Snow Trekking
那須岳(茶臼岳)
【日本百名山】 【栃木百名山】
2010/03/27
栃木県那須郡那須町 [1915m (茶臼岳)]所要時間:4時間2分
一人で山にいることを、初めて怖いと思った日GPSログ記録はこちら(別窓)

中ノ大倉尾根から朝日岳を望む

■Introduction

前回、峰の茶屋までのアイゼン散歩で、すっかり那須岳にハマってしまった管理人。
しかし、前回はあくまで途中までの行程、ピークハントではありませんでしたから
次は是非とも山頂を踏みたい、と、連日天気図を眺めて過ごしてきました。

すると、遂に快晴の土曜日がやってきたではありませんか!
山の天気は変わりやすいので油断はできませんけど、大荒れになる可能性は低そうです。
天気のいい早朝に登り始めれば何とか行けそうかな、ということで
今日はマウントジーンズから三本槍岳を目指すことにしました。



■あれ、トレースは…?

…って、イントロダクションとページタイトルが合ってませんが、これは間違いではありません。
結果から言うと、この日は三本槍岳を目指したものの敗退して、茶臼岳に登ることになりました。
しかも、この茶臼岳についても、峠の茶屋周りのちゃんとした登山ではなく、
ロープウェイを利用したサボりモード全開の登山です。

ですので、冬の三本槍岳登山や、茶臼岳登山を真剣に考えている方には、
このページの情報は全く役に立たないでしょう…
というより、参考にしないで下さい。冗談抜きに命を落とす可能性がありますよ。

-----

さて、それではレポートに入ります。
上でも書いた通りこの日の天気は上々。栃木県道305号から眺めた那須岳もご覧の通り。

残雪の那須岳

ん〜! 雲一つない絶好のコンディションですね!
この状態のうちに降りてこられるかどうかが勝負です。

マウントジーンズスキー場駐車場着が8:10。

さすがにスキー客も少なくなりつつあり

地元民ですら「休日は来たくない」とこぼすほど人気のあるこのスキー場も、
シーズン終了間際の今はずいぶん空いていました。
個人的には、むしろ、那須でこの時期にまだスキーができること自体が驚きだったりしますけど。
もうそれなりに暖かいですからね。(ちなみにこの時点での気温は0℃)

ここからは昨年秋(2009/10/04)の登山の時と同様に、まずゴンドラで山頂駅まで上がり
そこから中ノ大倉尾根を通って三本槍岳を目指すことになります。
で、山頂駅に着いて、夏道の通りに歩いていこうと思っていたのですが…

トレースは…?



あれ…? トレースがないですね…
えっ、まさか一番乗り!?

雪山で他人のトレースを当てにするのが危険なのは重々承知していますが、
人気の山ですし、出発も遅かったですからてっきり誰か先人がいるものだとばかり思っていました。
もちろん、ここは秋に一度通ったことのある道ですし、地図とコンパスもありますから、
そう簡単には道迷いしないでしょうけど、やっぱりちょっと不安になってきます。

ちょうど同じ頃、山頂駅に降り立った登山者の方がいるんですけど、その方は山スキーなので
たぶん途中で滑走して降りてしまうんでしょうし、三本槍岳まで自分一人で大丈夫なのだろうか…

-----

そんな不安を抱えながら、とりあえず中ノ大倉尾根を目指します。(山頂駅発 8:52)
ツボ足でも足首までしか潜らない程度の積雪で、ラッセルしなくても良かったのが唯一の救い。
今日はスノーシューを持ってきてないので、これで膝まで埋まるようならいきなり敗退でした。

結局、何度も怪しく蛇行しながら、何とか中ノ大倉尾根に出ました。

中ノ大倉尾根

夏道を知っていても間違うもんですね(汗) 雰囲気が全然違うし…



■もはやどこが夏道なのかさっぱり

さて、このルートの核心部はこの中ノ大倉尾根です。
何が問題って、やたら平べったいこと。こうしてピーカンの中で登る分には全く問題ないですけど
問題は下りる時で、これで吹雪かれたらどちらに下りているのか確信が持てなくなりそうです。

ある程度登って振り返ってみると…

雪の平原

こんな感じで、近場に目標物が全くないんですよね。
もちろんコンパスは見ていますが、それだって必ずしも同じところに降りられるほどの精度で
歩けるわけじゃありませんし、とにかく僕の技量では、この天気が少しでも変わりそうなら
一目散に撤退しないと危険な場所だと思います。

…と言いつつ、実はこの時は「自分のトレースを辿れば帰れるだろう」なんて考えてもいました。
数十分後にはいかにそれが甘い考えだったか思い知ることになるんですけど…

左手にある茶臼岳を見てみると、徐々にガスが出てきています。

尾根の向こうからガスが来た!

