Snow Trekking
北穂高岳2013/05/03-05
長野県松本市/岐阜県高山市 [3106m]所要時間:16時間53分
消費カロリー:計測せず
もはや口を開く余裕もなしGPSログ記録はこちら(別窓)


1日目 5/3(金) 【 上高地 → 涸沢 】
2日目 5/4(土) 【 涸沢 → 北穂高岳 → 涸沢 → 横尾 】
3日目 5/5(日) 【 横尾 → 上高地 】


2日目 5/4(土) 【 涸沢 → 北穂高岳 → 涸沢 → 横尾 】

2日目の朝も天気に恵まれました。

翌日も好天

正直に言うと、実際にルートを見てすっかりびびってしまった自分としては、
今日天気が悪ければ「天気が悪いから登れないよね、不可抗力だからしょうがないね〜」なんて
登らない口実ができるなぁ、と、お前何しに来たんだよ的なことを考えていたりもしたのですが、
そんなことは許さん!とばかりに、絶好の登山日和になってしまいました(^-^;

奥穂を目指す人々

周りの登山者も続々と出発していきます。
これは奥穂や涸沢岳を目指す人々。

いざ北穂へ

北穂沢にも登山者の列ができてきました。

早朝なので雪は締まっており、天気も上々。
これで登らなかったらいつ登るのか、という状況ですね。

…仕方ない、覚悟を決めるか…

上の方は見るからにヤバイですが、中間地点までなら何とかなりそう。
装備を調え、行けるところまで行ってみることにしましょう。
5:43、テント場を出発。

徐々に傾斜は厳しく

…しかし、登り初めてすぐに、やっちまった感に襲われました。

この時間、雪が固いので、トレース以外の場所は歩きにくいんです。
トレースは一本しかなくすれ違いはできないため、途中で引き返すのは今は無理。
雪が少し緩む時間帯までは登り続けるしかない状態に追い込まれました (||゚Д゚)

更に、途中に平坦な場所が全くないんですよね…
高所恐怖症なのでこの程度の傾斜でも既に怖く、どこかで一息つきたいところなのですが
登っても登っても斜面なので、恐怖感はむしろ増すばかりです。

テント村を見下ろして
クリックで拡大(1072*712)

急登で息が切れるので、ゴルジュ上部の少し傾斜が緩むところで小休止。
斜面なのでザックの置き方などに気をつけねばならず、ヒヤヒヤしながらの休憩なので
肉体的にはともかく、精神的には全く休まりません(;・∀・)

テント村は既に豆粒のようになっていました。



■いよいよ核心部へ

ゴルジュを越えると、傾斜はいよいよ厳しくなってきました。
また、雪質もアイスバーンになっていたり、粉雪でアイゼンが全然効かなかったりと
バリエーションが増えてきて、余計に緊張を煽ります。

核心部へ

そして上方に見えてきたのが、本日最大の難関であるインゼル。
(正面右手に∧∧型に岩が見えているところ)
インゼルを左に巻いていくわけですが、そこの傾斜がコース場で一番厳しく、50°前後になっています。

落ちたら…

そのインゼルへ。
もうこの辺りだと精神的には限界に近く、自分のノミの心臓は崩壊寸前。
降りてくる人とのすれ違いも発生しはじめ、恐怖に拍車がかかります。

それと、何より嫌なのが、登山ルートとフォールラインが一緒なこと。
一人で落ちていくのならまだいいのですが、今落ちると後続を巻き込むことになります((;゚Д゚))
ここでは絶対に落ちてはいけない… これ以上ないくらい慎重に歩を進めていきました。

いよいよ山頂へ

こうしてどうにかインゼルを越え、松濤のコルに到着。

ここまで来ればもう山頂は目の前ですが、この山頂への登りも恐れていたポイントでして…
例年ここはアイスバーンになっているそうで、右はともかく左側に落ちると死ぬので
怖くて登れないようなら最悪ここでリタイアか、と覚悟していたところです。

しかしラッキーなことに今日はカチカチに固まってはおらず、アイゼンがよく効きました。

北穂高岳・山頂

そしてついに…
北穂高岳・山頂に到着しました。
時刻は8:24、テント場から2時間40分の道のり。
こんなに消耗した2時間40分がかってあっただろうか、と思うほど精神力が削れています(^-^;

そしてその山頂もやはり怖く、登頂の喜びをかき消すほどでしたので
写真を撮って速攻で撤退することにしました。

北穂高岳から
クリックで拡大(5361*600 942KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

その恐怖の山頂からのパノラマ。常念→穂高→槍です。
槍方面はガスがかかってしまっていますが、撮影当時はそれに気づく余裕もありませんでした。
とにかく写真を撮っておかなくては!と必死で撮影(笑)



■人生最大の恐怖

こうして、なんとか登頂は成し遂げました。
しかし本当の問題はこの後… そう、下りなのです。

登りは怖くても下さえ見なければ何とか行けるわけです。
ところが下りは下を見ないわけにはいきませんから、当然、その恐怖は登りの比ではありません。
どうにか松濤のコルまで戻り、下を見てみると…

目もくらむ

ヒィ――((((;゚Д゚)))――!!!

