Trekking
赤岳   【日本百名山】2011/08/07
長野県南牧村/原村/茅野市/山梨県北杜市 [2899m]所要時間:10時間33分
消費カロリー:計測せず
行者小屋、行者小屋はまだかっ!?GPSログ記録はこちら(別窓)

地蔵ノ頭より赤岳を望む

■Introduction

今年は節電の影響でお盆休みが長くなり、8/6〜8/14まで、なんと9連休になりました。
本来の夏休み(7/23〜7/31)は雨、雨、雨…で不完全燃焼に終わってしまいましたから
今度は一日たりとも無駄にはできません。
そのため、ギュウギュウにスケジュールを詰め込みました。

まず最初は、他の山に登る度に目に入り、いつかは登りたいと思っていた八ヶ岳主峰・赤岳へ。
弟が自分のテントを購入したので、練習を兼ねて行者小屋でテン泊、一泊二日の行程です。
さて、今度こそ晴れるのでしょうか…



■テン泊は断念、日帰りにしよう!

初日の8/6は、美濃戸口から行者小屋までの短い行程なので早く着く必要はありません。
しかしゆっくりしすぎてしまい、美濃戸口に着いたのは14時半と遅くなってしまいました。

しかも、そんな美濃戸口周辺は大雨。
美濃戸口そのものは晴れていましたが、山からは雷鳴が聞こえています。
しかも致命的なことに、コンビニに入るタイミングを逃して、食料を買えないまま美濃戸口に辿り着いてしまいました。
(美濃戸口周辺にはコンビニはありませんので要注意!)

今からコンビニに戻ったら1時間はロスするだろうし、夕方に雷雨の中を行動するのか…と思うと
さすがに無謀な我々と言えども躊躇せずにはいられません。
悩んだ末、結局、今日の登山は見送ることに。
弟は明日中には帰らないといけないのでテント泊は諦め、明日、日帰り登山することにしました。

ルートイン諏訪インターにチェックインして
テン泊用ザックから日帰り用ザックにパッキングし直し。
ちょっと残念。でも、これはこれでゆっくり休めて良かったのかも。

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さて、赤岳日帰りとなるとコースタイムはそれなりにかかってしまうので、登頂はできるだけ早い時間になるように計画しないといけません。
それに今年の八ヶ岳は例年より天気が良くないようで、晴れているのは早朝だけ、ということも多い様子なので、のんびりしてガスにまかれてしまうと楽しさも半減してしまいます。

ということで、12時にホテルをチェックアウト。
美濃戸口に着いたのは12時40分頃でした。

美濃戸口・駐車場

美濃戸口には三段の駐車場がありますが、一番上・八ヶ岳山荘の奥にある舗装された駐車場は
八ヶ岳山荘の駐車場、下二段の砂利の駐車場は蓼科観光が管理しています。
料金はどちらも500円/1日。僕は蓼科観光の駐車場に停めました。
料金は駐車場にあるプレハブの建物で支払うのですが、こんな時間に到着した場合は受付の人がいないため、下山してから払うことになります。
八ヶ岳山荘の方はどうなんでしょうね?



■深夜の南沢は無限回廊の如し

それでは、前置きが長くなりましたが、いよいよ登山の始まりです。
まずは美濃戸まで、林道を一時間ほど歩くことになります。

※美濃戸までは林道なので、車で入ることも可能です。
 ただ、中途半端に舗装してあったりなかったりで、舗装路も穴が開いていたりするため、ローダウンしている車や、低扁平タイヤ+アルミホイールの車で走るのはかなりリスキー。
 個人的には、ここを自分の車で走りたいとは思いません。
 こんな時ばかりは軽四が羨ましいと思いますね。


深夜で当然真っ暗ですが、道迷いの心配がないので美濃戸までは余裕。傾斜も緩やかですしね。
ただ、雨が降ってきたのと、虫がヘッデンに突撃してくるのには困らせられました。

