Trekking
女峰山   【栃木百名山】2010/10/11
栃木県日光市 [2483m]所要時間:9時間22分
消費カロリー:6517kcal
日光連山の盟主は貴女でしたGPSログ記録はこちら(別窓)

快晴の女峰山・山頂を望む

■Introduction

北アルプステント泊など、最近すっかり気分は県外を向いていましたが
今年は県内にもどうしても登っておきたい山がありました。

それがこの女峰山。
日光宇都宮道路を通るたびに、栃木の山とは思えないほどの圧倒的なスケールでそびえ立つ
この山を見ると、とにかく一度あの稜線を歩いてみたい、そんな意欲を沸き立たせられるのでした。
去年は体力に不安もあった上、登山適期を逃して、赤薙山までで断念せざるを得ませんでしたが
今年は去年とは体力的に段違いですし、まだ積雪もなく、今なら歩き通せるでしょう。
あとは気合いのみ。では、行ってみましょうか!



■早朝のガスの中を黙々と…

去年のなんちゃって赤薙山登山とは違って、霧降からの女峰山はコースタイム9:45という長丁場。
それで辿り着いた山頂が雲の中だと悲しくなります。
そこで、連日、女峰山の様子を観察していました。

すると、どんなに晴れた日でも、午後には女峰山の山頂付近には雲が沸くことに気づきます。
となれば、午前中の早いうちに山頂に辿り着くように計画しないとなりません。
そのためには…

駐車場から仰ぎ見る満天の星空
クリックで少し拡大(903*600 35KB)

ということで、霧降高原の第三駐車場に到着したのは三時半。
もう季節も秋ですので、早朝と言うよりは深夜と言った方がピッタリくる時間帯です。

周りに人もおらず真っ暗な駐車場から仰ぎ見る空が、意外なほど星が綺麗に見えてビックリ。
今年は蝶ヶ岳の星空で感動したりしていましたが、地元も捨てたものじゃないのかも知れません。

トイレもある便利な駐車場で準備を整え、4:36、登山開始。

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さて、ここからはまずは赤薙山を目指すことになります。
駐車場から赤薙山へのルートでは、最初のランドマークとなるキスゲ平(小丸山)までの間、
樹林帯の中を登っていくことになるのですが…

この登山道、あんまり歩きやすくないんですよね。
全般的に土の登山道なんですが、登山者の急増のためか、至る所で土砂が流出してしまっていて
木の根が露出している状態で、やたら大きな段差がいくつもありますし、
土も粘土質なので、このような時間帯は湿っていて滑るのです。

更に、歩き始めてしばらくするとガスが濃くなってきて、
ヘッデンでは5m先も見えるかどうかという状態に…
去年の下見のおかげで迷う心配はないものの、急登と相まってテンションが下がってきました。
ガスってたら登る意味がないし、正直この頃は
もう帰って寝ようかな、なんて考えていたり(^-^;


なので、キスゲ平に辿り着いた頃にはもう暗闇の中を歩く気がしなくなっていました。
ガスの中から薄ボンヤリと日の光が見え始めましたので、ここで大休止して日の出を待ちます。

赤薙山の尾根から望む朝日
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すると、徐々に強くなってきた風にガスが流されていき、ご来光を迎える頃には
視界もすっかり良好になってきました。

秋の太陽と群青の空

地平線のオレンジから上空の群青に至るまでの色のグラデーションが実に綺麗です。
澄み切った空が見られるのは秋山の特権ですね。

赤薙山への尾根

ガスは相変わらず間断なく沸いていますが、風の勢いですぐに吹き飛ばされるので
このまま行けばそのうちスッキリ晴れそうです。これでようやくやる気が出てきました。
赤薙山までの尾根も見通せるようになり、その向こうに見える青空に期待感が高まります。

赤薙山・山頂

日が差してしまえば赤薙山までは勝手知ったる道、お気楽登山です。
そんなこんなで赤薙山山頂着、6:46。

この道中で本日初めて他の登山者と会いましたが、その若い単独男性の方は
僕の倍速くらいで登ってきて、追い抜かされたかと思ったら5分後には視界から消えていました。
つまり僕のペースは相当遅かったはず。それでも小丸山からのタイムは1時間くらいでしたから
山と高原地図のコースタイム(小丸山→赤薙山 1:30)は、ちょっと大げさな気がしますね。



■痩せ尾根の恐怖

ここまでは去年も歩いた道ですが、ここから先は未知の領域になります。

女峰山は雲の中

目指す女峰山は遙か彼方(って、見えてませんけど)
去年赤薙山から見た時も随分遠くに見えたものでした。気合いを入れ直していきましょう。

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次のランドマークは、赤薙奥社跡(上の写真の右手のピーク)
ここからの標高差は193m、コースタイムは0:45と、一見、楽勝に思える区間です。
しかし僕にとっては、この区間が最も苦戦する行程になったのでした。

痩せ尾根を行く

何が厳しいって、ここが結構な痩せ尾根でして…
高度感はそれほどでもないんですが、岩を乗り越えて進むところが多く、
高所恐怖症の人間にとっては、一歩一歩神経をすり減らしながら歩くことになる、辛い区間でした。
(上の写真だと痩せ尾根に見えませんけど、本当に怖いところは写真を撮る余裕がないのです)

アップダウンが多いことも心労に拍車をかけ、更にこの時は強風でやたら寒かったので
この時点ではまたしても「帰ろうかな…」と思ったものでした(^-^;

赤薙奥社跡

命からがら(大げさ)赤薙奥社跡に到着したのは8:00ちょうど。
赤薙山山頂から1時間はかかっています。高所恐怖症で時間がかかった分を差し引いても、
コースタイム0:45というのはちょっと韋駄天ペースなような気がしないでもない…

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さて、赤薙奥社跡を過ぎると登山道は一変、のんびりゆったりな道へと様変わりします。
高所恐怖症の人間にとってこんなにありがたいものはありません。
相変わらず細かいアップダウンがあり、特に奥社跡を過ぎたところではだいぶ急降下しますが
恐怖にさいなまれたこれまでの行程に比べれば、少々の登り下りなどは問題になりません。
滑落しないって素晴らしい!

