■Introduction
シルバーウィークの山形遠征、第二山に選んだのがこの山でした。
昨日の鳥海山でテンション下がり気味だったのと、連休最終日なので早めに家に帰りたい欲求もあり、意気揚々と乗り込んだわけではありませんでしたが…
いざ登ってみれば、毎週登りたくなるほどの素晴らしい山だったのでした。
※この記録は前日の鳥海山の続きですが、その鳥海山の記録はまだ書いていません(><)
しばらくお待ちください。
■登るか、帰るか…
車中泊していた櫛引PAで目を覚ましたのは午前3時。
顔を洗いに車を出ると、外は強風でかなり寒く(車外温度計で12℃)、おまけに空は曇っているのか星も見えません。
う〜ん… なんだか微妙な気分になってきたぞ…(;・∀・)
今日は連休の最終日なので、帰りが遅くなれば渋滞に巻き込まれるのは確実。
一方、今は山形道に車の影もなく、このまま帰れば自宅には7時には着けるでしょう。
帰って最終日は疲労回復に努めるのも手かな… と悩みます。登山の片付けとか洗濯もできますしね…
でも、どうにも昨日の鳥海山が不完全燃焼だったのが気に入りません。
今シーズンの登山があれで終わりになったら無念ですね。
そこでうだうだ悩んだあげく、とりあえず登山口までは行ってみることにしました。
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姥沢の駐車場に着いたのは4時過ぎ。
標高が上がってますます寒くなったので、ヘッデンで歩きだそうという気は全く起こらず、車内でシュラフにくるまって明るくなるのを待ちます。
5時を過ぎるとようやく明るくなってきました。
空は高曇りで、登山には支障はなさそうです。
振り返れば、山頂もはっきり見えていました。
行かない理由もないか… 登ることに決定です。
ちなみにこの時間でも停まっている車は十数台で、車中泊の方々がトイレに行ったりする他は人影もなく、駐車場は静まりかえっていました。
昨日の鳥海山はもう出発する人で溢れているような状態だったのに、えらい違いですね。
連休最終日は家で過ごそうと考えた人が多かったのか、鳥海山は長丁場だから早出の人が多かったのか…
どうやらトップバッターのようですけど、道も見えるようになりましたし問題ないでしょう。
5:26、駐車場を出発。
■樹林帯はあっけなく
さて、まずは今日のルートをご紹介します。
(駐車場の先にある案内図を使用。帰ってきてから撮ったものです)
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今日は姥沢からの登山になりまして、行きは駐車場を出て(リフトには乗らずに)右手の登山道から牛首を経て山頂へ。
帰りは姥ヶ岳を経由してリフトで下山、という計画です。
コースタイムは「山と高原地図」によれば5時間10分。
(行きもリフト使用なら4時間5分。どちらもリフト乗車時間や休憩時間は含まず)
月山の登山ルートの中ではもっとも楽なルートですね。
…いやまあ、今日は帰らないといけないし、たまにはこういうお手軽ハイキングもいいかなと(^-^;
ということで、登山道目指して舗装路を進んでいきます。
道中には駐車場の協力金(200円)を徴収するプレハブがありますが、今は係員さんがいないので後で払うことにして先に進むと、橋を渡ったところで道が丁字路になりました。
画像の左手がリフト乗り場、右手が登山道になります。
私は「登山原理主義者」ではなく、リフトがあるならリフトで登ればいいじゃん!と思ってしまう軟弱登山者ですが、
リフトがこんな早朝から営業しているはずもなく、今回は歩いて登らざるを得ません。
ちなみにリフトを使うと行程を約1時間縮められるようなので、例えばリフト営業30分前にここに着いたとしたら、リフトの営業開始を待った方が結果的に早く登れることになりますね。
今日はまだ2時間半もあるのでとても待っていられませんが…(;・∀・)
「縮む1時間分」は結構な登り区間なので、体力的にもリフトに乗った方が余裕が出ることでしょう。
姥沢小屋の跡地の裏から登山道に入ります。
出だしは当然樹林帯ですが、10分も歩かないうちに前方が開けて…
ぱっと視界が広がりました。
おおおお ( ゚д゚ )
早い! もう森林限界を抜けたのか!