美濃戸口(美濃戸山荘)までは約1時間、2時ジャストに到着。ここまでは順調です。

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さて、ここから登山道は二股に分岐します。
片方は赤岳鉱泉に向かう北沢コース、もう片方は行者小屋に向かう南沢コースです。
北沢コースの方が展望に優れているようなのですが、今は深夜で展望も何もありませんし
北沢コースだと遠回りになるため、ここは少しでも楽をすべく南沢コースを選択しました。

ところが…
結論から言うと、山慣れしている人でない限り、深夜の南沢を歩くのはお勧めしません。

何が大変って、まず、ただでさえ作業道のような道が分岐している上に
沢沿いの道のため踏み跡でないところも草が生えていなかったりするため、
どこが本来の登山道なのか分かりにくいんですよね…
昼間なら地形を見れば一目瞭然の道でも(実際、帰りは全く迷わなかった)、
ヘッデンの明かりだけでは先が見通せず、どっちに進めばいいのか迷うシーンがありました。
最近も道迷い遭難が発生したそうで、ところどころに黄色のテープが巻いてあるのですが
真っ暗闇の森の中では、それを探すのも一苦労。

それに、終盤までひたすら樹林帯の中を進むため、ヘッデンを消すとまさに何も見えなくなります。
試しに5分ほどヘッデンを消してみましたが、暗順応しても自分の手すら見えない漆黒の闇。
登山道は部分的にだいぶ細いところもあるため、もしここで足を踏み外して斜面を転げ落ち
ヘッデンがどこかに吹っ飛んでいった日には、確実に行動不能になるでしょう。
パーティならまだともかく、ソロでそんな状況に陥ったら…

夜の登山道をヘッデンで歩くのは、富士山、女峰山、外秩父七峰に続いてこれで四度目ですが、
ここだけは一人で歩きたくないとつくづく思ったものでした。

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このように道選びで悩んだり、徒渉ポイントを通り過ぎて戻ったりしていたためか、
コースタイムの2時間を大幅に超過しても、行者小屋に着く気配はありません。
地図とGPSを見比べた限りでは、道を間違えているわけではないようなのに
なぜこんなに時間がかかるんだろう…? そんなにゆっくり歩いているつもりはないんだけど…

当初は行者小屋で小休止するつもりだったのですが、4時半を過ぎても小屋が見えないので
枯れ沢の途中で朝食を採ることに。

ようやく稜線が見えてきた…

すると、周りが一気に明るくなってきました。どうやら日が昇ったようです。
縮小画像では分かり辛いですけど、上の写真の稜線の右端の方にある四角い構造物が赤岳展望荘で
その右の方には赤岳と阿弥陀岳も見えました。
稜線をヘッデンで登っていく人の姿も見えます。道間違いはしていないようでまずは一安心。

そして、ここから行者小屋までは目と鼻の先でした。

行者小屋

行者小屋到着、5:06。美濃戸からコースタイム2時間なのに、3時間6分もかかっています。
どうしてこうなった…

もう山では出発の時間ですから、小屋周辺は小屋泊まりの人に加えテン泊の人も入り交じって
活気に満ちていました。
今日はそれなりに晴れそうなので、皆それぞれやる気が溢れているようです。
…我々はヘロヘロですけどね(^-^;



■鎖は補助として使いましょう

ここから赤岳へは、地蔵尾根を通るルートと、文三郎道を通るルートの二つがあります。
早く稜線に出たいということもあり、今回は地蔵尾根を選択しました。

地蔵尾根の登り

赤岳への登りでは、この地蔵尾根がクライマックスと言えるでしょう。
水平方向1kmに対して標高差約370mという超・急登を、バテないようにゆっくり登っていきます。
後続の方々に道を譲ることもしばしばですが、こっちはもう1,000m登ってきた後なんだから…と
焦らずに一歩ずつ着実に高度を稼いでいきました。

