Snow Trekking
大菩薩嶺   【日本百名山】2011/01/23
山梨県甲州市/北都留郡丹波山村 [2057m]所要時間:6時間51分
消費カロリー:4281kcal
富士の姿はまるで水墨画のようGPSログ記録はこちら(別窓)

稜線から富士山を望む

■Introduction

1月の赤城山登山は概ね成功でした。これに気をよくして次の雪山へ…と思いましたが
季節はまだ厳冬期。本格的な雪山においそれと入り込める時期ではありません。

そこで、今回はインターバルとして、雪の大菩薩嶺を訪ねてみることにしました。
ここなら低山だし、遭難のリスクは低いでしょう。
体力的にも楽勝かな、と思っていたのですが…



■あれれ? 思っていたより高いかも…

まず、今日の行程のご紹介から。ロッヂ長兵衛の近くにある案内板↓をお借りして説明します。

大菩薩嶺案内図
クリックで少し拡大(1150*600 237KB)

今日は案内図左側にある「丸川峠分岐」の駐車場に車を停めて、そこから
上日川峠→大菩薩峠→大菩薩嶺→丸川峠→駐車場、と周回することにします。

ちなみに上日川峠にも駐車場があるため、通常、大菩薩嶺に登る時は、上日川峠から
登り始めることになります。上日川峠からなら高低差はたかが知れたものですから
ハイキングガイドブックなどで大菩薩嶺が「お手軽ハイキングコース」と紹介されるのはそのためです。

しかし冬期は、図にもある通り各ゲートが閉鎖されて林道は走れなくなるため
麓から上日川峠までも徒歩で登る必要があります。これだと、総行程はそれなりの距離になり
高低差も1000mを越えますから、それなりの登山と言えるでしょう。

-----

それでは当日の様子を記載していきます。
丸川峠分岐の駐車場に到着したのは7時をちょっと回ったところ。
駐車場のキャパは20台停められるかどうか、と言ったところでしょうか。
百名山なのでもっと混むかと思いましたが、さすがにこの時期だと登山者は多くないようです。

丸川峠分岐駐車場

なお、少し手前にある裂石駐車場にも二台ほど止まっていました。
距離はさほどでもないので、この駐車場に停められない時は裂石に停めるのも手だと思います。
裂石からこの駐車場までの林道は狭隘なので、対向車にはご注意を。

最後に雪が降ったのが一週間前なので、この辺りには雪はかけらも見あたりません。
ただ、結構な寒さです。この時点で外気温は-10℃。防寒装備は万全にしていきましょう。

-----

さて、朝食を採って準備万端、いざ出発です(7:40)
まずはここから上日川峠(標高1600m)まで登っていくことになります。

…って、ここ(駐車場)が標高1020mらしいので、上日川峠まで高低差約600m? あれれ…?
ここで自分の認識ミスに気づきました。下調べで冬期はこの駐車場までしか入れないのを知っていて
かつ山頂の標高も知っているにも関わらず、なぜか上日川峠から山頂までの高低差(約400m)が
今日の行程の全てだと思っていて… つまり今日はお手軽ハイキングだと勘違いしていたのでした。

400m登るのと1000m登るのとでは、事前の気構えが全然違うわけで…
冷静に考えると1000mの登りというのはそれほどハードではないですが、
今日はのんびりだ〜、と思っていたところに1000mの登りという事実をつきつけられると
結構ショッキングなものがありました(^-^;

そのせいなのか何なのか、歩き出したのはいいけど実に身体が重い…
ちょっとした登りで息切れしてしまって、いつまで経っても登山モードに切り替わってくれないのです。
ですので、今日のコースタイムは遅すぎますから参考にしないで下さい。
一般的なハイカーの方ならもっと早く回れると思います。

最初のランドマークである第一展望台に辿り着いたのは8:14。

第一展望台から南アルプスを望む

見通しの利かない樹林帯の中を淡々と登っていくこの区間の中にあって、
南アルプスの勇姿を望むことができる貴重な場所ですが、正直なところ
もう展望を楽しむ余裕もないくらいヘトヘトです。どうなってんだ今日は…

ちなみにこの後、上日川峠に辿り着くまでの間には一枚も写真を撮っていません。
バテバテな時はいつもこうなりますね。傾斜自体は急登と言うほどではなく、
手を使わなければ登れないような部分もない、整備された登山道でしたけど
GPSログ記録を見ても分かる通り、この区間が一番厳しい登りでした。

ロッヂ長兵衛

そんな疲労困憊の身体を引きずって、なんとか上日川峠に到着したのが9:08。
ここは冬期でも使用可能な公衆トイレがあるので助かります。

この時点でも気温はまだ-10℃ですが、体力を振り絞っているので身体は汗だく…
それでも汗冷えが一切ないことで、最近の山道具のありがたみを改めて実感します。
フラッドラッシュスキンが効いているのか、はたまたジオラインのおかげかは分かりませんが
これだけ汗をかいていても地肌がドライなのは驚異的。
化繊の服がまだメジャーでない昔は、夏場でも山頂で汗冷えして風邪をひいたりしていましたから
それから考えると隔世の感がありますね。当時の装備ならとても冬山には登れなかったでしょう。



■富士山が見えてきた

上日川峠から福ちゃん荘までは、登山道と林道が並行して走っています。
我々は律儀に登山道を登りましたが、この登山道はアップダウンがそれなりにあるため
林道と比べると同じ距離を移動するのでも無駄な疲労が…

