Trekking【日本百名山】
木曽駒ヶ岳2011/08/12
長野県木曽郡上松町/木曽町/上伊那郡宮田村 [2956m]所要時間:2時間40分
お手軽登山で大展望を満喫GPSログ記録はこちら(別窓)

千畳敷カール

■Introduction

怒濤の夏休み登山・第三山目は、本来は8/12-14で白峰三山テント泊の予定でした。

しかし、二泊三日の計画だった双六が三泊四日になってしまったおかげで、休養日だったはずの8/11も登山(正確には下山ですが)をしていることになり、下山後に温泉→食事→洗濯を終えた頃には、辺りはすっかり夜になっていまして…

そこから上信越→北関→東北道で東京に出て弟をピックアップし、中央道で芦安まで徹夜ドライブ、更にそこからテント泊装備で北岳頂上まで1,600m登る… という行程はどう考えても無理があるような気がします。
それでも、白峰三山は今年登っておきたい山でしたから、とりあえず長野から東京に向けて車を走らせたのですが、途中で立ち寄ったSAで歩き出したとたんにフラついて、こりゃ無理だな…と。

そこで、残念ながら弟だけを芦安に送り届けて、自分は白峰三山は断念することにしました。
しかし今日8/12(金曜日)は折角の平日休み。しかも芦安まで来ているのに、何もせずに栃木に帰るのはあまりにももったいない気がします。
ただ、徹夜な上に前日までの疲れもあり、ハードな南アの山には登れそうにありません。

そこで、簡単に登れて、しかもそれなりに楽しそうな山が近場にないか考えてみたところ、ふとひらめきました。すぐ近くにおあつらえ向きの山があるじゃありませんか。

そうだ 木曽駒、登ろう。



■予想外に澄んだ空、これは期待できるかも?

木曽駒ヶ岳には直接マイカーで乗り付けることはできず、バス・ロープウェイを乗り継いでアクセスすることになります。そこで、まずはバス停直近の駐車場に向かいましょう。

黒川平駐車場

中央道を駒ヶ根ICで下り、黒川平の駐車場に到着したのは7:30。少し遅くなってしまいました。

ちなみに、今回は思いつきで木曽駒に来たので黒川平まで車を走らせてしまいましたが、実は黒川平まで来るメリットは何もありません。
というのは、バスの始発がもっと手前だからです。黒川平まで来てしまうと、来るバスはもう先客で一杯だったりしますし、下りる時も一苦労。それでいて料金が安いわけでもなく…
ですので、マイカーの場合は、インターから3分ほど走ったところにある管の台バスセンターの駐車場に停めましょう。

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ここからは、まずロープウェイのしらび平駅までバスに乗り、続けてロープウェイで千畳敷に向かいます。料金は前払いで、ロープウェイの料金も合わせてここで払うのですが…
値段を見てびっくり、なんと往復券で¥3,800!
一瞬、徹夜だから何か見間違えているのかと思いました(^-^;

ただ、実際の行程を見てみると、黒川平(マイカーはこの先通行禁止)からしらび平まではバスで40分もかかる険しい峠道でして、それを考えれば妥当な値段なのかもしれませんね。

バスとロープウェイで高度を一気に1,700mほど稼ぎ、標高2,612mの千畳敷駅に着いたのが8:50。

千畳敷駅より

うは! さすがに観光地だけあって人が多いです。

千畳敷駅を出ると、すぐ目の前にあの"千畳敷カール"が広がっています。
登山者にとってはガイドブックや雑誌でよく目にする光景ですが、それでもやはり本物を見るとその迫力には圧倒されるものがありました。

なお、周りの方々が全て木曽駒ヶ岳を目指すわけではなく、この千畳敷カールを散策してそのまま下りロープウェイで帰る観光客の方も大勢います。
この時は、折角ここまで来て散策だけで帰るの?と、ちょっとその心情を計りかねたのですが
ロープウェイに乗るだけでこの高さに辿り着けるのは日本ではここだけですし、前を向けば大迫力の岩峰群、振り返れば伊那市街を挟んで南アルプスの山々を一望、更に周囲は高山植物の宝庫とくれば、ここを散策するだけでも十分楽しめるのかも知れませんね。