あれがこっちの尾根に流れてくる前に下りていたいですね。

-----

途中から傾斜が増してきて、転けるようになったので、アイゼンを装着しました。

滑ったらどこまでも…

この辺はもう雪はカチカチで、僕のヘタレなキックステップなどはまるで通用しません。
もし滑ったら下まで落ちていきそうです。ピッケルもないから止まれませんし…

実際に装着してみるとアイゼンの効果は素晴らしく、安心感がまるで違います。
おかげで難なく登っていくことができました。
(と言っても、一歩一歩踏み込んでいくから夏道とは疲労度が段違いですけどね)
10:23、赤面山への分岐に到着。

赤面山分岐



■山頂はすぐそこ。でも…

赤面山分岐を過ぎた先にある小ピークを越えてしまえば、
そこから三本槍岳までは大した距離もなく、ほぼ平坦な雪原歩きになります。

赤面山分岐

そしてその小ピークはもうすぐ目の前。
つまり、あと少しでこの登山の核心部は終わりということです。

ただ…
ここから先では、斜面をトラバースしないと行けない場所があります。
斜面と言っても緩斜面ですから技術的には難しくも何ともないでしょうけど、
もし万が一滑ったらと思うと、やはり多少不安です。
それと、茶臼岳の向こうから湧き出たガスが徐々にこちらの尾根に迫っていまして
このままだと、帰路ではガスに巻かれてしまうかも知れません。

さきほども頭上を県警?のヘリが通り過ぎていきましたが、ここでもし遭難でもしようものなら
関係各位に迷惑をかけることになってしまいます。技術・準備が万端で望んだのに遭難したのなら
まだ分かりますけど、技術は全然ないに等しいですし…

と言うことで、悩みに悩みましたが、今日はここで引き返すことにしました。

樹氷の中で食事

誰も来ないので、登山道の真ん中で休憩タイム。
気温は-5℃、那須岳にしては風も強くないため、実に快適な昼休憩が取れました。
やっぱり雪山は気持ちがいいですね(^−^)

山頂まで行けなかったので、今回はここでパノラマ撮影しましょう。

赤面山分岐周辺パノラマ
クリックで拡大(3793*600 809KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

麓方面を向いたパノラマです。何だかよく分からない画になっていますが、雰囲気だけでも。



■トレースが…消えた…

それでは撤退(敗退)に入りましょう。
下りは文字通り下りていくだけなので体力的には楽です。
ただ、最初のうちは斜度がキツイので転ばないように神経を使いました。

そうそう、余談ですけど、そんな帰路の途中で、スノーシューの男性とすれ違うことに。
(書いていませんでしたが、山スキーの方はとっくに滑走して、いなくなっています)
北温泉から三本槍→朝日→茶臼と周回して北温泉に戻るそうで、いやはや、素晴らしい体力です。
夏道でもこれは結構な距離なんですけどね。冬にこれをやるのは今の自分には到底無理。

それと、更に余談ですが、行きの途中で、自分のトレースを辿れば…なんて書いていましたけど
実際に自分のトレースがどうなっていたかというと…

トレースは…どこ?

さきほどここを通過してからまだ1時間しか経っていないというのに、トレースはもうほとんど
消えかかっています。足首まで埋まるくらいのトレースだったのに…
1時間でこれでは、何時間も経った後に、しかも視界が利かない中で、自分のトレースを頼りに
歩くなんて事は全くの夢物語ですね。こうやって身をもって知れて良かったです。

-----

…と、そんなこんなで、山頂駅まで戻って来ました(11:48)。
これで今日の行程は終わり、というところですが…
当然ながら、何とも歩き足りない気分になりました。

こちらの尾根から見ていた限り、茶臼岳は時折ガスに包まれてはいたものの
それなりに日も差していて、比較的穏やかな天気のようでした。
そこで、今日はこれから更に茶臼岳に登ってみることにしましょう。

と言っても、もちろん今から徒歩で山頂を目指すのは時間的に無理です。ですので今回は
ロープウェイに頼ることにしました。ロープウェイ駅からなら山頂まで1時間弱。
今からでも余裕があります。
それに、ロープウェイが新造されてからまだ一度も乗ったことがなく、いつか乗りたいと
思っていたんですよね。ちょうどいい機会ですし、今から行ってみましょう!



