Trekking
大倉山   【栃木百名山】2012/06/30
栃木県那須塩原市/福島県南会津郡下郷町 [1885m]所要時間:10時間31分
消費カロリー:計測せず
晴れていれば栃木屈指の稜線歩きGPSログ記録はこちら(別窓)

大倉山へ続く稜線

■Introduction

どうしても山から足が遠のきがちな梅雨時。
しかし、来るべき夏山シーズンに向けて、そろそろアクセルを踏み込んでいかねばなりません。

今回、夏山の前哨戦として選んだのは、那須の奥地・福島との県境にある大倉山。
那須岳のすぐ隣にありながら、知名度が低く訪問者の少ない山です。

福島県側の大峠からアクセスすれば距離は短くなりますが
今回はトレーニングなので、あえて那須側から挑んでみます。
コースタイムは11時間オーバー。果たして無事に歩き通せるのでしょうか…?



■澄み渡る空 過去最高のコンディションかも

さて、今回は行程が長いのでサクッと書いていきますよ!

峠の茶屋駐車場

歩き出しはここ、峠の茶屋駐車場。
時刻は4時を少し回ったところですが、早くも出発したと思われる方々の車がチラホラ。

今日のコースは、ここから三本槍岳を経由して大峠に降り、稜線に登り返して大倉山まで。
帰路は、大峠まで戻ってから三斗小屋を経由し、ここに戻る計画です。
長丁場なので水を多めに持って、4:38、駐車場を出発。

眼下は雲海

峰の茶屋跡避難小屋へと向かう道すがら、ふと振り返ってみると眼下には雲海が広がっています。
この山は朝早く来ると雲海が見えることが多いですね。初めてだとちょっと感動するかも。

怖くない鎖場

避難小屋を5:17に通過して朝日岳方面へ。今日は時間も体力もないので茶臼岳はパスしました。

写真はなぜか(危)マークがついている鎖場です。確かにこのアングルで見ると怖いかも?
実際は、晴れた日に山慣れした人が歩く分には、特に難しくはないところだと思います。
もちろん、風が強くなければですが。

朝日岳へ

朝日岳の肩、5:38。天気は恐ろしいほどの快晴になってきました。
本当は朝日岳もスルーの予定でしたけど、朝日岳からまるで「お〜い!登ってこいよ!」と
呼びかけられているかのようなこの光景を見て、スルーできる山屋がいるでしょうか?
いるわけがないですよね! ということで…

朝日岳・山頂

5:54、本日の一座目、朝日岳に登頂。

なお、ここからの山座同定は少し自信がないんですけど、おそらく画面中央奥のピークが
今日の目的地である大倉山だと思います。こうして見るとはるか彼方に見えますね。

山をやっていると感覚が麻痺しているのか、現地にいる時は何とも思いませんが
後日こうして見ると、よくまああんなところまで歩いていこうという気になるよな、と思ったり。

朝日岳からの展望
クリックで拡大(4802*600 650KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

そんな朝日岳から、東方面のパノラマを一つ。
茶臼岳がくっきりですね。とても梅雨時とは思えないほど視界がクリアで嬉しいです。
なぜか肝心の大倉山方面を撮っていませんでしたが、それは三本槍から撮りましたので後ほど。



■まるで雲上を歩むが如く

では、続きまして三本槍へ。

清水平へ

正面に広がるのは那須野ヶ原の大雲海。
時間が時間だけにここにいるのは自分だけで、快晴無風の天気も相まって
まるで地球ではなくどこか別の星に来たかのような、凄まじい非日常感に襲われます。

清水平までは下るだけで楽ですし、快適な空気に包まれ、目の前は大展望。
この行程は、今日の山行で一番楽しかったかも。やっぱり夏山は早朝に限りますね(^-^)

三本槍岳・山頂

というわけで、特に苦もなくルンルン気分で歩くこと約50分、三本槍岳に到着です(7:00)