さて、今日の登山の行程を簡単にお話ししておきます。

千畳敷駅より千畳敷カールを望む
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まず、この千畳敷駅から遊歩道で山腹を20分ほどトラバースした後、乗越浄土まで200mほど登ります。この登り坂(八丁坂)が本日最大の頑張りどころ。
そしてそこから中岳を経由して木曽駒ヶ岳に至るという、オーソドックスなルートになります。
コースタイムは、千畳敷駅→1:00→乗越浄土(宝剣山荘)→0:30→中岳→0:30→木曽駒。
山頂まで2時間です(このコースタイムは観光客向けかな? ちょっと大げさな感じがしますね)

あ〜、それにしても空が青い! 高速を走っていた時は遠景が霞んでいたので展望は期待薄でしたが、標高が上がるに従って徐々に空気が澄んできているように感じます。
頂上に登るのが楽しみになってきました。



■八丁坂が正念場、無理せず一歩ずつ登りましょう

さて、今日は昨日までのテン泊バテバテ登山から一変、日帰り軽量装備のスピード登山です。
ガンガン行きますよ! ってことで、9:01、登山開始。

千畳敷駅からしばらく遊歩道を歩き、八丁坂の下へ。
まだ歩き始めて間もないですが、先ほども書いた通り、この八丁坂の登りが、今日の登山で最大の難所になります。
逆に言うと、乗越浄土の後の中岳や木曽駒への登りは、ここに比べれば坂道歩きのようなもの。
ですので、楽に木曽駒の頂に立てるかどうかは、ここで疲労を溜めずに歩けるかどうかが鍵になります。

八丁坂

では、どうすれば疲労を溜めずに歩けるかと言えば、それは単に「ゆっくり登る」、それだけです。

登山慣れしていない方々は、どうしても早く登ろうとしてしまい、5分も持続できないようなハイペースで登っていった結果、息が切れてバテバテ、という状態になることがよくあります。
ここは観光客の方の比率がとても高いので、そんな方々が多く目に入りました。

しかし、これが例えば北アルプスであれば、たかだか200mの登りで止まっている人などいません。
この差は何なのか?と言えば、それはペース配分に気を配れるかどうかなのです。

そもそも、斜度30度を越える200mの登りを、街を歩くのと同じペースで登って、バテずに上まで登りきれる人間はごくごく限られています。
僕はもちろんダメですし、大半の登山者も無理でしょう。
登山者はそれが分かっているので、無理に急がない結果、体力を維持したまま歩けるのです。
そしてその方が、最終的には早く登れることになります。
※僕ですら、ここで30人は抜きましたからね。これが北アだったら30人に抜かれるんですが(笑)

一度バテて息が切れてしまったら、完全に回復するまでにはかなりの休憩が必要になります。
息が上がってきたな、と思ったら意識してペースを落とし(ただし止まらないこと)、ゆっくりでいいので、一歩ずつ確実に登っていくようにするのをお勧めします。

千畳敷駅が遙か眼下に

ただ、前言を翻すようですが、初めての登山などであれば、あえて疲れる登り方をするのもありかな、と思ったりもします。

と言うのは、キツイと言っても所詮200mの登りだからです。
ここでバテたとしても、もう一歩も歩けない、というほど体力を失ってしまうということは(普通は)ないでしょうから、木曽駒までは行けるでしょう。
そう考えると、最初から山慣れした歩き方をして簡単に山頂に立ち拍子抜けするよりも、むしろ疲労困憊で山頂に辿り着いた方が達成感や感動を味わえていいのかも知れません。

もちろん、これが富士山のような長丁場であれば別ですけどね。
登頂できなくなってしまう可能性がありますから。

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八丁坂を登り終えて、乗越浄土に辿り着いたのは9:40。ここで視界が一気に開けます。

乗越浄土
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上のパノラマは左から東→南→西→北となっていまして、左端が伊那前山。
そこから遠く霞む南アルプス(この下が八丁坂)を挟み、画像中央に一際高く聳えるピークが宝剣岳、青い屋根の小屋が宝剣山荘、赤い屋根は天狗荘、そして天狗荘の右にある丘のようなピークが中岳になります。

空はご覧の通り晴れ渡り、開放感抜群です。眠さをこらえて登ってきた甲斐がありました(^-^)



■木曽駒? 残念、中岳でした

書き忘れていましたが、今日は少し急ぎモードの登山です。
と言うのは、遅くなればなるほど千畳敷駅からの下りロープウェイが混み合うそうで、数時間待ちもあり得るので、時間に余裕のない方は早めに下山を〜というアナウンスがありまして…