帰りに見たリフトの看板によると、月山の森林限界は1,300mとのこと。
さすが豪雪地帯・山形。これまでにない森林限界の低さです。
正確にはこれは偽の森林限界のようですが、本物であれ偽物であれ、こうして展望が開けるのは気分がいいもの。
歩き出しの頃は寒く感じた空気も、風が穏やかなため心地よく感じられるようになりました。
振り返れば、南側は遮るもののない眺めが広がっています。
空気は澄んでいるとは言えませんけど、昨日のガスガスに比べれば上々(^-^)
おっ、今日は楽しく歩けそうだな…と期待も高まります。
■黄金色に輝く草原
稜線を目指して、登山道をひたすら登っていきます。
傾斜はそこそこありますが、足下はずっと木道が敷かれているため、歩くのは楽に感じます。
昨日の鳥海山といい、山形の山は整備が行き届いていて初心者にも優しい印象でした。
ただ、傾斜が急ということは木道も斜めになるわけで…
個人的に登山のあらゆるシチュエーションの中でもっとも恐ろしいのは「濡れた木道」だと思っていまして、今日は乾いているから何の不安もないですけど、これが濡れていたら大苦戦しそうです。
天気が悪い時は、できるだけリフトで登った方がよさそうですね。
1時間ほど登ると、木道に朝日が差し込んできました。
周りを見回してみると…
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そこには、陽光に輝く黄金色の大草原が広がっていました。
登り始めた時間が早かったので、周囲に人影は全くありません。
(厳密に言うと単独のお兄さんがいましたが、追い抜かれてすぐに視界から消えました。早かった…)
こちら側は風裏なので風は吹いておらず、音と言えば遠くを流れる沢のせせらぎがわずかに聞こえてくるだけ。
静謐の中でふとたたずんでみれば、日に照らされる面積が徐々に広くなっていき、それに伴って草原から目覚めの…大自然の息吹のようなものが感じられる気がします。
そして今この空間を独り占めしているという贅沢。
今日の月山の行程は見所満点なのですが、この時こそ、登ってきて本当に良かったと強く思った瞬間だったのでした。
傾斜が緩い区間はこのように幸せな木道散歩になります。
昨日の鳥海山、そして今日の月山が本格的な東北の山としては初めての登山になるのですが、今までに登ってきたどんな山とも雰囲気が違っていて新鮮でした。
特にこの月山については、こんな山があるんだ…!という驚きがあり、何より登っていてとても楽しいです。
まだ登頂もしていないのにも関わらず、次に来るなら初夏がいいな… 緑の季節はここはどう見えるんだろう、なんてリピートの計画を考えていたりするほど。
こんなに早いうちから「また登りたい」と思ったのは初めてかもしれません。
リフト上駅からの道と合流すると、ほどなくして木道は終わり、石畳の道へ。
ここまで来れば稜線までは後一歩。しかし最後にちょっとした急傾斜が待ち構えていましたので、登る前に一息つくことにしました。
朝食をちゃんと食べていなかったので食糧補給。
山で食べるランチパックはなぜこんなにうまいのであろうか…
歩き出す前までの暇な時間に車内で食べてこいって? ごもっともです。
でも、どうせなら気分よく食べたいですよね。
エネルギーを充填して、最後の急坂をひと登り。
7:06、牛首に到着しました。
■山頂への登りは意外と険しく
ここまで来ると、稜線から北方向を眺めることができます。
庄内平野をはさんで遠方に見えるのが、昨日はガスガスだった鳥海山。
「うぉ〜! 晴れてるじゃねぇか!」と思わず叫びたくなるのをこらえます(^-^;
一昨日も晴れてましたし、ちょうど曇った日に登ってしまったことになりますね。
まあ、そういうこともあるさ…
さて、道はここから一気に厳しくなります。
牛首から山頂までは距離1km、標高差およそ250mですから、かなりの急勾配です。
登山道も岩だらけに。
整備はされているものの、一歩の段差が大きくなり、体力が奪われていきます。
ここが今日の登山の正念場。あせらずにゆっくり登っていきましょう。
それにしても、昨日の鳥海山もそうでしたが、最初は過剰とも思えるほどに整備された登山道で「普段靴でも大丈夫だよ〜♪ ハイキング道だよ〜♪」なんて雰囲気なのに
途中から急に険しくなって「岩だらけだって? 当たり前だ、山をなめるな!」みたいな道になるのは山形のお約束か何かなんでしょうか(笑)
牛首から山頂まではコースタイム1時間なので勢いでも行けそうですが、できればそれなりの靴を用意した方が安心だと思います。
急登を息を切らせながら登ること40分ほど。
ようやく、月山山頂に到着しました(7:45)
■広大な山頂、広大な展望
月山の山頂は、ご覧の通りだだっ広い空間になっています。
(一番高いのは正面に見える「月山神社本宮」なので正確にはあそこが山頂ですが、この一帯が山頂と呼ばれているようです)
広すぎるのでここだと展望は却ってよくなく、登ってきた西側を除けば周囲は空しか見えません。
辺りを見渡したければ、それぞれの側の斜面まで歩いていった方がよさそうです。
というわけでまずは月山頂上小屋まで進み、そこから東側の登山道を少し降りてみました。
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東側の肘折ルートからの展望はご覧の通り。
今日は空気が霞んでいるので雰囲気だけですが、この光景をバックに登り、正面に見据えながら降りるというのはいかにも楽しそうです。
続いて、月山神社の東側を巻いて、すぐ先にある三角点へ。
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三角点からは北方面の大パノラマが広がります。
いや〜、いい眺めじゃないですか!
