Trekking【日本百名山】
鹿島槍ヶ岳2011/10/08-09
富山県黒部市/立山町/長野県大町市 [2889m]所要時間:17時間13分
黎明の北アルプスはかくも美しくGPSログ記録はこちら(別窓)


1日目 10/8(土) 【 扇沢 → 冷池 】
2日目 10/9(日) 【 冷池 → 鹿島槍ヶ岳 → 冷池 → 扇沢 】


★ 2日目 10/9(日) 【 冷池 → 鹿島槍ヶ岳 → 冷池 → 扇沢 】

10/9は珍しく早く目がさめました。
そして起きたらまずトイレ(山荘)への往復ですが、これはやっぱり寝ぼけてると危ないですね。
特に下りは、コーナーを曲がりそこねるとそのまま谷に落ちていくことになりますので慎重に。
もちろんヘッデンなしでの往復は不可能です。

そんなトイレへの下りの道中、ふと左手の崖を見ると、下の方にヘッデンの明かりが見えました。
この時は「あんなとこに道があったっけな…?」と思いながら通り過ぎたのですが
後で確認すると、どう見てもただの崖なんですよね。
…あの明かりはなんだったのだろう…((;゚Д゚))

-----

まあ、そんなものは見なかったことにして、出発の準備を整えましょう!
ちなみに先月の双六のトラウマで、この夜はどれだけ寒くなるのか気がかりでしたけど
今回は二人用テントに二人で寝たのに加え、外気温は−5℃までしか下がりませんでしたので
テント内は氷点下にならず、寒くて目覚めることもありませんでした。

とはいえ、外に出れば十分寒いんですけどね(^-^;
ですので今回は自分としては珍しく、保温着を来たまま登山を開始します。
で、これだけは書いておきたいのですが、最近使っているモンベルの「U.L.サーマラップパーカ」…
これが予想以上にお気に入りになりましたので、ステマ気味にレビューを少し。

普通、登山用のインシュレーションウェアといえば、まず思い浮かぶのはダウンウェアになります。
確かにダウンは軽くコンパクトに収納できる上に暖かく、
同じ重量・容積であれば、いまだに化繊とは段違いの保温性があります。
したがって、特に小屋泊まりの山行であれば、ダウンを選ぶのはある意味当然とも言えるでしょう。

しかし、ダウンにはいくつか問題点もあります。
それは「洗うのが面倒である」ことと「濡れると保温性を失う」こと。
これらは、着用時間が短く乾燥室もある小屋泊の山行であれば、さほど大きな問題にはなりません。
しかしテント泊山行では、夕方から朝までインシュレーションウェアを着っぱなしになることも多いため
必然的に汚れやすくなりますし、また一度濡れたら乾かすのは困難です。
一枚しか持っていない保温着が、縦走中にその役割を果たさなくなったらどうなるか…
これはあまり考えたくないシチュエーションだと思います。

一方化繊は、重量や保温性ではダウンに劣るものの、上記の問題はありません。
特に家庭ですぐに洗えるという点は非常に大きなメリットだと思います。
このおかげで「汚したくないな…」と躊躇することがなくなるのはとても気が楽です。
また、また濡れてもダウンほどには保温性が低下せず、乾きやすいという点も相まって
ダウンよりも積極的に使える場面が多くなることでしょう。

…ということで、テン泊用の保温着はダウンにするのを止めて
化繊綿の「U.L.サーマラップパーカ」を選んでみたわけです。

で、実際に使ってみるとこれが本当に使いやすい!
保温性はたしかにダウンより下回るものの、ペラペラな見た目に反して意外に暖かいですし
湿気ても大丈夫なので行動着としても使え、蒸れ感も少ないです。
そして何より「帰ったら洗うんだから汚れてもいいや」と思えるのがすばらしい。
テン場について落ち着いたらこれを着込んで、翌日の朝まで着っぱなしにし、
家に帰ったら洗濯機にポイッ、という流れにできるこの気楽さは最高です。
ダウンの頃に「そろそろクリーニングに出そうかなぁ…」と悩んでいた日々は何だったのか…

価格に見合わぬ高品質な商品が多い一方で、あれ、何だこれ…と思ってしまうようなものも
散見されるモンベル製品ですが、2011年の商品の中ではこれとノマドパンツは文句なしにお勧め。
これを買わずに何を買う!?と言いたいくらい、お気に入りの商品です。




■快晴の山頂へ

前置きが長くなりましてすみません。4:49、ヘッデンで山頂に向けて出発。

今から出ても山頂でのご来光には間に合わないし、冷池山荘〜テン場〜山頂のほとんどの区間で
ご来光を見ることができることもあってか、テン場の動きはほとんど見られません。
先行するパーティも数組だけの様子。まあ、寒いのもあるんでしょう(笑)

少し登ると、早くも東の空が白みがかってきました。

爺ヶ岳からの展望
クリックで拡大(3416*600 300KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

振り返れば、爺ヶ岳から遠く槍ヶ岳までの稜線がくっきりと見えるように。

山の中で夜明けを迎えるのはもう何度も経験していて、慣れていると思っていましたが、
周りに人影のない2,500m級の稜線で、闇の中から浮かび上がった山々の姿を見ていると
ただただその無言の圧力に圧倒されて、人がこんなところにいていいのだろうか…という
そんな畏怖に似た感情を覚えたのでした。

ご来光

5:50、ご来光。

太陽が出たから何だ、ということもないのに、なぜかこうして日の光を見ると
言いしれぬ安堵感につつまれます。空は快晴、今日もいい日になりそうで何より(^-^)