さすがに一人で何時間も行列に並びたくはありません。
行動開始したのはそれなりに早い方ではあるのですが、木曽駒に登らずに帰る方々のことを考えれば、早く駅に着いているに越したことはないですね。ですので乗越浄土では休まずに先に進みます。

中岳へ

ここから中岳まではご覧の通りなだらかな登りで、そう苦労することもないでしょう。
ちなみに登山道はこのように砂地の区間もありますが、八丁坂や中岳・木曽駒の山頂付近は岩場ですので、ハイキングレベルの登山とは言え、それなりの靴で来ることをお勧めします。

中岳

中岳到着は9:53。

乗越浄土からはこの中岳しか見えないため、ここが木曽駒だと思っていた方も多いようで、辺りからは「え? ここが頂上じゃないの!?」なんて声が頻繁に聞こえてきたり(笑)

山頂はそれなりに広いので、ここで少し食事休憩を取りました。
芦安に向かう途中のコンビニで買ってきた食料、これは本来は北岳で食べるはずだったんですよね。
北岳にも行きたかったな… でも、まあいいか! 来年のお楽しみということにしておきましょう。

中岳より木曽駒ヶ岳を望む

さて、後は木曽駒を残すのみです。
ここからは一旦、駒ヶ岳頂上山荘のある鞍部まで下り、そこから山頂へ登り返すことになります。
ヘロヘロの時は、この下り→登り返しの行程を目にするのは精神的にキツイのですが、今日は楽勝。
やっぱりザックが重いのと軽いのとでは天と地ほども差がありますね。
昨日までとは打って変わって、疲労感は全くのゼロです。
…単に徹夜でナチュラルハイになっているだけかも知れませんけど(^-^;

木曽駒へ

鞍部まで下りてくれば、山頂まではあとわずか。
大きめの岩が転がる坂道を、一歩一歩確実に上り詰めていくと…

木曽駒ヶ岳

はい、木曽駒ヶ岳・山頂に到着しました(10:17)
千畳敷駅から歩くこと1時間16分。本当に久しぶりの、余裕のある登山でした(^-^)


広く開けた山頂では、360°どこを向いても大展望が広がっています。
周囲の方々も、それぞれのカメラで撮影に暇がないようですね。
これだけの天気であれば、僕もパノラマを撮らずにはいられません。

ということで、まずは北から時計回りで南西方面まで。

木曽駒ヶ岳より東方面を望む
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大気が霞みかけてきましたが、それでも八ヶ岳から南アルプス・富士山までをはっきりと見渡すことができました。

ちなみに、写真右寄りの青い屋根の小屋(駒ヶ岳頂上山荘)の向こう側が今下ってきた中岳で、そのすぐ右にあるとんがったピークが宝剣岳。
そしてそこから更に右奥にある、この写真では一見双耳峰に見えるような、ちょうど山頂にいくつか雲が沸いている山が空木岳になりまして、
以前は、木曽駒に行くなら、ついでに宝剣と空木も日帰りで縦走してしまおうと考えていました。

しかしこうやって見ると、空木岳はすご〜く遠く見えますね。
本当にこれを日帰りで縦走できるのだろうか…


続きまして、南から北西方面の展望はこちらです。

木曽駒ヶ岳より西方面を望む
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こちらも北アルプスまで見渡せる大展望ですが、特に目をひくのはやはり御嶽山。
とにかく山体のスケールが他の山とは桁違いで、一つの山とは思えない圧倒的な存在感があります。

御嶽山も今年登ろうと思っていたのに、チャンスがなかった山の一つ。(栃木からだと遠くて…)
来年こそは何としてでも登ってみたいと改めて思ったのでした。

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ところで、そんなパノラマ撮影を終えて一息つくと、ふと気づいたことがありました。
この山頂には、特に何もせずにただ座って景色を眺めている方が、ずいぶん多いような気がします。

他の山、特に百名山では、山頂でただ座っている方というのはあまり目にしません。
百名山の山頂は混み合うから、というのも理由の一つであるとは思いますが、それ以上に、山頂を単なるチェックポイントの一つとして考えて「はい山頂に着いた!これで百名山また一つクリアしたな、メシにするか。メシ食い終わったらすぐ下山しようぜ!」といったように、登山の行程を楽しむというよりもある種の競技をしているような、そんな登山者の方が多いような印象があります。
(それが悪いと言いたいのではないですよ。最近は自分もややそういう傾向がありますし)