自分はなぜか三本槍岳と相性が良くなく、子供の頃から何度来ても常にガスっていたのですが
今日は完璧! さっそく西方面のパノラマを撮ってみましょう。

三本槍岳からの展望
クリックで拡大(5845*600 956KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

ここからは、画像右端に見える道を辿り、甲子温泉に向かう道を右に分けて
尾根伝いに左方向に下って大峠に降りたあと、画像中央に見える尾根に登り返し
目的の大倉山まで進むことになります。

この先は未知のルート。少々の不安と大きな期待を抱いて、いざ出発!



■栃木屈指の稜線漫歩

道標1

ということで、まずは甲子方面へ。

道標2

少し下った後、分岐を西方向、大峠・三斗小屋温泉方面に進みます。

ちなみに北の「甲子山」方面もいつか行ってみたい道ではあるのですが
そちらはこちらのようなハイキング道とは違って、ベテラン向きの登山道で
時期によっては道が分かりづらいらしいので、おいそれとは足を踏み入れられなかったりします。
もう少し読図が上手くなってからかな…

栃木とは思えない

さて、大峠への尾根道はご覧の通り。
三本槍岳から見た時に予想した通り、すばらしく開放感に溢れた道になっています。

栃木のほとんどの登山道は森林限界を越えないため、こうして左右の視界が開けている道は
めったになく、ここは本当に栃木なのか?と思うほど。
森林限界の低い那須岳ならではの光景ですね。稜線歩きはこうでなくては!

大峠へ

通る人はあまり多くなさそうなこの道ですが、整備はキチンとされていて足下には不安なし。
ただ、早朝だとクモの巣をなぎ払いながら歩くことになるのと
人が少ないせいか蜂と頻繁に遭遇しましたので、刺されないように注意が必要でした。

大峠

こうして三本槍岳から下りに下ること400m、約1時間で大峠に到着です(8:12)



■やばい! ガス来襲!

大峠は福島県側からだと比較的楽にアクセスできるため、ここで急に人が多くなりました。
山を独り占めしていた感はなくなってしまいましたが、まあそれはいいとしましょう。
それよりも気になることが一つ。どうも先ほどに比べて、ずいぶん雲が出てきたようです。
振り返ると…

三本槍岳にも雲が

1時間前は快晴だった三本槍岳もこの有様。

急登を行く

今日のメインはこの先なので、ここでガスってしまうとブルーになります。
ですから即座に稜線への登りに取り付いたのですが、この登り返しは300mの急登で
ここまで歩いてきた身にはそう簡単に登れるものではありません。
それでも景色は見たかったので、息も絶え絶えになりつつ急ぎました。が…

稜線はガス

なんというお約束であろうか\(^o^)/
あああ、今日のハイライトが…

歩き出しが遅かったですかね、せめて3時には駐車場を出るべきでした。反省。

大倉山へ

それでもともかく、予定通り大倉山までは歩を進めましょう。

道はご覧の通り、標高1800mの尾根とは思えないほど視界が開けていて、栃木側は完全に見通せます。

雲の合間から

福島側は若干木々がありますが、それでもこの程度。見渡すのに障害にはなりません。
ですので晴れていれば、ここは北アルプスか!?と言いたくなるほどのアルペン的な雰囲気が
味わえるのでは、と思います。
おそらく、ここまで見事に開けた稜線というのは、栃木には他にないのではないかと。

那須岳からだと遠いですし、木々がないのでもしここで雷に遭遇すれば逃げ場がなく
人も少ないので遭難=死に繋がりやすいなど、おいそれとお勧めできるところではありませんが
栃木のメジャーな山には行き尽くしてしまって、マンネリ化してきたなぁ…と思う方は
候補の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。
他の山域の山とは違う、独特の雰囲気が味わえると思いますよ。

