。
左の一番高いピークが常念岳です。
明日は常念岳まで登り、そこから稜線沿いに右方向に下りていくことになります。

常念岳は遙か遠く

ところであの稜線、前常念から角度が変わってやけに急傾斜に見えますが、まさかあれを
下りていく訳じゃないですよね、まさかね…

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さて、予期されていたことではありますが、この辺りからはっきりとペースが落ちてきました。
常念岳ルートより楽とは言え、三股駐車場から蝶ヶ岳までは単純標高差でも1,300m以上…
いつもキツイキツイと言っている男体山(表ルート)ですら標高差は1,200mです。
しかも今日はテン泊用の荷物がイーサー70に満載されている上に、徹夜登山。
何組かのパーティに追い抜かれましたが、もういくらでも追い抜いて下さい…というくらい
疲労が溜まってきました。
蝶沢を越えると急登になってますますペースダウン。

森林限界はまだか!

しかも、弟がガイドブックをどう斜め読みしたのか、この辺りから森林限界はすぐだと言いだし
(実際には森林限界は山頂直前)あそこまで行けば森林限界かな?→違う→
次のあそこなんでは?→違う… を繰り返しているうちに、精神も消耗してしまいました。
何してくれんだ!(笑)

下界からはガスが徐々に徐々に上がって来て、気は焦るけれども足は前に進まず…
座って休むと立ち上がれなくなるので、木にしがみついて休憩を取る有様。
ホント、この時は心底疲れました。

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そんな「森林限界詐欺」を繰り返すこと10数回…
12:28に大滝山分岐に飛び出し、ようやく本当の森林限界に到達しました。
この時点で、まめうち平から蝶ヶ岳までのコースタイム(2:40)を大幅に超過していますが
もはやそんなことは気になりません。だってね…

これは…もしかして…!

これを見て下さい。この先は明らかに稜線です。
つまり、遂に稜線の向こう側… 槍・穂高連峰を目にする時が来たのです!
疲れていることも忘れてダッシュで稜線まで駆け上がりました。すると…

期待を遙かに上回る超展望!
クリックで少し拡大(903*600 198KB)

キタ――(゚∀゚)――!!!

目の前には、すげええええええええ! と叫び出したくなるほどの大展望が広がっていました。
(実際には圧倒されて声も出ず)

これは予想以上だ…! 登ってきた甲斐があったというものです。
重いザックを投げ出して、しばらくぼんやりとただ景色を眺めて過ごしました。
稜線の向こうから吹いてくる風が、汗だくの身体に何とも心地よく感じられます。

そして北に目を転じれば、すぐそこには蝶ヶ岳ヒュッテ。
そしてその向こうには常念岳が鎮座しています。

蝶ヶ岳ヒュッテ 常念岳をバックに
クリックで少し拡大(903*600 208KB)

PLフィルターを効かせすぎてしまいましたが、これはこれで夏!って感じになったかな?

それでは恒例のパノラマ撮影といきましょう。
久々に山名あり版も載せてみます。間違ってたらごめんなさい。

蝶ヶ岳山頂直下から穂高岳・槍ヶ岳を望む
山名なし版:クリックで拡大(3472*600 663KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

蝶ヶ岳山頂直下から穂高岳・槍ヶ岳を望む
山名あり版:クリックで拡大(3472*600 739KB 画面下スクロールバーで右方向へ)




■たった一時間で天と地の差

さてさて、展望は十分満喫しましたし、今宵の宿を設置することにしましょう。
早くこの重いザックから解放されたいですからね(^-^;

蝶ヶ岳ヒュッテでテン場の申し込みをして(\500×2人)場所選びへ。
このテン場は稜線からほんの少し東側に下ったところにあるため、稜線を盾にして設営すれば
西側からの風が直撃せずにすみます。
この時点でテン場の先客はたったの二張りでしたから、場所は選びたい放題でした。

今日はうまく張れたかも?