福ちゃん荘へ

しかも、後でガイドブックを読んだところ、林道を歩いてもいいようで(^-^;
ということで、新緑の頃のような「樹林帯の中を歩くことが楽しい時期」でない場合は
林道を登っていった方が無難かも知れません。
ただこの時期、林道はアイスバーンなのと、福ちゃん荘からの車が通るので注意が必要です。

福ちゃん荘に着いたのは9:41。ここでようやく今日歩く稜線が見えるようになります。
木立でギリギリ見えていませんが、稜線の右端が大菩薩峠、左端が大菩薩嶺です。

稜線を望む

ここにも案内図がありましたのでご参考までに。

大菩薩連嶺案内図
クリックで少し拡大(991*600 272KB)

福ちゃん荘から大菩薩嶺までは、表登山道を登って大菩薩峠を経由するルートと
唐松尾根を通って直接大菩薩嶺に向かうルートが分岐しています。
体力的には唐松尾根の方が楽そうですが、唐松尾根はちょっと雪が嫌らしいように見えたのと
大菩薩峠を通らないと大菩薩嶺に来たという感じがしない、ということで
表登山道を登ることにしました。

-----

福ちゃん荘からは、それまでと比べると登山道の傾斜はかなり緩やかになり
今の「謎のバテバテ状態」でもそれなりに楽に登っていけます。

少し歩いてふと右手を見ると… おっ! 今日初の富士山が見えています。

富士見山荘の展望台"

富士見山荘の展望台(足下注意)をお借りして眺めてみましょう。

展望台からの富士山

今日の天気は薄曇り。でもこれはこれで悪くないかも…
いつもいつもピーカンの同じような画だとつまらないですしね。色の濃淡が水墨画のようです。

大菩薩峠へ 徐々に雪が出てきた

上日川峠から徐々に見え始めた路上の雪は、やがて登山道を覆い尽くすようになりました。
しかし積雪量はご覧の程度。圧雪ですが完全に凍っているわけではなく、
この時点ではまだ軽アイゼンは不要でした。

福ちゃん荘から登ること55分で、ようやく大菩薩峠に到着(10:36)

大菩薩峠

そしてお約束の一枚。大菩薩峠に来たからにはこの画は外せませんね(^-^)



■稜線は展望抜群、しかし風は強烈

ここから大菩薩嶺までの尾根は、特に南西側の展望が抜群です。
視界を遮るものが何もないため、常に富士山から南アルプスまでを見渡すことができて
ついつい足が止まってしまいます。
ただ、風は強烈で… 体感温度は-20℃を下回ろうかと思うほど。
そこで早々に避難小屋に逃げ込むことにしました。

賽の河原避難小屋

賽の河原にある避難小屋がこちら。
一時期はドアがない状態だったようですが、この日は付いていました。
気温はまだ-5℃前後で決して暖かくはないものの、それでも風が防げるだけで大違いです。
ここで昼食を採ってしばらく休憩。

-----

さて、ここまで来ればもう大菩薩嶺には着いたも同然。
最後の一頑張りといきましょう。
…と、その前に、尾根からのパノラマを1枚。

稜線からの展望
クリックで拡大(3012*600 778KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

強風下の撮影でしたので、歪んでしまっているのはご容赦下さい。

雷岩を経由して、11:53、ようやく大菩薩嶺に到着。

大菩薩嶺

噂通り、木立の中で見通しの利かない寂しい山頂でした。
ちなみに、この時山頂にいたのは我々だけ。百名山とは思えないほど静かな空間が広がっていました。
シーズン中は混雑するんでしょうけど、こんな時期に登ろうという奇特な登山者は少ないようです。



■丸川峠は意外と遠く

それでは下山ルートに入ることにしましょう。
ここからはまず丸山峠に向かって下りていくことになります。

北側はそれなりの積雪

こちらは尾根から北寄りだけあって、これまでの道程と比べると積雪量が多く
アイスバーンもちらほら見受けられます。そのため、途中から軽アイゼンを装着。
この日は、軽アイゼンが必須だったか?と聞かれればノーと言える状況でしたけど
時期によっては必須になるかも知れませんね。
登ってくる何組かのパーティとすれ違いましたが、見たところ全員何かしらのアイゼンを
使用していました。
(ちなみに、この道は傾斜がそれなりに強いところがいくつかあるため、こちらを登りにすると
 結構ハードな登山になってしまうでしょう。皆さんそれなりに大変そうでした)

この下りは地図で受ける印象よりずいぶん長く感じました。
結構はペースで下りていったつもりだったんですけど、GPSログを見ると3km/h程度しか出てなくて…
やはり無雪期の登山道と同じようには下りられないようです。

-----

この日は、雪道だったのは丸川峠(12:58着)まで。ここからは一転、乾いた登山道が続きます。
下りとしてはこの区間が一番大変でしたね。まず、傾斜がきつく両手を使わないと下りられない部分が
ちらほらありましたし、路面が乾きすぎていて歩くと砂埃が舞い上がるので、タオルで口を覆っての
下山になってしまい、ペースは全く上げられませんでした。
複数人で通る場合は念のためマスクの持参をお勧めします。
丸川峠まではそれほどでもなかったですけど、そこから駐車場までは本当に疲れました。

丸川峠分岐駐車場

何とか駐車場に帰り着いたのは14:24。
お気楽ハイキングのはずが一転、7時間近い行程になってしまいました(^-^;
この日はなぜか本当に不調でした。七峰の42kmよりこちらのほうがよほど疲れていて…
体調管理の大切さを実感した一日になったのでした。

EXIT