足下に気をつけて

テン場から山頂までは400m少々の登り。
両手両足で登るようなテクニカルな場所はありませんが、傾斜も距離もそこそこあります。
(山荘からのコースタイムは約2時間)
起きがけなのでペースは上がりません。それにペースが上がらない理由はもう一つあって…

思わず足が止まる

なにせ天気が良すぎて、右を見れば大展望、左を見れば大展望。
おかげで景色に見とれたり、写真を撮ったりで足が進みません。
前のおじさんも撮影に忙しそう。

ただ、この展望で気が紛れたので、思ったほど疲れを感じることもなく…

鹿島槍ヶ岳・南峰

6:38、鹿島槍ヶ岳・南峰(2,889m)に到着です。
よし、去年のリベンジ達成だ!(^-^)



■雷鳥がお出迎え

山頂には木々がないため、まさに360°の大展望が広がっています。
空はこれ以上ないほど晴れ渡り、最高のコンディション。もう何も言うことはありません。

そう、こういう景色が見たかったんですよね〜!
去年、ガスガスの中で無理矢理登頂していたら、しばらくは再びこの山頂を踏もうとは
思えなかったことでしょう。あえて敗退しておいて正解でした。

鹿島槍ヶ岳・南峰より東方面を望む
クリックで拡大(2491*600 358KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

北に目を向けると、後立山連峰の山々の勇姿が(・∀・)
今はまだ怖くて、すぐそばに見える鹿島槍ヶ岳・北峰にすら進む勇気がありませんけど
いつの日か、この稜線を通して歩いていってみたいものです。

稜線は槍穂まで

そして振り返れば、昨日から歩いてきた道のりが一望できます。

稜線は爺ヶ岳から鳴沢岳、赤沢岳、針ノ木岳、蓮華岳…とどこまでも続き、
やがては遙か彼方に見える槍・穂高まで。
こうしてみると、北アルプスのスケールの大きさを改めて実感すると共に
ここを縦横無尽に歩けたらどんなに気持ちいいだろう、と思わずにはいられません。

こうして、山頂からのダイナミックなパノラマを心行くまで満喫したのでした。

-----

さて、時間が許すなら一日中でもここにいたいところですが
今日は自宅に戻らなければならないため、頃合いを見て下山を開始します。

その下山、下りだから楽かと思いきや、足下がザレで微妙に滑るのでちょっと注意が必要。

そんな登山道に苦戦しながら降りていくと、前方に人だかりができています。
ちょうど崖のそばだったので、おいおい、誰か落ちたんじゃないだろうな…と
少し緊張しながら近づいていくと…

雷鳥だ!

雷鳥だ!
登山道脇で雷鳥の親子が草をついばんでいます。みんなこれを見ていたんですね。

雷鳥を見るのはこれが初めてでしたのでちょっと感動。
ほんとうに人間には無関心なようで、近くで写真を撮っても意に介した様子はありませんでした。

※なお、この後は行く山行く山で毎回のように雷鳥に会うようになり
だんだんこっちも無関心になってきました(笑)
なお、最近はカモシカもよく見るようになったので、見つけて「おっ!」と思うのは
今やオコジョだけです。オコジョだけは何度見ても見飽きませんね〜



■種池からは快速下山

テン場に戻り、霜で濡れてしまったテントやシュラフカバーを一通り乾かし終えたら撤収開始。

冷池山荘への道は危険!

その道中、冷池山荘までの道の写真がこちら。登山道が崖っぷちなのがよく分かると思います。
テン場で飲んだくれたりした後は特にご注意を…

爺ヶ岳へ 本日最後の登り

そして今日最後の大仕事である爺ヶ岳への登り返しへ。
登りはここだけなので大したことはないはずですが、この写真を撮ったところをみると
よほどこの登りに思うところがあったようです。疲れてたのか…(^-^;

大賑わい

しかし、登り終えてしまえば後は気持ちのいい下りが残るだけ。

扇沢から爺ヶ岳を往復する登山者と合流したため、急に賑やかになってきました。
快晴に恵まれたので、皆さんのテンションも高め。交わす挨拶にも張りがあります。
やっぱり晴れの日の登山はいいですね〜! こっちも楽しい気分になりますから(^-^)

種池山荘にはやはり青空が似合う

青い空に種池山荘の赤い屋根が映えますね!(ちょっと錆びてるのは見なかったことにw)

そしてここからは段差のない柏原新道。
テン泊ザックでも足の負担がとても少ないので、この装備としては例外的な速さで下りていけます。
重ね重ねありがとうございますm(_ _ )m

コースタイム2:30のところ、1:50で駆け下りて…(唯一ここだけ早かった)

登山口に帰還

13:25、登山口に戻ってきました。お疲れさまでした!



二日とも素晴らしい晴天に恵まれて、最高の展望を満喫できた今回の山旅。
道中に危険箇所がないので、トイレさえ我慢できれば北アルプス初心者にもお勧めできるルートです。
もし体力的に厳しいようなら、初日は種池に泊まる二泊三日のプランにして
爺ヶ岳でご来光を望むのもいいかも。

また、鹿島槍までいかずに扇沢から爺ヶ岳を往復するだけでも、高山の雰囲気を満喫できそうです。
扇沢から仰ぎ見る爺ヶ岳の山頂はとても高く感じられるので、あそこまで登ったのか…!と
改めて達成感を味わうことができるでしょう。

ただ個人的には、去年の借りを返せた満足感とともに、新たな宿題をもらった気もしました。
山頂から見た、北にも南にもどこまでも続く山並み…
いつかはこの稜線を歩き通さなくては、と思わずにはいられませんでしたから。

EXIT