Trekking【日本百名山】
仙丈ヶ岳2011/09/10-11
山梨県南アルプス市/長野県伊那市 [3033m]所要時間:12時間12分
雲上に広がる大絶景! これぞ夏山の醍醐味GPSログ記録はこちら(別窓)

小仙丈ヶ岳を振り返って

■Introduction

本格的に登山を始めた頃から、いつか登りたい…と思い続けてきた山がありました。
それは南アルプス・甲斐駒ヶ岳。
全国に数ある駒ヶ岳の中で最高峰であるばかりでなく、どこから見ても凛々しいその姿は
まさに名峰と呼ぶにふさわしい気品を感じさせてくれます。

加えて、その隣に鎮座する仙丈ヶ岳もまた魅力的な山でした。
3,000mを越える高峰でありながら、その稜線はあくまでたおやかであり、
「南アルプスの女王」と称されるのも納得できる、優雅な山容になっています。

そして、この二山は、北沢峠から一泊二日で登ることができるのです。
有休をとらなくても土日で登れる&テント泊もできるというのは
我々にとってまさに垂涎のプラン。
これはもう登るしかない! と、お盆明けからチャンスをうかがい続け
天候不良がようやく落ち着いた9月、ついに決行の時がやってきたのでした。

※2日目へのショートカットはこちら。

1日目 9/10(土) 【 北沢駒仙小屋 → 甲斐駒ヶ岳(敗退) 】
2日目 9/11(日) 【 北沢駒仙小屋 → 仙丈ヶ岳 】


1日目 9/10(土) 【 北沢駒仙小屋 → 甲斐駒ヶ岳(敗退) 】

それではまず初日から。 …見出しでオチが分かりますが気にしないように!(T▽T)

序章でも書いた通り、今回は北沢峠(正確には北沢駒仙小屋)にテントを設営し
初日は甲斐駒ヶ岳、二日目は仙丈ヶ岳に登るプランです。
北沢峠には直接車で乗りつけることはできず、バスを利用することになりますので
まずはバス停のある仙流荘に向かいます。

※東京方面から来る時は、反対側(東側)の玄関口である芦安に向かう方が近いのですが、
芦安からだと広河原で一度バスを乗り換えることになります。また、時間も長くかかります。

重い荷物を持って乗り換えをするのはちょっと面倒なので、遠回りではありますが
今回は西側の玄関口である仙流荘を選んだのです。
こちらだと、乗り換えなしで北沢峠に行けるため精神的にはだいぶ楽。
東京からの所要時間もさほど変わらないですよ。


仙流荘 駐車場

仙流荘着、5:20。
ハイシーズンだけあって、この時間でも第一駐車場は満車。河原の第二駐車場に停めました。
本当はもっと早く着いて仮眠をとるはずだったのですが、結局、今日も徹夜登山です。
うぅ…(;´д`)

仙流荘 バス停

バスの始発は6時。ただし、今日のように大混雑の時は始発を早めるようです。
また、人数に見合った分だけ臨時便が出ますので、座っていけるのもありがたいですね。
手荷物料金も合わせて、料金は往復2,600円。

道中では運転手さんの山案内があり、登山者なら興味深い内容…だったのですが
徹夜の我々は睡魔に負けて爆睡していたり(^-^;

北沢駒仙小屋

バスに揺られること50分で北沢峠へ。
更にそこから10分も歩けば、今回のベースキャンプとなる北沢駒仙小屋(現:南アルプス市長衛小屋)に到着です(6:55)



■テント場はきわめて快適

今日明日は、ここに張ったテントを基点にして、山頂まで往復することになります。
いわゆる「定着型登山」ですね。

ということで早速、小屋にテント場の申し込みに行きます。
料金を払って小屋を出ると、目の前にテント場があるのですが…

北沢駒仙小屋 テント場

広い!

そこには「山のテント場=狭い」という自分の常識を覆すほど広いテント場が。
しかも、ほとんどのサイトがほぼ水平です。その平坦っぷりには感動を覚えるほど(笑)

テント設営完了!

小屋に近い方はほどほどに混み始めていましたが、僕は騒がしいのに耐えるくらいなら
多少不便でも静かなところの方が好きなので、小屋からはだいぶ離れた下段のサイトに張りました。

こちらはご覧の通り、まだスッカスカです。う〜ん、落ち着きますね♪
テントを張るのに難しい要素は何もなく、僕にしてはあっさりと設営が完了しました。



■甲斐駒へ出撃!

さて、それでは遂に、甲斐駒ヶ岳に向かって歩を進める時がやってきました。
前々からずっと登りたいと思っていた山。期待と不安で少々緊張しながらのスタートです。

甲斐駒ヶ岳へ

まず初めは、沢沿いにゆるゆると登っていきます。

渓流沿いの登山道

ここからしばらく樹林帯の登りが続きます。
お助けロープがついた、ほんの数メートル程度の岩登りが一ヶ所ありますが
それを含めて技術的に難しいところはなく、初心者でも問題なく登れるでしょう。

前泊組や、テント設営に慣れているベテラン組はとっくに先に行き、
逆にテント泊(≒キャンプ)メインの方々はまだテン場にいますので
我々の周囲には他の登山者の姿はありません。
ハイシーズンの百名山とは思えない、静かな朝の登山道を楽しみながら歩いていきます。

視界が開けた

すると、突然視界がパッと開けました。
これまでの穏やかな樹林帯からは一変、大きな岩塊の転がるアクロバティックな斜面に。
そして…

ド迫力の摩利支天

上に目を向けると、そこには摩利支天の大岩壁が。
おぉっ、これは凄い!
これまでに見たことのない光景にテンションが上がってきます(゚∀゚)

ワクワクしながら10分も歩けば、仙水峠に到着です(9:16 テン場から約1時間)

仙水峠

朝、仙流荘についた時の空は真っ白くもやがかかっていましたので
正直今日は展望は期待できないかな、と思っていたのですが、高度を稼ぐ間に雲を抜けたようです。
眼下には雲海が広がり、頭上は晴天。これは楽しすぎる!