■引き返す勇気なら持ってます。十分すぎるほどに

マウントジーンズから209号とボルケーノハイウェイを乗り継いで
ロープウェイ乗り場に向かいます。
ボルケーノハイウェイの無料化で、この辺りも気楽にドライブできるようになりましたね。

茶臼岳のロープウェイ山麓駅着12:39。

ロープウェイ山麓駅・駐車場

だいぶ風が強くなってきているようですが、ロープウェイは運行しているし、まだ大丈夫かな?
とりあえず往復券(\1,100)を購入して、待合室で待機していました。

すると、「今日は風が強いので、これ以上強くなったら運行中止になるかもしれません。
山頂を目指す登山者の方は、途中で引き返す勇気を持って下さい」といったようなアナウンスが
流れてきました。
まあそうだよね、運行中止になったら峰の茶屋経由で下りてこなくちゃいけないし、
そんなに風が強いんだったらそのルートも危ないからね…と思って、ふと周囲を見渡してみると
周りはみんな観光客の方で、いかにも登山します!って出で立ちなのは僕だけです。



ってか僕が言われてるのね(^−^;

これは何という羞恥プレイ(笑) なんか注目も浴びてるし…
乗車する時にも改札のおねえさんから同じ忠告を受けましたけど、
「今、三本槍から引き返してきたばっかりなんで、引き返す勇気は人一倍持ってますよ」
なんて言いながら乗り込みました。

-----

ロープウェイ山頂駅着13:00。

ロープウェイ山頂駅

今回の便で上まで登るのは僕だけ。一緒にロープウェイに乗っていた何組かの家族連れは、
駅周辺で展望を楽しんだり、ここから柵沿いに300mくらいの区間(危険箇所なし)を
ちょっと登ってみて、プチ雪山気分を満喫したりしているようです。
天気が微妙なので絶景とは言えないんですが、それでもどの家族もそれなりに
面白そうな顔をしているのが良かったです。

牛ヶ首、南月山への分岐

牛ヶ首までの分岐を過ぎると、いよいよガレ場の歩きにくい登りが始まります。

ちなみに僕はアイゼンを付けてきましたが、この時期にアイゼンが要るかどうかは微妙…
ガレ場は↓こんなように、雪に埋まっているわけではないので、却って歩きにくいです。

ロープウェイ山頂駅を見下ろして

でも、山頂付近では少し嫌らしい雪道もありましたし、それにもし万一ロープウェイが止まって
峰の茶屋経由で下りなくてはならなくなったら、アイゼンなしでは進退窮まるでしょうしね。
アイゼンの刃が早速すり減るのは仕方ないか…

ともあれ、ロープウェイ山頂駅から山頂まではたった231mの登り。運動量的には楽勝です。
ということで、13:44、無事、茶臼岳山頂に辿り着きました。

茶臼岳山頂

とりあえず雪山ピークハントは達成しました。すごくインチキ臭いですけど(笑)

で、この山頂なんですが、下から見て予想していた通り、風の強さが半端ないです。
これぞ那須岳!と言った勢い。
山頂で【動画】(WMV9/2.28MB)を撮ってみましたけど、画面が揺れているのは
直立したまま静止することができないためで、画面右上から左下方向にたまに飛んでくる白い塊は
氷の粒です。西側斜面の氷が強風に煽られて、アンダースローのような弾道で顔に向かってきます。
これが当たると痛いのなんの(^−^;
しかも、気温はここも-5℃なのに、この強風のせいでやたらに寒く感じます。
とてもじゃないですがここで長居は無用、と、早々に山頂を後にしました。

ああ、そうそう、この時間の三本槍方面はこんな感じ。

隣の尾根は雲の下

撤退して正解でしょう… あの中を歩くのはあまり楽しそうじゃないですしね。

-----

では、すぐさま下山を開始します。
下りは特に書くこともなく… 山頂駅の方から「風が強くなったら運休〜」というアナウンスが
ひっきりなしに流れてくるのでちょっと焦りましたけど、なんとか運転している間に
山頂駅に戻ることができました(14:15)。

山頂駅に帰還

これで、今日の登山は完了です。



今、こうして振り返ってみると、頑張れば三本槍岳まで行けたんじゃないの?とも思います。
でも、何人もの犠牲者を出している山ではありますから、やはり自分が不安を覚えるようなら
無理はしない方がいいでしょう。

次に来る時は、せめて講習会でも受けてから、ちゃんとピッケルも持って挑んでみようと思います。
それと今回、GPSが必要だなと改めて思いました。GPSを妄信するわけではないけれど
視界の利かない雪の平原を歩く時には、やはりこれがあるのとないのとではだいぶ違うんですよね。

EXIT