画像だと東側が切れていますが、実際には真南を除きほとんどの方角が一望でき、まさに文字通りの大パノラマです。
独立峰ならではの素晴らしい展望でした。
ここが一番見晴らしがよさそうなので、ぜひ寄ってみるのをお勧めします。
山頂から北へ尾根伝いに延びているのは弥陀ヶ原コース。
今回の姥沢コースに比べると少々時間は長くなるものの、道中の弥陀ヶ原の眺めがとても美しいコースのようです。
夏には弥陀ヶ原からも登ってみたいな… なんて考えながら、しばしこの展望を堪能したのでした。
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三角点から神社に戻って参拝した後、頂上小屋前でふと右手を見ると、西側にちょっとした展望スペースがありました。
恐らく宿泊者用に設けられたのではと思われるこの場所、宿に泊っていれば日本海に沈む夕日を眺めることができます。
自分のように海なし県に住んでいる者にとっては、山から日本海に沈む夕日を見るのは憧れですらあります。
これまで、それができる山ですぐに思いつくのは薬師岳しかなく、薬師は遠い(&大変)なので実行に移す気はありませんでしたが、ここなら一考の価値ありかもしれませんね。
■紅葉のなか、爽快な稜線を行く
さて、しばらくのんびりしていきたいところではありますが、帰りの高速渋滞が始まる前に帰らなければなりません。
そろそろ下山しましょうか。
その下山、いつもなら淡々と往路を戻るところですけど、今日はまだ楽しみを残しています。
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冒頭にも書いた通り、帰路は正面の稜線を伝って姥ヶ岳に向かいます。
いかにも爽快そうなあの稜線――― 山好きなら歩いてみたいと思わないはずもなく、登りの時からあそこを歩くのが楽しみだったのでした。
紅葉が陽光で鮮やかに輝く中、まずは牛首まで降りていきます。
牛首でリフト方面へのショートカット道を見送り、姥ヶ岳へ。
リフトの運行が始まったため、登ってくる人が増えてきました。
クリックで拡大(1024*680)
登山道の左手(南側)はご覧の通りの見晴らし。気分爽快です(^-^)
朝歩いてきた木道が、草原の中に延びています。
昨日の鳥海山で、このような分岐を見るたびに"向こうの道も歩いてみたいな…"と思っていた記憶がよみがえりました。
リフトを使わない登りは、考え方によっては1時間と労力の無駄。
でも、次に訪れるのがいつになるか分からないこの山だからこそ、心残りは少なくしたいものです。
その意味で、あえて自分の脚で登ってみて正解でした。
朝のあの神秘的ともいえるような目覚めの瞬間にも居合わせることができましたしね。
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稜線の後半、湯殿山への分岐付近には少しアップダウンがあります。
こちらからだと下りがメインなので大したことはありませんが…
登りだとそれなりに疲れそうです。
リフト上駅から月山へのルートは、牛首までショートカットするか、姥ヶ岳まで登ってこの稜線を辿るかの二択ですが、姥ヶ岳ルートはなにげに登りがきついです。
実際には高低差はそれほどでもないですけど、視覚的には厳しく見えるため、初心者さんには辛いかも…
もし帰りまで天気がもちそうなら、行きはショートカットして、帰りにこちらを通った方がいいかもしれません。
そこさえ抜ければ、後はもうパラダイス。
清々しい風が吹き抜ける稜線を辿り、
天に続くかとも思える木道を歩けば…
はい、姥ヶ岳に到着しました。(9:39)
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この姥ヶ岳も素晴らしいビューポイントでした。
標高が1670mしかないなんて信じられないほど、見事に周囲の視界が開けています。
例えば南方面を見てみれば…
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この開放感はまさに圧巻!
もちろん西側、北側の眺めもバッチリです。
リフト駅から30分の登りでこんな展望を楽しめるのは、栃木県民としては羨ましい限り。
月山まで登るのはきついな…と思う方でも、リフトからここまでは登ってみるのをお勧めします。
これでもう残るはリフト上駅までの下りだけ。
去りがたい思いを感じつつ、ゆっくりと降りて…
リフトで駐車場に戻ったのでした。
こうして大満足で終わった今回の登山。
本格的な東北の山は鳥海山に続いて二山目ですけど、関東・甲信越の山と比べてこうも違うのか…と、新鮮な気分で一杯でした。
特に始めから終わりまで続く素晴らしい開放感は、ちょっと他に類を見ないほど。
コースバリエーションも豊富で、それぞれのコースに見所があるのもGoodです。
今回の姥ヶ岳コースは魅力の一端を垣間見たくらいで、まだまだ楽しさを秘めていそうなこの月山。
こんな山が地元にあったら毎月通うだろうな…と、山形県民を羨ましく思うほど、魅力に溢れた山でした。
山形を訪問する機会があったらぜひ登ってみることをお勧めします。
初心者から上級者まで、実力に見合ったコースで楽しい山歩きができると思いますよ(^-^)
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