振り返れば北アルプス

振り返れば、雲海の向こうには北アルプス。
明日は(予定通りなら)向こうにいるのか… と思うと、感慨深いものがありますね。

鎖場

後半は、斜度が急なこともあり、階段、梯子、鎖のオンパレードに。

実は今回の赤岳、高所恐怖症持ちの自分としては思い切った登山でして…
今まで、鎖場が連続するような山は避けていたため(庚申山や那須岳のは"なんちゃって鎖場")
子供の頃に登った(=登らされた)妙義以来の、久々に本格的な鎖場がある山ということで
登る前から少しびびっていた面がありました。

で、いざ実際に登ってみてどうだったかと言えば、まずこの地蔵尾根は
見た目ほどには怖くないと思います。
足を踏み外せばどこまでも転げ落ちていくんだろうな…という斜度ではあるものの、
登りで使う分には下を見ることがないので、高度感はあまり感じませんでした。
(ただ、下りでは怖いかも)
梯子・階段は取り付けがしっかりしていますし、鎖場もホールドには事欠きませんので
鎖は補助程度にして、三点支持でじっくり登れば問題なし。

地蔵ノ頭

…と、そんな感じで、適度に緊張感を必要とする登りだったためか、疲労は感じずにすみました。
稜線(地蔵ノ頭)に到着したのは6:30。

西方面は雲の中

稜線の東側は薄曇りでした。それでも、全方位に視界が開けるとなぜか心が沸き立つのを感じます。
やっぱり稜線歩きは気分がいいですね!

赤岳展望荘から赤岳を望む

赤岳展望荘着6:41。小屋泊の方々は皆出発した後のようで、辺りにはデポされたザックがいくつか。

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さて、ここからいよいよ最後の登りに入ります。展望荘から山頂までのコースタイムは40分。
頂上山荘はすぐそこに見えますが、その前の斜面はなんだかずいぶん無茶な角度のような…
もしかしてここが正念場? と、不安を抱きながら登り始めました。

…でも結果から言うと、高所恐怖症という意味での恐怖感はありませんでした。
前半はザレ場、後半は岩場で、確かに急傾斜ではあるのですが、道がつづら折れに切ってあるため
それほど急登という訳でもありませんし、足を踏み外す→即滑落、というほどの角度でもなく。

ただ、下りで使うとちょっと怖いかも知れません。
特に後半の岩場は、前向きに降りるか後ろ向きに降りるか判断に悩むような部分があります。
ベテランの山屋っぽい方々は余裕そうでしたが、この日は山ボーイ、山ガールが多くて
おっかなびっくりという感じで降りてくる人が大半でした。


そんな人々を見ていて気になるのが、鎖に頼りすぎている人が多いこと。
よく山の入門書などでは「鎖は補助程度にして、頼りすぎないように」と書かれています。
そんなの当然でしょ、と思うのですが、実際にこうして鎖場を見ていると、両手で鎖にしがみついて
降りてくる人をしばしば目にします。
しかもみんな余裕がないため、一つの鎖に数人がしがみついていたり…
あれだと、余計危ないと思うんですよね。
正直、よくあんな状況でケガ人が出ないな、と不思議になるほど。

個人的には、メジャーでない山を歩いていると、アンカーが抜けてる鎖とか、錆びた鎖などに
遭遇することもあって、鎖に命を預けようというほどの信頼を抱けないのですが
八ヶ岳のように整備の行き届いた山なら、鎖だけに頼っても大丈夫なのかな… と、
いろいろ考えされられた場面でした。

赤岳・南峰

鎖場ではすれ違いが頻発して随分待ちましたけど、体力の温存という意味ではありがたかったかも。
そんなこんなで赤岳頂上山荘(赤岳北峰)を経由して、一等三角点のある赤岳南峰に辿り着いたのは
7:30でした。
1:00に美濃戸口を出発してから6時間半… おかげで朝なのにもう昼の気分ですが
ともかく晴れているうちに山頂に登れて良かった(^-^)



