Trekking
社山   【栃木百名山】2009/10/12
栃木県日光市 [1827m]所要時間:5時間40分
あなたの知らない日光がそこにはある…かも?GPSログ記録はこちら(別窓)

社山(中禅寺湖湖畔道より)

■Introduction

10月の三連休、皆さんはどのように過ごされましたでしょうか?
僕は、初日は用事があって出かけられず、満を持して赤城山に向け旅立った二日目は
峠道(群馬県道16号線)走行中、離合の際に誤って道路脇の陥没に突っ込み、
左前輪パンク→JAFの救援待ちという悲惨な展開になりました。
JAFは比較的早く来てくれて助かったものの、スペアタイヤで辿り着いた赤城山はガスの中…
泣く泣く栃木に退散する羽目になったのです。

となれば、もう三日目は家でじっとしてなんていられません。山に登らなければ!
ただ、遠征は昨日の一件で懲りたので、無難に日光(奥日光)の山に向かうことにしました。

ところが、この時期の奥日光には一つ問題があります。それは「渋滞」。
紅葉シーズンのこの時期は、いろは坂を中心に大渋滞が発生します。
これを避けるには早朝にいろは坂を上り、お昼にはいろは坂を下ってくるくらいのスケジュールを
組まなければなりません。
次のターゲットとして狙っていたのは太郎山や女峰山ですが、この二山は距離も長い上に
戦場ヶ原周辺からアプローチする都合上、下山後は竜頭の滝で渋滞→いろは坂で渋滞→
東北道で渋滞…という三連コンボに巻き込まれるのは必至です。
これはとても楽しくなさそうですね。

そこでどうしたものかと栃木百名山ガイドブックをめくっていたところ
面白そうな山を見つけました。
それが今回の「社山」です。社山は中禅寺湖の南岸なので竜頭の滝方面の渋滞とは無縁ですし、
コースタイムも5時間半程度とお手ごろです。これならお昼頃には中禅寺湖まで戻れそうですね。
よし、決めた! 今年の秋山登山はこの山で締めくくる事にしましょう。



■歌ヶ浜駐車場へ

当日は寝過ごして、目が覚めたのは4時半。これはヤバイ!と即行で準備して家を飛び出しました。
しかし空には雨雲が浮かんでいて、とても晴れそうにありません…
もしこれで日光が雲に包まれていたら今日の登山は中止、
三連休は踏んだり蹴ったりで終わってしまいます。
晴れてくれ、と祈りながら東北道→日光宇都宮道路をひた走りました。

すると運命はそこまで無慈悲ではなかったのか、日光に近づくにしたがって雲が切れ始め
やがて朝日に赤く照らされた男体山や女峰山が目に飛び込んできたのです。
「勝った! 勝ったぞ!」と車内で一人で叫ばずにはいられませんでしたね(笑)

目の前には男体山、空は快晴!

日光宇都宮道路を降りた時にはもうこの通り、素晴らしい快晴に恵まれました。


この時点で6時だったものの、思ったほどいろは坂は混んでいなくて
特に苦労する事もなく、6時20分に中禅寺湖東岸の歌ヶ浜駐車場に到着しました。
さっそく、今日のターゲットとなる社山を一枚写しておきましょう。

社山(歌ヶ浜駐車場より)

中央やや右の、ガスに包まれている尖った峰が社山です。
事前にカシミール3Dで山座同定していなければ分からなかったでしょうね(^^;

しかしそれにしても寒い! 車外に出ると激烈に寒いです。
とても同じ栃木とは思えない温度差ですね。
僕はこの時、アンダーとロングスリーブジップシャツしか着ていなかったので
とても耐えられたものではなく、ライトシェルを着込んでようやく人心地つきました。
もともと天気が悪かったら登らないつもりでしたけど、もし雨で登山を強行したら
この装備では今頃死んでいたかもしれません…



■阿世潟まではお気楽・湖岸ウォーキング

食事を済ませ準備万端、それではいよいよ行動を開始しましょう。
まずは阿世潟に向かいます。上の画像で言うと、社山から稜線を左に下ったところの鞍部
(画面中央の稜線が窪んでいるところ)が阿世潟峠で、そこから湖岸に降りたところが阿世潟です。
ルートとしてはまず阿世潟まで湖岸沿いに歩き、阿世潟峠に登って、そこから稜線沿いに
社山山頂を目指すことになります。

