Trekking
富士山   【日本百名山】2010/08/28
山梨県/静岡県 [3776m]所要時間:9時間50分
消費カロリー:5927kcal
快晴のご来光とお鉢めぐりと影富士とGPSログ記録はこちら(別窓)

吉田口頂上付近からのご来光

■Introduction

「登らぬ馬鹿、二度登る馬鹿」なんて言葉がありますが、今年で富士登山は三回目。
あんな面白くない山になぜまた登るのかというと、過去二度の登山では
達成していないことがあるからなんです。
それが「ご来光」と「お鉢めぐり」。
個人的にはご来光は正直どうでもいいですけど、お鉢めぐりをせずに
吉田口頂上で登頂完了としていた今までの登山は、どうにも中途半端というか
途中で諦めたような微妙な感があってスッキリしないんですよね。
体力的には問題ないんだし、ここは一つ
一度くらいは日本で最も高いところまで登ってみることにしようと思いました。



■ピークを過ぎても駐車場は相変わらずの混雑

※さて、今回の登山もいつものように河口湖口(吉田口)からの日帰り?登山です。
 いつもと違うのは時期と時間帯だけ。
 ですので、前回のレポートと違うところだけをピックアップしてシンプルに書きますね。

例年の富士登山は早朝からの日帰り登山ですが、今回はご来光を見るため、登り始めは真夜中。
しかも、土曜夜の混雑を避けようとすると金曜夜から登るしかありません。
そんな訳で、金曜は会社帰りに栃木から東京に出て同行者(弟)をピックアップした後、
そのまま吉田口五合目に向かって、徹夜登山というハードスケジュールになってしまいました。
最近寝てないのでコンディションは最悪。今度こそ高山病にかかるかも…

道中では外環、首都高の渋滞に巻き込まれて、スバルラインに入ったのは11時半。

※そうそう、河口湖ICを下りてスバルラインに向かう時に、道中でコンビニに寄ろうと思う場合は
 ICから直接スバルラインに向かっちゃダメですよ。
 ICとスバルラインの間にコンビニはありません。
 食料は事前に購入しておくか、一旦コンビニを探してからスバルラインに入るようにしましょう。

例年だと9月上旬に登っていて、その時は朝4時にスバルラインを上り始めても
それなりに五合目近くまでは行けるのですが、もう月末とは言えさすがは8月。
この日は五合目から1.5km下の駐車場という、いつもより遠い位置に停めることになりました。
でもまあ、これだけ近づけたのはむしろラッキーなのかも?



■初めての夜間登山

さて、それではいよいよ初の富士夜間登山を開始することにしましょう。
駐車場から歩き出したのが11:43、まず最初のランドマークとなる五合目に着いたのが0:08。

五合園レストハウス

自分たちのような徹夜組は論外としても、夜行日帰りでの富士登山は
体力的にはもっとも厳しいプランになりますから、さすがにこの五合目も人影はまばらでした。

ちなみにこの日の五合目の天気は晴れ、ほぼ無風という絶好のコンディション。
月明かりに煌々と照らされた登山道は、ヘッドライトなしでも歩けるのではと思うほど明るく、
8月とは思えないほど澄んだ空には無数の星々が輝いていました。
三脚は持って行ったんですけど、時間に余裕がなかったため、写真が撮れなかったのが残念。

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今回は初の夜間登山ですが、実際に歩いてみれば昼間の登山と大した違いはありません。
装備もヘッドライト以外に特に必要なものはないですしね。

たまに人から富士登山のコツを訊かれることがありますけど、これはもう何度も書いたように
とにかくゆっくり登る、それに尽きます。特に今回のような夜間登山ともなると
普段やり慣れないだけにテンションも上がって、ついつい早く登りたくなりますが、
ここでそれをやるとあっさりバテますよ。
実際、山小屋前のベンチなどで頭を抱えていたり、目もうつろになっていたりする人の数が
昼間に登った時と比べて明らかに多く、また低いところから存在しているように見えました。
(昼間なら、七合目手前でバテているような人はほとんどいないのですが)
富士山が初めての登山という方も多いでしょうから、初登山をただ辛かっただけの
思い出にさせないように、リーダーの方はペース配分に気をつけることをお勧めします。

それと、敢えて言うと岩場でのルートファインディングは
"自分で"やるようにしましょう。
ある程度上に登って疲労が溜まってくると、どうしても前の人について黙々と登ってしまうように
なりますが、その「前の人」も自分と同じく朦朧として、判断力が落ちているものです。
ですので、後ろから見ていると、一歩のストライドが1m近くあるような
とんでもないルートを選んでいたりすることもしばしば。
登山の登り下りは、とにかく一歩一歩の高低差をできるだけ少なくするのが鉄則です。
楽なルートは、ちゃんと探せば必ず存在します。
無駄な疲労を溜めないように、少しでも楽なところを登りましょう。