道が見えません。前には何人も下山者がいるはずなのに、二名しか見えません。
いやいや、傾斜何度なんだよこれ…

この時ほど登ってきてしまったことを後悔したことはないです。とても降りられる気がしません。
猫が木に登って降りられなくなる話がありますが、あれと同じですね。
しかし自分は猫じゃないので誰かが助けてくれるはずもなく、自力で降りなければ…

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この後、テント場にたどり着くまでに要した時間は、実に2時間20分。
最後シリセードで降りたにもかかわらず、登りとほとんど変わらない時間がかかっているところに
いかに苦戦したかが見て取れるかと思います。
(あまりに怖かったがために、写真は一枚も撮れませんでした)
2時間20分の道のりの間には、いろんなことがありました。

■余裕そうですね

下山し始めた直後のこと。
自分の前には若いお兄さんが「こえ〜なこれ!」とか叫びながら降りていました。
そこに下から若いお姉さんが登ってきてお兄さんと一言二言話した後、無言で降りている自分を見て
「余裕そうですね〜!」と言ってくれました。
…しかし違うのです。声が出せる人はまだ余裕があるのです…

■ラ〜ク?

上部はモナカ雪のようになっていまして、踏み抜いた時に上層のアイスバーンの部分が割れて
下に流れていくことがあります。
流れていった雪の塊は他の登山者を直撃することがあり、当たるとけっこう痛いらしいので
落とした人は「ラーク!」と叫ぶのですが、もともとこのルートは南稜からの落石があるところなので
ラーク!の声を聞くとみんな、すわ落石かと驚くことになります。
それが雪だと「なんだよ…」という感じになり、そのくらいでラークって言うなよ、とか
苦情も出ていました。
確かに難しいですね。トレースのないところを歩く時は気をつけましょう。

■滑落事故

下山途中、ゴルジュの下方で長野県警のヘリが旋回しているのが見えました。
この時、自分はまだ上の方にいたので詳しいことは分かりませんでしたが、後日調べてみると
休憩しようとして誤って滑落→他の3名を巻き込み、計4名が滑落したということのようです。
不幸中の幸いでこの4名の方々は命に別状はないそうでしたが、
やはり気が抜けないルートだと改めて思いました。
2014年のGWにはここで滑落死亡事故も発生しています。登る際はくれぐれもご注意を。
また、ヘルメットを忘れずに。

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涸沢小屋にたどり着いてソフトクリームをいただき、ようやく人心地つくことができました。

生還

10:51、テント場に生還。
いや〜… 今回は本当に怖かった。これまで登ったどんな山も比較にならないほど怖かったです。
口から魂が半分抜けていました(;・∀・)
落ちなくて本当に良かった…



■横尾へ

これで今回の目標は達成、あとは上高地に戻るだけになりました。

ただ、これまでの経験から言って、涸沢→北穂→涸沢の行程をこなした後に上高地に戻り
そのまま自宅まで運転するのは厳しいことが分かっていたため、
今日は上高地までは行かず、横尾でもう一泊していくことにしています。

北穂も視界不良

テントを撤収しつつふと北穂を見上げると、天気はだいぶ悪くなってきていました。
この後ついに雪が降り始め、やがて雨になったようです。
朝、晴れているうちに登れてラッキーでした。

列をなしてゆく

荷物をまとめて、12:38、涸沢を後にします。

登山道は今日も登ってくる人々で渋滞。
でも今日は降りるだけなので、脇によけて多少ズボっても問題なしでした。

新たなデブリが

道中には、昨日はなかった新たなデブリがいくつか。
見づらいですが、画面中央やや右にあるデブリはかなり大きく、ぶつかったら即死間違いなしです。
油断禁物ですね。

横尾

横尾着、15:08。
ふぅ、さすがに今日は疲れました。さっそく受付をしてテントを設営しましょう。

横尾・テント場

ここでは当然冬張りは使えませんけど、レインフライも持っているため問題なし。
いきあたりばったりに行動しているわけではないのです(キリッ
…と言いつつ、通常のペグは忘れてきたわけですが…

長い一日もこれで終わり。改めて無事で良かったです。
では、おやすみなさい。

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