※同じ日に(自分より少し早く)この稜線を歩いた方の動画を見つけたのでリンクしておきます。

大倉山・山頂

いくつかの緩やかなアップダウンを繰り返して、大倉山に着いたのは9:57。
駐車場を出てからおよそ5時間20分の道のりでした。
分かってはいましたが、やっぱり長かったですね。



■三斗小屋は遙か遠く

大倉山のピーク周辺は、この稜線で唯一展望がないところです。
なので長居する雰囲気でもなく、またこの頃になると日差しが強くて暑くなってきたので
昼食を採ったらすぐに引き返すことにしました。

帰路もガスの中

帰路は晴れてくれないかなぁ… と期待するも、やはりこの状況です。
それでも稀に雲が流れて、那須方面は少し見えるようになってきまして
次の目的地である三斗小屋温泉も視界に入ってきました。

彼方に三斗小屋温泉が

分かりますか? ちょうど真ん中の白い点が三斗小屋温泉です。
行きは元気でしたから大倉山が遠くに見えても何とも思いませんでしたが
今はさすがに疲れてきたので、この距離は恐ろしく遠く感じます(;・∀・)
どうみても谷を一つ、尾根を一つ越えないといけないですよね。あそこまで行くのか…

三斗小屋温泉へ

しかも、大峠→三斗小屋温泉の登山道は、これまでの道と比べるとかなりワイルド。
思いっきり林の中で木々は邪魔だし足下も良くなく、アップダウンも激しいです。
すれ違う方々はみんなそれなりに元気なのですが、自分はもうヘロヘロ…

徒渉

更に三度ほど徒渉もあります。水中に足を置かなければならない場面もあり
登山靴なので気にせずに水に突っ込んだら、なんと靴のサイドから浸水(汗)
今の登山靴(コズミック 4D GTX)はそろそろ寿命のようです。
まあ、これ一足で舗装路歩きから北アルプスの岩稜歩きまで酷使していましたから
壊れるのも無理はないのかも。

※なお、この徒渉は、雨量によっては通行不能になるようです。
 雨が降り続いた後などは要注意ですね。

三斗小屋温泉

とまあ、そんなこんなで疲れ果てましたので、三斗小屋温泉に着いた時は
本当にホッとしたものです。ここから先の登山道は整備されていますし
アップダウンも少ないので(子供の頃にしょっちゅう連れてこられたくらいの道ですから)
もう惰性で歩いていけます。これでもう終わったも同然だぜ!

稜線が遠い

と思ってたら、最後にきたよこの登り!
これを見た時は思わず笑っちゃいました。もうあそこまで登れる体力ないって!

とはいえこれも自分で選んだ道。…というより登らなければ那須の土に還ってしまうので
亀のような歩みで一歩一歩登っていきます。そして何気なく振り返ったら…

振り返れば大倉山は晴れて

そこにはガスが取れて晴れ渡った大倉山が! バカにしてんのか(笑)

まあいいや、見たかったのはこの程度の晴れじゃなく、早朝の朝日岳の頃の展望ですから。
またいつか空気の澄んだ季節に再チャレンジすることにしましょう。

峠の茶屋駐車場

峠の茶屋駐車場着、15:09。朝ここを出てから10時間半の山旅もこれで終了。
予想以上にバテバテになってしまいましたけど、夏山に向けていいトレーニングになりました。



後半はグダグダでしたが、大峠までは最高の展望に恵まれ、結果的に満足だった今回の山行。
三本槍岳〜大峠〜大倉山は、想像していたよりもはるかに気持ちのいい稜線歩きが楽しめました。

途中でも書いた通り、距離が長く道中でエスケープする場所もないので
初心者がこのルートを歩くのはお勧めできないですが、例えば福島県側からアクセスして
大峠〜大倉山を往復するだけでも、充分、高山気分を満喫できると思います。
時期によってはニッコウキスゲに覆われたすばらしい景色が堪能できるそうですよ。

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