七合目から市街地方面を望む
クリックで少し拡大(903*600 85.8KB)

七合目の山小屋前ベンチから見た麓の夜景(少し明るめに現像)。
ファインダーも覗かず、カメラ任せの30秒露出でしたけど、それなりに撮れて良かった(^-^)



■山頂まであと一息、しかし…

五合目を0:18に出発して、六合目通過が0:50、八合目(太子館)通過は2:32と、
ここまでは順調にやってきました。ここから山頂までは約二時間半なので、
このままのペースで行ければ山頂でのご来光に間に合いそうです。

しかし、この時間になると、山小屋からもご来光組が続々と出発してきます。
そのため、八合目から先は渋滞になってしまいました…
こうなってはもはやどうしようもありません。無理矢理抜いていくわけにもいきませんしね。
実際のところ、自分としては山頂でご来光を見ることにあまり意義を感じていなかったので
むしろこれで休み休み登れて楽かも、なんて考えていたり。
もっとも、究極に寝不足なので登りながら寝そうになったのには参りましたが(^-^;

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それでも何とか九合目は越えまして、山頂はもう目と鼻の先、というところまでは辿り着きました。

頂上まであとちょっとだけど…まあいいか

しかし今や、ここで上を見上げている間に、背後でご来光が出てしまうのではないかというほどの
ギリギリのタイミングになっていまして、周囲も完全に諦めムード
(もうここでいいや、という感じ)で座り込んでしまっているため、ここで登り続けて
ちょうどご来光の瞬間に誰かの前を横切ったりしたらさすがに悪い気がします。
そこで、我々もここでご来光を待つことにしました。
まあ、実質的にほぼ山頂ってことで(´ー`)y─┛~~

ご来光を待つ人・人・人

ちなみにこの時の気温は5℃。風はさほど強くなくてラッキーでしたが、それでもやはり寒いです。
防風用にレインウェアと、中間保温着(フリースなど)を忘れずに。それと手袋もね。

そしていよいよご来光の瞬間がやってきました。

吉田口頂上付近からのご来光と山中湖
クリックで拡大(2316*600 220KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

一説によるとご来光が見られる確率は50%程度だそうですが、今日は最高の空に恵まれました。
僕の富士登山はどういうわけか毎回晴天なんですよね〜! この山に関してだけは運が良いです。
他の方々も登ってきた苦労が報われて何よりといったところでしょうか。
周囲からは万歳三唱が聞こえてきました。

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今回は山頂から約40m下でのご来光になりましたけど、結果から言うと、撮影する立場としては
むしろここで見られて良かったと思います。
山頂の方はかなり混んでいましたし、こうやって目の前に人がいない場所を確保するのは
困難だったかも知れませんしね。

おかげで、パノラマ写真としては、社山の時と同じくらい会心の画が撮れました。
よくよく撮影条件を見ると、絞りはF6.3、ISOは250などいい加減でしたが(だって眠くて…)
SILKYPIXとPhotoshopの力を借りて、なかなか綺麗な画にできたのではないかと思います。

ちなみに、結局三脚は使いませんでした。この条件でシャッタースピードは1/60〜1/80くらい
ありましたから、手持ちで十分です。D90はファインダー内に格子線が表示できるので
手持ちパノラマを撮る時は助かります。この格子線機能がD90を選んだ理由の一つだったり。



■次はお鉢めぐりへ

こうして今回の最初の目的であるご来光は無事拝むことができました。
次の目的はお鉢めぐりです。ということでまずは吉田口頂上へGo!

ようやく頂上に到着

吉田口頂上着5:24。今回はいつもと違ってこの後にお鉢めぐりが控えていることと、
先ほどのご来光で気持ちに一区切り付いてしまっていたので、特に感動はありませんでした。
こんなに達成感のない頂上は初めてだ(笑)

頂上で少し腹ごしらえをしたら、いよいよお鉢めぐりの始まり。
定番は時計回りのようですが、馬の背で苦労するのが嫌なので、反時計回りにしましょう。

お鉢めぐりにLet's Go!

今までの登山では、頂上に着いた時は疲れていたり、天候が悪かったりして
この火口もずいぶん大きく見えたものでしたが、実際にお鉢めぐりをしようと改めて眺めてみると
案外大したことないスケールですね。コースタイムは1時間半ですが、こんなものは僕にとっては
30分もあれば楽勝かな!