ちなみに僕は奥日光には飽きるほど来ていますが、普段は戦場ヶ原や光徳牧場方面ばかり行っていて
歌ヶ浜駐車場から南には行った事がないんですよね。
未知の領域なので、どんな景色が見られるのかとても楽しみです。

歌ヶ浜駐車場7:00発。ここから阿世潟までは3.5kmのウォーキングです。のんびり行きましょう。
それにしても、同じ方向に向かうハイカーがずいぶんいます。社山なんて栃木県人でも知らない
マイナーな山だと思いますが、やっぱり紅葉シーズンは賑わうんですね〜

八丁出島の紅葉

八丁出島の紅葉はこの通り。来週末辺りがピークと言うところでしょうか。

湖岸歩きは、道もよく整備されていてとても気持ちがいいです。
ただ、中禅寺湖に流れ込む小さな沢をいくつか越えることになるので、大雨の後は難儀するかも。

阿世潟の道標

歩くこと約1時間で阿世潟に到着(8:08)。ここまではほぼ平坦でしたから楽勝ですね。
ちなみにここの湖岸は中禅寺湖とは思えないほど綺麗なのですが、その写真はまた後で(^-^)



■意外と大変だった阿世潟峠への登り

では、いよいよ本格的に登山の始まりです。
次に目指すのは阿世潟峠。ここからおよそ130mほど登る事になります。

阿世潟峠への道は、阿世潟分岐からのとっかかりだけがちょっと分かりにくいものの
道中は階段、道標などが整備されているので迷うことはないでしょう。
しかしこの登り、結構きついですね… 高低差は大した事がなくても、今までが平地歩きだったので
突然の山登りに体が対応できていない感じがします。

阿世潟峠への登り

でも、何だかんだ言っても、やっぱり早朝の山歩きは空気が清々しくていいですね。
木漏れ日も綺麗です。
阿世潟で湖岸ウォーキング組と分かれたのか、撮影スポットを探して右往左往しているうちに
みんな行ってしまったのか、この辺りからは周りに人影もなく、静かな山歩きになりました。


20分ほどの登りで、阿世潟峠に到着(8:28)

阿世潟峠

ここで道は社山と半月峠(半月山)方面に分かれます。
今回、半月山に登るかどうかは悩みどころでした。もし社山からここに戻ってきた時に
体力・時間が充分残っていれば、ぜひ半月山も登ってみたいところなのですが…
まあ、その時に考える事にしましょうか。まずは社山を制覇しておきましょう。



■辛くも楽しい稜線歩き

阿世潟峠からは楽しい稜線歩きの始まりです。
しかし、今回のこの阿世潟峠から社山山頂までの稜線歩きは、実は僕の今年の登山の中で
最もきつい行程だったようです。
帰宅してGPSログを見て気づきましたが、何と平均勾配が24%もあるのです。
富士山が22%、男体山ですら23%だったことを考えると、この勾配はまさに驚異ですね。
山頂からの下りで、登りのハイカーさん達とすれ違うときに
「みんなずいぶん息切らしてるなぁ…」と思っていたのですが、それも当然でした。
あ、僕ももちろん登りでは息切れてるんですよ。
自分自身は見えないのであまり意識しなかっただけで。

それと、社山山頂までに小ピークがやたらいっぱいあります。
上記の通り勾配がきつくて、ピークの手前からはそのピークしか見えないので
これが山頂かな?と思って登りきるとそこには次のピークがあったりして脱力します(笑)
例えばこんな感じ。

1567ピーク

阿世潟峠から登り始めて最初の小ピークから、次のピークである1567ピークを望んで。
もはや社山山頂がどこなのかさっぱり分かりません(^^;


でも、そんな苦難があっても、この稜線歩きは是非ともお勧めしたいルートだったりします。
なぜって、眺めが素晴らしいんですよ!

稜線から足尾方面を望む

南側の足尾方面の展望は(僕にとっては)普段目にする事がないから新鮮ですし、
何より、中禅寺湖・男体山側の展望がもの凄く良いです(^-^)

中禅寺湖・男体山方面パノラマ
クリックで拡大(2664*608 480KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

今日は秋晴れで空気も澄んでいて、もう最高!としか表現しようがない至福の眺めでした。
嬉しくて小ピークのたびに写真を撮っていたので、ペースはやたら遅かったかも…
今回の登山は結果的にあまり疲れなかったのですが、
この眺めのおかげで疲労を意識せずに歩けたのかもしれませんね。