仙丈ヶ岳

振り返れば仙丈ヶ岳もくっきりと。この天気で登れたら幸せでしょうね。
明日も晴れてくれよ…と祈らずにはいられませんでした。



■トラブル発生!

さて、のんびり登山道は仙水峠で終わり。本格的な登りの幕開けです。

ここからはまず駒津峰というピークまで林の中を直登することになります。
仙水峠の標高は2264m、駒津峰は2740m。
この標高差476mを、水平距離たったの1km強の登山道で登りきらなければなりません。
GPSログで見た平均勾配は、何と41.62%!
男体山や富士山が20%前後であることを考えれば、尋常ならざる傾斜であることが
分かるかと思います。

死の直登

更に、ここからまた樹林帯に入り、風が吹かなくなってきたため
暑さが増してきました。
急登のため運動量も上がりますから、発汗も増えてきます。

そして、ふと何気なく水を飲んでいた時に、とんでもないことが発覚したのです。

水が足りない… ( ゚д゚ )

なぜか500mlのペットボトル二本しか持ってきていないのです。
一本は飲みかけなので、残りは700mlくらい…

ここから下山するまでのコースタイムは約6時間。
真夏の登山道を6時間歩くのに水が700mlで足りるかどうかは、考えるまでもありません。

後から思い起こすとバカっぽいのですが、この手の水不足はなぜか頻繁に起こるんですよね…
出発時の自分が、なぜ水が1Lで足りると思っているのか、訊きにいきたい気分です(´ヘ`;)
徹夜のせいなのかな…? 食料はいつも無駄に余るのにね。

あと少し!

ともあれ、もう駒津峰までかなり近いところまで来てしまっているので、
とりあえず登りきることにします。
暑い、疲れた、あと少し…!

駒津峰

こうして、急登を登り続けること1時間少々、なんとか駒津峰にたどり着きました(10:33)



■憧れの頂を目の前にして

ここまで来れば、もうこれ以降は長い登りはありません。

駒津峰から東〜西方面の展望
クリックで拡大(3140*600 622KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

憧れの頂は、もう手を伸ばせば届きそうなところにあります。
ここからの標高差は227m、コースタイムは1時間半。本来なら楽勝なはずの区間です。
少々ガスが出てきているものの、夏にこれだけクリアな空が見られるチャンスは
そうそうないでしょう。

…でも、水がないんですよね…
もう、一本目のペットボトルは空になりそうです。
この強烈な日差しの中で、山頂まで往復して下山することが可能なのか、考えることしばし…


…うん、どう頑張っても無理だな。

非常に残念ですが、ここで撤退することにしましょう。
山は逃げないから、またいつかチャンスがあるさ!(`・ω・´)

駒津峰から西〜北方面の展望
クリックで拡大(2233*600 463KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

帰り際に、仙丈ヶ岳〜中央アルプスのパノラマを一枚。
中央アルプスも快晴。今日は絶好の登山日和だったようですね。

-----

帰路は(疲れているわけではないので)行きと同じ道は通らず
双児山を経由して北沢峠に降りるルートを選択しました。

双児山が高く見える…

しかし、暑さのあまり最初の双児山への登り返しでグロッキー状態に…
不動岩辺りまではもうろうとしていました。

北沢峠

その先の樹林帯は冷風が吹き抜けていたので、なんとか生気を取り戻し、13:12に北沢峠に下山。
ふぅ、なぜか過酷な登山になってしまった(^-^;

長衛荘で飲み物を買いたいのをぐっとこらえて、スタート地点まで戻ります。

テン場に帰還

北沢駒仙小屋着、13:26。あ〜、暑かった!

テン場はご覧の通り大賑わいになっていました。
ただ、これでもまだ余裕があるのが恐ろしいところ。公称100張はだてじゃないですね。

涼やかな流れ

小屋で買った飲み物を飲みながら、テント脇で沢を眺めながらしばし放心。
30分くらいはボケーっとしていました。どんだけ暑かったんだか…



■素敵なテン場の午後

さて、汗も引いて落ち着いてみると、改めてこのテン場の良さを実感します。

テン場の脇を静かに流れる沢。水の流れを見ていると心が落ち着きますね。
それに、この沢のおかげで多少気温も下がるようで、日光が直撃するテントの中も
そこまで暑くはならず、フライを開け放てば昼寝ができました。

山のテン場は、風が強かったり、水場がなかったりするなど
油断していると生命の危機に直面する可能性が排除できないところが多いですから
テントを張っていても、心のどこかに多少緊張する部分があるのですが
ここはそういう心配とは無縁で、心の底からリラックスすることができるのです。
それが何よりも素晴らしいな、と思ったのでした。


この後は夕飯時の喧騒で目が覚めたため、食欲はさほどでもありませんでしたが、一応夕飯を食べて
(ちなみに尾西のえびピラフにしてみましたが、おいしかったですよ。リピしようと思います)
食べ終わるや再び深い眠りに。明日も晴れてほしいなぁ。

>2日目へ

EXIT