…と思ったけど、空気が薄いのを忘れてた…
下りはどうでもいいんですが、登りでとにかく息が切れます。とても30分じゃ無理っぽい(^-^;
マイペースで行きましょう。

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さて、今回、この時間に登るにあたって、撮りたかったパノラマ画像が二枚ありました。
一つは先ほどのご来光。そしてもう一つが、ご来光とは反対側に現れる影富士です。
今日は天気もいいし、綺麗なものが撮れそうですが、果たしてどうか…?と思いながら
剣が峰近くまで歩いていくと…

富士山測候所付近からの影富士と南アルプス
クリックで拡大(2394*600 270KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

キタ――(゚∀゚)――!!!

実に端正な影富士が拝めました。(雲に映っていない影を影富士と呼んでいいのかは謎ですが…)
しかも遠望が利いていて、南アルプスの山々がきちんと山座同定できるほどに
くっきり見えているというおまけつき。
(雲海の向こうにある峰々の、一番右に見えているピークが観音岳。そこから左に北岳、間ノ岳も)

これでもう、今回の富士登山には思い残すことはありません。

剣ヶ峰は渋滞中

ということで剣ヶ峰はスルー。
…だって、こんなに混んでるんですよ。それにもう眠くて眠くて、今この列に並んだら寝そう(笑)

影富士

馬の背を振り返って。
頂上まで登ってきて、いい加減疲れているところに、更にこの登りはきついでしょうね。

結局、お鉢めぐりは(剣ヶ峰をショートカットしたのに)1時間を要しました。



■下山… 実は登りよりキツイかも

ご来光からの2時間で、気温は18℃まで上がりました(たった2時間で13℃上昇とは…恐るべし)
動いていると暑いほどのこの気温も、じっとしていれば心地よく感じるようで、
慣れない夜間登山の疲れもあってか、山頂周辺で寝ている人が大勢います。
これがまた、徹夜で眠さがMAXに達している我々から見ると実に気持ちよさそうに見えて…

よっぽど自分達も寝ていこうかと思いましたが、下山後の行動に時間的な余裕がなくなるので
ここは頑張って、とっとと下山してしまうことにしました。
7:22、下山開始。

延々と続くつづら折れの下山道…

でもねぇ…
毎回思いますけど、とにかくこの吉田口の下山はつまらなさすぎる(´・ω・`)
つづら折れの単調な道をただただ下りていくだけですからね。

なお、去年の反省で今年はちゃんとストックを持ってきていまして、
確かにストックがあるのとないのとではだいぶ違いましたが、劇的に楽になるというわけでも
ありませんでした。足の負担は軽くなっても、そんなに早く下りられる訳じゃありませんし。
何度つづら折れの角を通過しても麓はちっとも近づかないという…

そうそう、今まではピークを外した時期に来ていたので気になりませんでしたが、
晴れた日でかつ混んでいる時は、巻き上がる砂埃が半端ないです。マスクは必携ですよ。
それと、前回も書きましたが、八合目の分岐で須走口に下りないように!

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つづら折れがようやく終わってロックシェードのある坂に差し掛かる頃には、
周囲は疲れのためにほとんど会話もなくなり、大勢の登山者がただ黙々と歩き続ける様は
まるで亡者の群れのように見えます(笑)
六合目でこれから登る人々と合流すると、両者のあまりのギャップは思わず笑えるほど。

でもそんな無限に思える道のりも、歩き続ければいつか終わりは来るものです。
9:33、無事五合目に到着。眠さに耐えてよく頑張った!

五合目に帰還

この日の富士山は9時頃から雲に覆われてしまったようです。
なんかこのパターンが多いんですよね。
山頂では常に好天に恵まれている自分達は、よほど運がいい部類に入るのかも。

ちなみに、今回は前回と比べると格段に疲れは軽い状態で下りてこられました。
この一年間延々と登山を繰り返していただけあって、それなりに体力はついたんでしょうね。
眠いのには閉口ですが(^-^;




こうして、目的の一つであるご来光をほぼベストの条件で見ることができた今回の富士登山。
もう一つの目的であったお鉢めぐりは、最高点の剣ヶ峰にこそ立てなかったものの、
そもそもお鉢めぐりがしたかった理由が、過去二回の登山で「体力的な不安」からお鉢めぐりを
断念していたのが悔しかったからなので、その意味では十分目的を達成できたと言えるでしょう。

個人的には、これでもう富士山には登らなくていいかな、と思うくらい、思い残すことがないです。
ただ、いつか自分の限界に挑戦するために、「海抜0mからの富士登山」はやってみたいと
思っていたりもしますけどね。

この後は、小作でおじやを食べ(ほうとうじゃないのかよ!)、紅富士の湯で汗を洗い流して
帰路につきました。
吉田口からだと「紅富士の湯」も「富士眺望の湯 ゆらり」も似たような距離なので、
選択肢が多いのはいいですね。どちらももう何度も訪れていますが、個人的にはゆらりの方が
システムがシンプルで好きかも。

EXIT