見上げれば夏の空

ただ、登山の楽しみというのを、いかに多くのピークを踏んだかということや、いかに早く登頂できたかということだけに限定して考えるのも、それはそれでもったいないかなと思うのです。

周りで座っている方々が今、何を考えているのかは分かりません。
ただ恐らくですが、そうした方々は、山という非日常の世界にいて、自分が普段目にすることのない光景や、感じることのない感覚に身を包まれているということを、とても純粋に受け止めているのだろうなと思いました。



■中岳の巻き道はちょっと危険

さて、それではそろそろ帰ることにしましょう。

帰路は同じルートを通ってもいいのですが、登りの方が増えてきて、中岳辺りで渋滞しそうなのと、中岳まで登り返す時間がもったいないので、中岳は巻いていくことにしました。

横手(巻道)コース

ただ、この巻き道、積雪期は通行禁止になるだけあって、少々危険な道です。
要所要所にはロープが張ってあり、ある程度の安全性は確保されているものの、転んだらあの世行きになる場所が多いです。

状況によっては危険かも

ですので、足下に不安があったり、悪天候の場合は、ここを通るのは避けましょう。
また、木曽駒に登ったら疲れ果ててしまって、中岳に登り返したくない…という場合に、少しでも楽をしようと思ってここを通るのも、賢明な判断とは言えません。
疲労で足が踏ん張れず、注意力散漫な状態で通っていい道ではないです。
それなりに岩場歩きの経験があり、体力にも余裕がある場合にのみ通れる道だと思います。

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巻き道を抜けたら、八丁坂の下までは往路を戻ります。
八丁坂は案の定、渋滞中。他者の動向に気を配れるような余裕を失っている方々が多いので、ぶつかったりしないように気をつけましょう。また、落石にも注意が必要です。

遊歩道

八丁坂から後は、カールの遊歩道を南方向にぐるっと回って千畳敷駅に帰りました。
今日は、南アルプスや、その向こうの富士山までが一望できる絶好の天気。
こんな状況であれば、遊歩道を歩くだけでも十分満足できそうです。

千畳敷駅に着いたのは11:42。
幸いなことに、ロープウェイには20分ほどの待ち時間で乗ることができました。

※ちなみに、ロープウェイの乗務員さんは、パッと見はチャラいお兄ちゃん達でしたので、手際が良くないのが渋滞の原因かな、なんて失礼なことを考えていたりもしたのですが
実のところ、移動時間だけで片道7分かかるロープウェイを9分間隔で発着させているという、素晴らしくプロフェッショナルな方々でした。
これでも混むんだから、もう完全にキャパオーバーなんでしょうね。

しらび平でのバスへの乗り換えもスムーズで、特に苦労もなく黒川平へと帰着。
思いつきの登山でしたが、予想外の展望に恵まれて大満足の一日でした(^-^)
交通費がちょっと痛いですけど、特に登山初心者にはお勧めの山ですよ。



■余談

この後は、少しドライブして「道の駅 花の里いいじま」でお土産を買った後(ここは産直ものが多く、いい道の駅でした)、更に南下して今日の温泉である「信州まつかわ温泉 清流苑」へ。

この温泉は実に快適でした。
「温泉」という観点で見ると、天然温泉なのは内湯一つだけなので、温泉マニアの方々には物足りないものがあるかも知れません。
しかし僕が登山後に温泉に向かう理由は、温泉の泉質を求めているわけではなく、早く登山の汚れを流してまったりくつろぎたい、ということですので、そういう意味で言えばここはこの夏に訪れた温泉の中でベストだったと思います。

湯の種類が豊富で楽しめますし、洗い場も充実。
お湯に浸かりながら南アルプスの山々を一望できる上、屋外に出られる広い休憩室もあり、全体的に明るく清潔的な造り…と、とてもリラックスできる施設でした。
風呂上がりに屋外のベンチで南アを眺めながらボーッとしていた時の非日常感は最高の一言。
それでいて日帰り入浴はたったの\400とくれば、もう文句のつけようがありません。
いつかまたこの近くに寄ることがあったら、是非また訪れてみたいと思います。

ただ、この辺りは温泉が少ないこともあって、休日などは混み合うようです。
芋洗いだとまた印象も変わると思いますので、できるだけ空いている時間帯を狙いたいですね。

EXIT