気持ちのいい稜線歩き

更に、一里ヶ曽根の辺りからは、ところどころ森林限界を抜けて、見通しが利くようになります。
一時期あれだけ吹き荒れていた風もすっかり収まって、山頂に被っていた雲もなくなりました。
こうなるともうテンションは先ほどまでとは大違いで、とても楽しくなってきます。
晴れているうちに山頂に辿り着きたい!と、少しペースを上げてみました。

水量豊富

一里ヶ曽根の独標から少し下ったところにある水場。
登山道からは少し離れていますが、案内板があるので見逃すことはないでしょう。

時期によっては枯れていることもあるこの水場、今日は冷たい水が滾々と湧き出ていました。
旨かったのでガブ飲みしましたけど、腹を壊すこともなく(^-^)

最後の難関

なお、前述の通り、赤薙奥社跡を過ぎてからは全般的に穏やかな道なのですが
その中で唯一緊張を強いられるのが、山頂付近にあるこの岩登りになります。
山と高原地図でも(危)マークが付いていて、登山計画時から不安に思っていたところです。

実際に登ってみると、岩登り自体は、高さが数メートル&お助けロープあり、ということで
三点支持さえしっかりしていれば、さほど苦労することはありませんでした。
ただ、岩登りよりもむしろ、岩場直前のザレた急斜面の方が嫌でしたね。
植生のためにパッと見は怖くないんですが、北側斜面はかなり切れ落ちているので
滑り落ちたらまず助からないだろうな、と思うと…((((;゚Д゚))))

山頂まであとわずか

この岩場さえクリアしてしまえば、その先はもうボーナスステージのようなもの。
山頂までハイマツの緩やかな尾根、最高の稜線歩きになります。
これまでの苦労を振り返りながら、ゆったりのんびり歩いていくと…

女峰山・山頂

はい、山頂に辿り着きました(^-^)
山頂到着は9:47。駐車場を出てから5時間オーバーの道のりでしたので、喜びもひとしおでした。



■秋の山って素晴らしい!

山頂には5〜6人の登山者がいました。
霧降からのルート上ではほとんど人と会いませんでしたが、女峰山の最もメジャーなコースは
志津からのコースなので、恐らく大半の方はそちらから登ってこられたのでしょう。

そんな山頂はご覧の通り、頭上には雲が一切ないまさに快晴の状態です。
寒さに悩まされた強風もすっかり収まり、辺りから聞こえてくるのは鳥の声だけになりました。

この時の気分はもう言葉では言い表せないほど、とにかく幸せでしたね。
これまでに登ってきたどんな山頂よりも、この山頂は快適でした。
夏山だと、晴れているとどんな高さであってもやはり暑くなってしまうのですが、
秋山は晴れていてもこんなに過ごしやすいとは… 実はこの時期が一番登山に適しているのかも。

女峰山頂より南西〜北東方面を望む
クリックで拡大(3524*600 926KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

そして周囲を見渡せばこの展望!
山頂は狭く、そのおかげで視界を遮るものが周囲にないので、まさに360°の絶景が楽しめます。
(このパノラマは240°程度です。南面は雲に呑まれたのでカットしました)
ちなみに、写真左(南西方向)に連なっている山々は、近い方から順に
帝釈山、小真名子山、大真名子山、そして男体山。

今日はここで十二分に満足しましたし、体力に余裕もないのでここから戻りますが
いつか男体山まで歩いて行ってみたいものです。

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さて、名残惜しいですが、雲が徐々に近づいて来たので、そろそろ撤収することにしましょう。
振り返って帰路を眺めてみると…

歩いてきた道のり

うっ、遠い…(^-^; 頑張らなくては。

帰りは下りと言っても、実際のところ赤薙山まではアップダウンの繰り返しなので
やはりそれなりに疲れます。赤薙奥社跡から赤薙山までは相変わらず神経もすり減って大変。
赤薙山に着く頃には疲労の色が濃くなってきたため、山頂は通らず巻道を選びました。

キスゲ平から振り返って

キスゲ平から赤薙山を振り返って。
あれだけ快晴だった空は、南方面から流れてきた雲で覆われつつあります。
早朝に出発して正解でした。

霧降高原・駐車場

駐車場着は14:00ちょうど。長い登山だったけど、とても楽しくて満足、満足(^-^)



全般的に天候に恵まれて、最高の一日を過ごせた今回の女峰山。
その立派な山容とは裏腹に、表日光連山の中でも知名度は男体山に大きく劣る山ですが
登ってみると、そのスケールの大きさ、山深さに感動を覚えました。

今回の霧降からのルートは行程が長く、体力的には少し厳しい面があるかもしれません。
でも、例えば男体山の登山に飽きたりしたら、ぜひこの山を登ってみて下さい。
男体山のようにただただ登るだけではない、山の面白さが見えてくると思いますよ。

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