ちなみに稜線歩きは、体力的にはともかく、難易度的には特に難しいところはありません。
強いて注意点を挙げるとすると、

・最初の小ピークからの下り斜面は、朝は凍結していました。慎重に足場を選んで進みましょう。
・進行方向左手の斜面が切れ落ちているところがいくつかあります。
 普通に歩いていればまず落ちませんが、高所恐怖症の人はちょっと怖いかも。
 僕は怖かったです(^^;
・山頂近くは膝下までの笹薮です。刈り払いは充分ではないので、雨上がりは防水対策必須。

というところでしょうか。

そんなこんなで、歩くこと1時間14分…
ついに、標高1826.6mの社山山頂に辿り着きました(9:42)

社山山頂

栃木百名山・7山目 制覇です(^-^)

山頂からは南方面の展望が開けています。
ここで一休みしてもいいですが、他のパーティの方々も到着するとちょっと手狭になりそうです。
そこで、山頂を通り越して100mほど先に進んでみましょう。

すると、そこには大きく視界の開けた笹原が広がっています。
少し早いですがここでお昼にする事にしました。

山頂から西に進むと笹原があります

この笹原からは南東〜北西方面までおよそ200°を見渡すことが出来ます。
百名山ガイドブックの「360°の展望」という記述はちょっと正しくない気がしますが
とは言っても栃木百名山の山だけで、横根山、備前楯山、庚申山、袈裟丸山、鋸山、皇海山、
錫ヶ岳、日光白根山…と、これだけの山々を一望できるスポットはそうそうないと思います。
吹き抜ける風が心地いいですね! 昨日のパンクでモヤモヤしていた気分が吹き飛びました。
これぞ登山の醍醐味、といったところでしょうか。



■下山 ―阿世潟の眺めはもはや別世界―

さて、30分ほど休んで心身共にバッチリ回復しましたので、そろそろ下山を開始しましょう。
下りは、来た道を戻ることになります。ほぼ下り一辺倒なので、体力的にはほとんど疲れません。
ただ、写真を撮りまくりながらの下山なので、相変わらずペースはかなり遅くなりました。
およそ1時間で阿世潟峠に到着。

阿世潟峠。半月山も捨てがたいけど…

ここで、半月山に登るべきかしばし迷います。
アミノバイタルのおかげで(?)疲れていないので、登ろうと思えば登れそうですが
登ってしまうと駐車場に帰り着くのが3時くらいになりそうです。
渋滞に巻き込まれるのは嫌だな…ということで、今回は半月山は諦める事にしました。
そのまま阿世潟に下っていきます。

下りは早いもので、13分ほどで阿世潟の分岐に辿り着きました。
まだ余力充分ですので、行きではスルーした阿世潟の湖岸に出てみる事にします。

…すると、目に飛び込んできたのは一面の砂浜と、どこまでも澄み渡った湖水。

阿世潟全景
クリックで拡大(2431*608 523KB 画面下スクロールバーで右方向へ)

えっ…? 何これ… これが本当に中禅寺湖なの!? と思うほど、
自分の持つ中禅寺湖のイメージとは掛け離れた景色がそこには広がっていました。
中禅寺湖はいつも北岸からしか眺めませんでしたから、綺麗という感覚はなかったんですよね。
見るところを変えるとこんなにもイメージが違うんだ、というのは新鮮な驚きでした。

ここは東岸から来るにしても西岸から来るにしても、交通機関を降りてから
だいぶ歩かないといけませんので、訪れる人も少なく、静寂に満たされていました。
聞こえてくるのは打ち寄せる波の音だけ。

打ち寄せる波の綺麗なこと…

こんなところがあるなんて思いもしませんでした。
有名スポットだけ見て、奥日光もいい加減飽きたなぁ…なんて考えていた自分は浅はかでしたね。
まだまだ楽しませてくれそうです(^-^)


この後は、湖畔沿いを通って駐車場に戻りました。
ちなみに、中禅寺湖周辺の紅葉は七分といったところでした。来週末がピークになりそうです。
12:42、無事、歌ヶ浜駐車場に帰還。

歌ヶ浜駐車場

最後まで秋晴れに恵まれて、とても良い山歩きになりました。
山歩き初心者だと体力的にちょっと大変なルートかも知れませんが、苦労するだけの価値はある
満足度の高い登山だと思いました。特に、普段、戦場ヶ原方面にしか向かわれたことのない方は
春〜秋の天気のいい時に、ぜひ一度この山に登ってみることをお勧めします。
あなたの知らない日光の一面に触れられるかも知れませんよ。

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