■ガスも時と場合によってはありがたく

山頂で早い昼食を採りながらのんびりしていたところ、稜線の東側からガスが吹き上げてきて
辺りは真っ白になってしまいました。
そのため、今回は山頂からのパノラマは撮れず。最近は天候が不安定ですから仕方ないですね。
またいつかリベンジしに来ることにしましょう。

さて、それでは下山開始です。
いつもなら二行で終わる下山行程ですが、今回はちょっと詳細に。
というのも、帰りは地蔵尾根に戻るのではなく、文三郎道に回るからです。
行きも帰りも地蔵尾根だと芸がないですし、正直あの道を下るのはちょっと…(^-^;

で、文三郎道側から降りる場合、核心部は文三郎道そのものではなく、赤岳山頂から文三郎道に取りつくまでの区間になります。

文三郎道へ向かって急降下

ここはご覧の通り、笑っちゃうくらいの急降下。
段差の激しい岩場の道を、鎖に導かれつつ慎重に降りていくことになります。

ただ、想像していたよりは全然怖くはなかったですね。
ここは均一な斜面ではないので、落ちても下の段で止まるでしょうし
ちょうどガスが沸いているため、高度感が失われているのも大きかったのかも。

赤岳北面の鎖場や地蔵尾根の様子を思い起こすと、高所恐怖症の人は、我々と同じように
行者小屋→地蔵尾根→赤岳→文三郎道→行者小屋、と回るのがベターだと思いました。
逆回りは、たぶん下り行程で寿命が縮みますよ(^-^;

文三郎道分岐から中岳・阿弥陀岳を望む
クリックで拡大(2900*600 513KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

そんな岩場を降りていくと、ようやく文三郎道への分岐に辿り着きます。
上の写真の標識から右下方向が文三郎道(森の中に見えるのが行者小屋)で
正面の道は中岳を経て阿弥陀岳に至る道になります。

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さて、文三郎道に入り、ようやく岩場を抜けて一安心…と思いきや
実はこの文三郎道、ザレ場が多くて結構気を遣う道なのでした。
登りはもっと大変だと思いますけど、ザレ場の下りって不安定で疲れますよね。

初めて階段をありがたいと思った…

そのため、いつもはありがたくない階段も、ここでは却ってホッとするほど。
登山道に階段が整備されているのを見て、心底嬉しいと思ったのは初めてかも。
こんな感じで、ザレ場と階段を繰り返しながら高度を下げていきました。

行者小屋着は9:17。ここからは足下に注意しなくてすむと思うと気が楽になります。
勢いに乗って美濃戸まで駆け下り、美濃戸山荘着が10:27。
オーバーヒート気味の身体には、やまのこ村の冷えた牛乳が実に美味しく感じられたのでした。

あとは蝉時雨の中、林道を淡々と下っていくだけ。

美濃戸口に帰還

11:18、美濃戸口に帰還。蓼科観光の方に駐車料金を支払い、今日の登山は終了しました。

深夜にここを出てから10時間以上の行程は、連休最初の登山としてはなかなかハードで
出だしの林道(美濃戸まで)は雨でしたし、その後も晴れたり曇ったりと天気は優れませんでしたが
それでも、今年中に登ってみたかった赤岳に(思ったほど怖い思いをせずに)登れて満足でした。
次は、空気の澄んだ時期にまた来てみたいと思います。

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この後は、弟を小淵沢駅に送った後、自分はたまたま立ち寄った道の駅「信州蔦木宿」に
温泉(つたの湯)があったので、温泉でまったりと至福の時を過ごしました。
やっぱり下山後の温泉は気持ち良すぎる! もう最近は登山のついでに温泉に入っているというより
下山後の温泉を楽しみに山に登っているのではないかと思うほどになってきました(笑)
「つたの湯」は開放的な露天風呂を含め、全体的に明るい感じの施設で好印象。
風呂上がりの八ヶ岳牛乳(また飲むのかよ!)も最高でした。

さて、明日からはいよいよ北アルプスでのテント泊の始まりです。
前回の涸沢の無念を晴らすべく、今度こそ晴れてくれるのを祈って。

EXIT