で、我々が選んだのは最も南のくぼんだところ。風はほとんどシャットアウトできたため、
白馬大池のように、夜中に風で起こされたりすることはありませんでした(゚∀゚)
ただ、このように樹木に近いと、朝日が当たらないというデメリットもありましたが(´・ω・`)
それと、多分ここは雨が降ったら水没します(笑)

このテン場は全般的に平らで、設営用の石も豊富、ペグも刺さりやすいという
まさに初心者にはうってつけのテン場です。
水(\150/1L)とトイレは蝶ヶ岳ヒュッテまで赴く必要がありますが
徒歩二分なので問題ないでしょう。

さて、そんなこんなで、今回はそれなりにテントもまともに張り終えて、
一応蝶ヶ岳山頂まで登ってみるか、とサンダルで歩き出したらこれがビックリ。
ついほんの一時間前まであんなにクリアに見えていた穂高連峰が、すっかりガスの中なのです。
(このページ一番上の画像がその時のもの。この後もどんどんガスっていきました)

あ〜危なかった! もし、朝、駐車場で少し寝てから登ろう、なんてやっていたら
上のパノラマは撮れなかったでしょうし、そうしたらこの日の気分は全然違ったものに
なっていたことでしょう。こういうことがあるたびに「早立ち・早着き」は大切だよな、と
つくづく思うのでした。

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これでひとまず、今の時点でやるべき事は完了しました。
後は夕飯まで自由時間、ということで昼寝することに。(だってもう眠くて…)
夏のテン場では、普通ならこの時間にステラリッジの中で昼寝することは暑すぎて困難ですけど、
この日は、15時過ぎになると少し日が陰っただけでやたらめったら寒くて、ダウンなしではとても
外にはいられないくらいの気温でしたから、テントの中の方がむしろ暖かくて快適でした。

一眠りして目覚めるともう夕方になっていたので、夕飯の支度を開始。
今日の夕飯は中華三昧(と、食べ切れていないおにぎりやパン)です。

中華三昧

イータパックライトは中華三昧が折らないでも入るので便利でした。
スープの温かさが身体に染み渡ります。寒い中だとラーメンはうまいですね。

綺麗な夕景は見られず

結局、この日は夜までガスは綺麗には晴れず…
アーベントロートはまた次回のお楽しみになりました。

テン場はスカスカ 平日はいいね!

テン場には最終的に10張りのテントが並びました。
このくらいスカスカだと、適度にプライベートな間隔が保てて気が楽です。

穂高岳に日は沈む

こんなところまでテントを担いでくるだけあって、今日のテン場の方々は
みんな山慣れしているようで、18時頃にはテン場はすっかり静まりかえりました。
我々も明日に備えて寝ることにしましょう。おやすみなさい。



■本当の「満天の星空」

しばらくしてふと目が覚めました。ずいぶん寝たと思いましたが時計を見るとまだ20時。
もちろん山の中ですから、この時間でも完全に真っ暗です。
一応、星が出ているかどうか見てみるか、夏だから綺麗には見えないと思うけど… と思いながら
寝ぼけ眼でテントから空を覗いてみました。すると…

テントの外は一面の星空

!?

そこに浮かんでいたのは無数の星々。
なんだこれ…! この季節にこんなに星が見えるものなのか!?とショックを受けるほど
本当に満天の星空としか表現のしようがない光景が広がっていました。

慌ててカメラと三脚をひっつかんでテントを飛び出します。
周りのテントの人々を起こさないように静かに、でも急げるだけ急いで稜線に出てみると
槍ヶ岳を覆っていたガスはすっかり晴れていて
槍の穂先が星空の下で黒々とした姿を見せていました。

槍穂の夜
クリックで少し拡大(896*600 48KB)

穂高はまだちょっとガスってますけど、これくらいなら御の字と言ったところでしょう。
(稜線で輝いている明かりは右から槍ヶ岳山荘、北穂高小屋、穂高岳山荘のもの)

そして御嶽山・乗鞍岳方面を振り返ってみれば、そこには天の川がはっきりと見えていました。

御嶽山・乗鞍岳と天の川
クリックで少し拡大(890*600 76KB)

天の川をこんなにクリアに見たのは人生で初めてでしたので感動。
ほぼ無風の絶好のコンディションの中、夢中でシャッターを切ったのでした。



と、大満足で終わった登山初日。明日はいよいよ常念岳に向かいます。
続きは後編で>

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